8月4日開幕

世界陸上で生まれた世界記録27

アメリカ勢同士の死闘が生んだ2大会連続世界新
世界陸上に定着した女子ヨンパーの激しくも華やかな戦い

400mハードルは通称ヨンパー。
イエテボリ大会の女子は2年前のシュツットガルト大会と同様、2人の選手がフィニッシュ直前まで接戦を展開し、ともに世界記録を上回った。前回は英米の争いだったが、イエテボリではキム・バッテンとトーニャ・ビュフォード、アメリカ選手同士が文字通りデッドヒートを繰り広げた。

金メダルのキム・バッテンが振り返った。
「最後の10台目は、トーニャが先に着地したように思ったの。フィニッシュで彼女に勝てたのかどうか、わからなかったわ」
ハードル毎の通過タイムは、リード脚が接地した際のタッチダウンを計測する。前半の5台目まではすべて、5レーンのバッテンが“0.1秒”先に接地した。3レーンのビュフォードはおそらく、バッテンに合わせていたのだろう。1台目を越えてからのインターバルはすべて同タイムだった。

しかし5台目を越えてビュフォードが“0.1秒”差を詰めて、6台目を27秒5の同タイムで越えている。7台目も同タイム、そして8台目でビュフォードが“0.1秒”前に出た。
「キムを8台目でリードしたら勝てる。そう思っていたんです」
ところが、そこからバッテンが逆襲に転じた。9台目までに“0.1秒”差を詰め、42秒0で並んだのだ。そして10台目では、バッテン本人の印象とは違い、彼女が再び“0.1秒”先行していた。勝負あったと思われた。

だが、まだ勝負はついていなかった。10台目を着地してからの40mでビュフォードが追い上げ、残り10mでは逆転しそうになった。しかし、そこでビュフォードもいっぱいになり、フィニッシュではほぼ同時だった。
バッテンが52秒61、ビュフォードが52秒62。2人とも、2年前のシュツットガルト大会でS・ガネル(イギリス)が出した52秒74の世界記録を上回っていた。

バッテンが「最終ハードルを越えてからは、ストライドの力強さをキープしようと心がけました」とフィニッシュ前の激戦を振り返れば、ビュフォードは「世界記録を破ったのに銀メダルなんて……でも、ベストは尽くしたので悔いはありません」と、清々しい表情で話した。

2人とも大会前の自己記録を1秒強と大幅に更新。5台目をガネルよりも0.5秒速く入り、後半も2人で競り合ったことが世界記録につながった。
世界陸上の女子ヨンパーは、なぜか接戦が多い。イエテボリ大会の0.01秒が史上最小差には違いないが、第1回ヘルシンキ大会も1・2位が0.01秒差で、第2回東京大会と第3回シュツットガルト大会が0.05秒差。そしてバッテンとビュフォードのイエテボリ大会が2度目の0.01秒差で、99年セビリア大会で3度目の0.01秒差が演じられた。
他の大会も1~2m差の接戦となるのがほとんどだ(前回のモスクワ大会だけが例外で1.26秒差がついた)。

女子400mハードルは歴代10傑に、世界陸上で生まれたパフォーマンスが6個もある。ここまで多い種目は女子400mハードル以外にない。世界陸上が必ず接戦になることと、無関係ではないだろう。激しくも華やかな戦いとして、女子ヨンパーは世界陸上に定着している。

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