8月4日開幕

世界陸上で生まれた世界記録27

「スタートから完璧に走れた」と期待通りの2種目世界新
18秒台の可能性にボルトは言及

ベルリンのウサイン・ボルト(ジャマイカ)はまさに、“超人”の領域に足を踏み入れた。
100mの9秒58に続き、200mでも19秒19の世界新記録で2冠を達成。2種目世界新は前年の北京五輪に続く快挙だが、違いは200mでの世界記録の期待度が高かったことだ。

北京五輪では100mで9秒69の世界新を出しても、200mの世界記録は難しいと思われた。マイケル・ジョンソン(アメリカ)がアトランタ五輪で出した19秒32は、当時の歴代2位に0.36秒も差をつける突出した記録だったのだ。ボルトが北京五輪直前に歴代2位に進出したが、それでも0.35秒の開きがあった。五輪前に世界記録保持者となっていた100m(5月に9秒72)とは、状況が異なったのである。

ところが北京五輪のボルトは、200mでも世界記録を破った。19秒32から19秒30へ。
10代の頃からメイン種目としてきたのは200mであることを(世界ユースと世界ジュニアで金メダル)、世間に再確認させる走りだった。ベルリンでも100mで世界新を出せたのなら、200mでも世界記録を出す確率は高い。そう期待できた。

ただ、陸上競技で前人未踏の記録を出すことは、身体への負担も、誰も経験していないほど大きさで受けたことを意味する。
今と違って1次予選、2次予選があるラウンドシステムだったが、ボルトは「100mの疲れがあるから」と話しながら、準決勝までの3レースを20秒70、20秒41、20秒08と省エネ運転で通過した(それでも全レースとも1位は譲らなかった)。

決勝は一転して、スタートから全開の走り。50m通過は5秒60で、2番手の選手を早くも0.10秒リードした。100m通過はなんと9秒92!前年の北京五輪より0.04秒速かった。
200mという短距離でもペース配分があり、前半は100mに比べたら抑えて走らざるを得ない。カーブは当然、直線ほどスピードが出ない。そこを100mでも4位相当のタイムで走ったら、2m以上リードするのも当然だった。後半の100mも9秒27で走り、さらに差を広げた。
「スタートから完璧に走れたことが世界新につながった」とボルトは自身の走りを分析した。「課題はスタートだと思って、今シーズンはしっかりと練習してきたんだ。北京五輪の世界記録がフロックでないことを証明できた」

朝原宣治さんは「“19.19”は、数字を見ただけでは何の種目かわからない」と言って驚きを表現した。
今後の世界記録更新の可能性ということなら、ボルト本人は200mの方がある、と繰り返している。「18秒台は可能だと思う。200mの特に前半は、技術が重要になる。その部分では自分はまだまだだから」と。
超人がさらなる未知の領域に足を踏み入れる。それが現実になるのなら、そのときを絶対に見逃したくはない。

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