小さな料理屋「笹井」。店のテレビでは日本シリーズが流れ、カウンターにはそれを見ているマモル(陣内孝則)と板前の笹井(石倉三郎)の姿があった。まわりでは客達がそれぞれにプレーの感想を言い合っている。そこへ、新たに一人の男が現れた。
やってきたのはマモルの兄・真一(所ジョージ)だ。久しぶりに顔を合わせたふたりはどこかぎこちない。しかしマモルは真一に報告しなければいけないことがあった。経営していた工場を閉めることになったのだ。
テレビが日本シリーズの緊迫してきた状態を伝える中、ふたりはいつしかお互いの近況報告を始めていた。それは次第に自分達の少年時代の話へと広がってゆき、ある年の“運動会”の想い出にたどり着く。
真一の同級生、通称「カラバカ」(中村聡志)。勉強はからっきしダメで、自分の名前もかけないというのがもっぱらの噂。しかし、身体が大きく運動は万能、毎年運動会…とくに徒競走は「カラバカ」の独壇場だった。
しかしその年、「カラバカ」は運動会の直前に風邪をひいてしまっていた。「カラバカ」のいない運動会なんて…。走る事が得意なマモル(岡田慶太)も、走る事が苦手な真一(大石治人)も、誰もが今年も「カラバカ」の快走を期待していたのだ。
運動会当日。マモルは、母親(室井滋)が応援する中、三年生の徒競走でぶっちぎりの一等賞。そして六年生の徒競走となり、真一がスタートしようとしたその時である、厚い真綿の入ったドテラを身に着けた「カラバカ」がやってきたのだ…。
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