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撮影レポート 向井理 篇

2017.07.25

IHIステージアラウンド東京『髑髏城の七人』、“Season花”“Season鳥”に続く第3弾“Season風”で<蘭兵衛>役に挑戦するのは、これが劇団☆新感線初参加となる向井理さんです。

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衣裳、メイクなどの準備を整えた向井さんが登場するなり、「顔ちっちゃ!」「俺の半分くらいしかない……」「衣裳、似合うね〜!カッコイイ!!」などなど、なんだかいつも以上にスタッフたちの感想が少々興奮気味……。それほど、インパクトのあるビジュアルだと言えそうです。実際、撮影に立ち会っていた演出のいのうえひでのりさんも「等身が日本人のバランスじゃないんだよなあ。なんだかアニメみたいだよね」と呟き、さらに「まだなんのエフェクトもかかっていないのに、既に野波マジック状態だな」と笑っていました。

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“Season風”の蘭兵衛の衣裳は紫色で、というのはいのうえさんからのリクエストだそう。松山ケンイチさん演じる捨之介と同様、透け感を生かした“紗(しゃ)”の着物です。衣裳担当の前田文子さんによると「着物と羽織の組み合わせがスタンダードなのですが、向井さんは特に身長が高いので、羽織ではなく“十徳(じっとく)”の丈を長くしてアレンジを加えたスタイルにしました。蝶の柄は手描きで、十徳の肩や袖部分の蝶には銀糸で刺繍もしてあります」とのこと。妖しげで美しい、大ぶりの蝶柄が実に素敵です。

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照明の位置を微調整して髪の毛にハイライトが入るようにしてから、まずはテスト撮影。柄入りの半襟をどのくらい出したほうが効果的かチェックし、さらに小道具の横笛の黒地に入る赤い部分のバランスを修正することに。小道具班スタッフが笛の赤いラインを少しだけ太くなるように塗っては、大急ぎでドライヤーで乾かします。その細々とした修正を待つ間、向井さんは衣裳スタッフと言葉を交わしては時折「ハハハ!」と朗らかな笑い声も響かせていて、いい具合にリラックスできている様子。

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すべてが整うと、いよいよ本番。キリッと表情を引き締めて、クールな表情から撮影開始です。カメラマンの野波浩さんからは「背中をスッと伸ばして、アゴをひいて」「目線はカメラへ」「口元だけ少し微笑む感じ」「そこから、ゆっくり顔だけ正面に向けて」など、さまざまなニュアンスの注文が入り、それにひとつひとつ応えていく向井さん。アートディレクターの河野真一さんがモニターで確認しつつ「髪は、輪郭に沿うくらいがいいなあ」「もう少し、左目が出てた方がいい」と呟くと、ヘアメイク担当の宮内宏明さんが素早く向井さんの前髪を少し上げて、スプレーで絶妙な位置に整えます。

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そしてやはり“Season風”にふさわしく、蘭兵衛の撮影もサーキュレーターとブロワーが大活躍。前から、後ろから、場合によっては宮内さんが自ら床に寝転んで下から、風を当てて髪や衣裳の裾を揺らしたり、吹き上げたり。その風のタイミングをはかってシャッターを押す、野波さん。モニターを見て「今の、なかなか良かったんじゃない?」と言うと、「いいねえ、バッチリですよ!」と河野さん。撮影の途中、向井さん本人もモニターをチェックしては「ここまで目を細くしないほうがいいな。(別のカットを見せて)このくらいかな」など、河野さんから具体的にアドバイスを受けていました。

背景を黒から白に変え、照明なども変更すると、次は全身ショットの撮影。そのためにセットチェンジするのを待っている間、手に持った笛をくるくる回している向井さん。こうした隙間の時間帯には、さっきのクールな雰囲気とはまた違う、素の表情がこぼれます。

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今度は横笛を顔に近づけたり、片手で持って肩にあててポーズをとったりしながら撮影を続けていると、河野さんがアクション指導の川原正嗣さんに声をかけ「川ちゃん、笛を使ってなにかいいポーズないかな」と相談。「持ってるものが笛だとわかるようなポーズがいいんだけど」という河野さんの注文には、向井さんも自ら「こっちもアリですか?」と、笛を逆手に持って構えてみたりしてポーズを提案しています。両手をバランスよく使ったポーズを見た野波さんは「今のポジションいいね、綺麗だった!そのまま笛を真っすぐ正面へ動かしてみて」と、さらに姿勢を少しずつ変えさせながら、どんどんシャッターを切っていきます。そうやって、手の表情、顔の向き、足のつま先の向き、身体の重心などをゆっくりと変化させながら、さまざまなバリエーションの写真が撮られていきます。

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さらに、再び風を強めに入れることになり、それも「髪は乱し過ぎずに、袖の部分にだけ当てたい」という微妙な希望に応えようと、サーキュレーターとブロワーを駆使して“風”を担当するスタッフたちは大奮闘。宮内さんは、後ろにふわっと流れるように髪の束をもう一房追加したりして工夫しています。小道具を横笛から刀に変え、くるっと回ったり、上段に構えたりと、動きのあるポーズが続くとちょうどいい具合に髪が流れたり、着物の裾や袖部分が舞い上がったりして、そのたびにモニター前でチェックしているスタッフたちから「おぉ〜!」「素敵!!」と歓声が上がります。


向井さんにも、初めて劇団☆新感線の舞台に立つにあたっての意気込みなどを語っていただきました。


——劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season風への出演のお話を聞かれた時、まずどんなことを思われましたか。
『髑髏城の七人』は2011年版を観たことがあったんですが、新感線の作品の中でも特にストーリー性とエンターテインメント性が両方ある舞台ですよね。エンターテインメント性だけで突っ走るものも新感線の魅力ではあると思いますが(笑)、『髑髏城〜』の場合は物語性がありつつ、キャラクターの強さだけじゃなくて人間関係も深く描かれていて。すごくドラマティックなところも見応えがあって、より演劇的だと思っていました。とはいえ、僕がこれまで経験してきたストレートな舞台作品とは少し違うジャンルの舞台でもありますし、きっと自分に声をかけていただくことなんてないんだろうなと思っていたので、今回はちょっとびっくりしました。

——確かに、今まで向井さんがやられてきた演劇とは毛色が違うかもしれませんね。
特に、前回やった舞台(『星回帰線(2016年)』)は少人数の会話劇でしたし。

——あの作品とは、真逆といえそうです。
すごく、対極にありますよね。

——劇場の大きさ的にもだいぶ違いますし。
そうですね。前回は、小さい小屋(劇場)でやりたいという気持ちがあったので。それが今回は、客席がまわるという、経験したことのない劇場ですからね(笑)。青山円形劇場の舞台に立ったことはあるんですけど、それとは逆なので。だけど、あまり僕の耳にはまだいい情報が入ってきていないんですよ。

——どういうことですか?
「ツライ」とか「キツイ」とか、“花”や“鳥”の出演者からはまだネガティブな言葉しか聞かせていただけていないので、大丈夫かなあって(笑)。でももう、やるしかないですからね!

——ここまできてしまったら。
はい。ま、いい意味で開き直って、できないものはできないですし!今回、初めてやることができるようになれば、新たに習得するものがあるんだと思いますしね。まさか、3時間息を止めてるなんてことはできませんが(笑)、自分にできることはやります。それをどこまでやれるか、自分の限界を超えたところまでやれるのか、ということですよね。自分としては、今回は部活とか運動会みたいなものだとも思っているので。体力面も含めて、これまでとは全然違うアプローチで、しっかり臨んでいきたいなと思っています。

——そういえば先ほど、松山さんも“限界”という言葉を使われていました(笑)。
特に松山くんは今回、一人二役ですからね。この設定は『髑髏城〜』としては原点に戻った感じなんだとは思いますけど。ただ一人二役ということは、逆に言うと、出ずっぱりではないということですよね。早替わりがあるにしても、その間をつなぐという意味では、むしろ僕らのほうが出ずっぱりになるんじゃないかという怖さがあります(笑)。

——そうですね、松山さんが着替えている時間は、舞台上の場面を他の人がつながなければならないから。
物理的に時間をとらないといけないわけで、もしかしたら意外とこっちの方が大変なんじゃないかなんて思ったりして(笑)。もちろん、松山くんのほうがやっぱり二役なんだから大変なんだろうとは思いますが。ちょっとこればかりは、本当にやってみないとわからないので。

——これまで向井さんがやられてきたお芝居の稽古場とは、また違う雰囲気の稽古を経験することになりそうですが。
そうですねえ、でも知ってる人や、共演したことのある人が結構多いので。その点では、やりやすいんじゃないかなと思っています。

——たとえばこの座組の中だと、どなたと共演されていらっしゃるんですか。
松山くんとは共演したことはないんですが、一緒に乗馬の稽古をしたことがあるんですよ。大河ドラマで、ちょうど僕が出ていた作品の次の年の大河に松山くんが出られることになっていて。それで僕が、終盤の最後の合戦のためにもう一度練習しておこうと乗りに行った時、松山くんが来ていて一緒になったんです。たぶん、その時が初対面だったんじゃないかなあ。あと共演しているのは、生瀬(勝久)さんと橋本じゅんさんと(山内)圭哉さん。田中麗奈さんとは今まさに撮影中のドラマでご一緒していますし。

——では、安心ですね。
中でも、特にじゅんさんがいるというのが僕としては大きいですね。やっぱり新感線の看板俳優ですから。ムチャクチャ番長ですけどね(笑)。

——ちなみに今回のじゅんさんのビジュアル写真、ご覧になりました?
見ました、見ました! でもあれなら、新感線のビジュアルではまだ落ち着いているほうじゃないですか? ちゃんと服を着ているだけマシかなと(笑)。じゅんさんとはドラマで2回くらい共演して、そのあと普通に飲みに行ったりもしますし、連絡もちょこちょことったりしていて、舞台の上じゃない、素のじゅんさんを知っているので。だから、すごく安心しています。

——蘭兵衛というキャラクターについては、これまでどういうイメージを抱かれていましたか。
僕の中では、最初はどこか諦めているようなところがあり、だけどふつふつとくすぶっているものもあって。そして最終的にはすごく儚さがあるので、二面性があるというか、人間的な振れ幅が大きい人だなと思っています。ひとつのものにずっと、猪突猛進で突き進むのではなく、紆余曲折というか挫折があって。だけどやはり、自分の本懐を遂げたいという想いもどこかにあってモヤモヤしている。それで仕方がなく今の仕事をしているというようなことって、いつの時代にもいると思うし。だから決してスーパーヒーローではなくて、人間的な汚さも持ち合わせている。諦めと情熱みたいな、そういう二面性のある人間だなと思いながら、前回は見ていましたね。

——難しいけど、やりがいがありそうな役ですよね。
いろいろな面を見せていかなければいけないので、逆に蘭兵衛という既存のキャラクターにはとらわれずにやってみたいなという気持ちもあります。ただ静かなだけではなく、ちょっとプチンと切れてしまう瞬間もあるだろうし。その両面を、わかりやすく演じられたらいいかなと思います。

——ではファンの方へ、向井さんからお誘いのメッセージをいただけますか。
今回は“花・鳥・風・月”と、それぞれのシーズンで違うものになると思いますが、もちろんこれが初見でもわかりやすいストーリーですし、今回もキャラクターがみなさんしっかり立っている。演劇を初めて観る方であっても楽しめるものですし、お芝居好きの方もしっかりと楽しめる構成になっていると思います。とにかく、今まで観たことのない演劇になるんじゃないでしょうか。僕は舞台を観るということ自体が、その瞬間にしか味わえない贅沢なことで、その空間に足を運んだ人にしか目撃できない奇跡だと思っているので。ぜひとも、その奇跡の瞬間を観に来ていただきたいですね。