8月4日開幕

世界陸上で生まれた世界記録27

混成競技種目初の世界記録はぎりぎり6点の更新
9種目終了時にはナーバスになっていた混成王者

世界陸上15回目の開催で、混成競技初の世界記録が誕生した。アシュトン・イートン(アメリカ)の9045点は、“ぎりぎり”で出たワールドレコードだった。
9種目終了時の累計得点は8216点。自身が3年前(2012年)の全米選手権で9039点の世界記録を出したときを27点上回っていた。走幅跳、走高跳、棒高跳の跳躍3種目が前世界記録時を下回ったが、100mと400mのスプリント種目が好調で、特に400mは45秒00と自己記録を0.55秒も更新していた(45秒00は日本歴代2位に相当)。また、投てき3種目も9039点のときを上回った。9種目目のやり投が自己3番目の63m63で得点を伸ばし、累計で全米選手権を27点上回った。
普通なら勢いづくケースだが、最終種目の1500mを前にイートンはかなりナーバスになっていた。「どうやって1500mを走ればいいんだろう?」。世界陸上のような大舞台では、プレッシャーを複数種目で受け続ける混成競技選手の疲労度は計り知れない。

さらに3年前の世界記録のときは1500mを4分14秒48と、日本の女子トップ選手並みの記録で走っているが、イートンの1500mセカンド記録は4分18秒94で、4分20秒を切ったことは自身2回しかない。世界記録を更新するには4分18秒25以内が必要だったが、そのタイムが壁に感じられたのは当然だろう。
だがイートンは踏みとどまった。「妻やコーチ、私を支えてくれている人たちは、『アシュトンならできる、と言ってくれるはずだから』。1周目、2周目と1分10秒以上もかかるスローペースで記録更新が難しいと思われたが、3周目からドイツ選手に引っ張られるようにペースを上げた。そしてラスト1周を1分00秒台前半の猛スパート。最後は倒れるようにフィニッシュしたイートンのタイムは4分17秒52。総合得点で6点と、本当にきわどく世界記録を上回った。
「この記録は、自分1人で成し遂げたものではない」
一緒に10種目を戦った選手仲間、サポートしてくれたコーチらスタッフ、そして家族に感謝の言葉を送ったイートン。特に七種競技で銀メダルを取った妻のブリーアンには、「彼女なしで今の自分はあり得ない」と、心情をストレートに明かしていた。

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