8月4日開幕

世界陸上で生まれた世界記録27

史上最大幅の世界記録41cm更新 世界陸上唯一の男女同一種目世界新達成

初めて実施された1993年シュツットガルト大会に続き、女子三段跳びで世界記録が誕生した。
イネッサ・クラベッツ(ウクライナ)が15m50と、シュツットガルトでA・ビリュコワ(ロシア)がマークした15m09を一気に41cmも更新してみせたのだ。3日前のジョナサン・エドワーズ(イギリス)に続く三段跳びでの世界新。
同じ種目の男女世界記録が同一大会で生まれたのは、世界陸上ではイエテボリ大会だけである。

クラベッツは2回連続ファウルと、展開的には苦しんでいた。
決勝は通常12人で争われるが、3回終了時点でベストエイトに残っていなければ、4回目以降の試技はできなくなってしまう。3回連続ファウルなら、記録なしで順位すらつかない。
確実に上位8人に入るため、3回目は安全策をとった。
助走開始位置を20cm以上下げ、絶対に踏切板を踏み越えないようにしたのだ。実際、クラベッツの3回目は踏切板につま先が少しかかった程度。“ベストエイトに残るための跳躍”になるはずだったが、クラベッツの3つめの跳躍、ホップ・ステップ・ジャンプのジャンプがグーンと伸び、15mを大きく超えていた。

歓声が起こったが、エドワーズのときのように観客も世界新を確信できない。通常、選手も自身の記録をプラスマイナス10cmくらいの範囲内では把握できるし、手応えが良ければガッツポーズの1つや2つは出る。それがクラベッツも、微笑みながら記録の発表を待っているだけなのだ。
審判員たちの計測は慎重で2分以上を要したが、発表された数字は15m50という大記録だった。41cmは、高地のメキシコ五輪で出た1回を除けば、男女を通じて三段跳び世界記録最大の更新幅である。クラベッツの表情は微笑みから満面の笑みに変わり、スタンドの大歓声に両手を挙げて応えた。
「3回目の助走路に立つ前に、エドワーズがみんなに配った写真を見て、私も跳べますように、と暗示をかけたの」
ジャンプが大きく伸びたのは、エドワーズの跳躍のイメージが、クラベッツにも影響した可能性も否定できない。
「女子の三段跳びは発展途上の種目。これからどんどん進歩していくと思うわ」
2大会連続の世界記録更新に、クラベッツ自身もこう話したし、陸上関係者の多くが同じ考えを持ったに違いない。だが、男女とも三段跳びの世界記録は、20年後の今も更新されていない。イエテボリには“三段跳びの神”がいたかのような印象さえ持ってしまう。

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