8月4日開幕

世界陸上で生まれた世界記録27

“ジョンソン時代”の本格的幕開け 4×400mリレー史上唯一の42秒台と激走

4走のマイケル・ジョンソン(米国)が、史上唯一の42秒台のスプリットタイムとなる42秒94をマーク。400mの世界記録を0.3秒上回るタイムで、その快走が大幅な世界記録更新(1秒45)を実現し、そして、2000年まで続くロングスプリントの“ジョンソン時代”が到来したことを、全世界に高らかにアピールした。

シュツットガルト大会のジョンソンは400mでも、43秒65の世界歴代3位(当時)で金メダルを獲得していた。その結果4×400mリレーの米国メンバーは、2走が43秒50の世界歴代2位を持つクインシー・ワッツ、3走が43秒29の世界記録保持者のブッチ・レイノルズ、そして4走のジョンソンと、世界歴代1~3位が揃ったドリームチームとなった。
だが、世界トップ選手といえども、年ごとに好不調の波はある。ワッツは絶好調の前年はバルセロナ五輪で金メダルを獲得(43秒50)。4×400mリレーでも2走を43秒1で走り、2分55秒74の世界記録樹立に貢献した。しかし93年は世界陸上4位(45秒05)と調子を落としていた。
3走のレイノルズはドーピング違反で、90年途中から2年間出場停止処分を受けていた選手。世界記録を出した88年頃よりも明らかに力は落ちていた。

だが、シュツットガルトでは1走のアンドリュー・バルモンが、44秒5で早くも5m以上のリードを奪うと、2走のワッツも43秒6と復調を見せ、3走のレイノルズは43秒23と、個人種目の自己記録(=世界記録)を上回るタイムで走った。
そしてジョンソンの42秒94で、2位に5秒53(約50m)と五輪を含めても史上最大差で圧勝した。「世界記録も重要だったが、それ以上に勝つことが優先事項だった」と、フォアザチームに徹したジョンソンだったが、結果的にその力を世界に見せつけた。

ジョンソンも前年のバルセロナ五輪は食あたりになって、東京世界陸上に優勝した200mは準決勝落ち。4×400mリレーは3走で44秒7もかかり、勝敗に影響はなかったとはいえ足を引っ張った。シュツットガルトではその汚名返上とともに、今後は自分がロングスプリントの第一人者だと宣言する必要があった。

2年後の世界陸上イエテボリ大会で200mと400mの2冠を達成すると、翌年のアトランタ五輪でも連続2冠。200mではアトランタで19秒32と、ウサイン・ボルト(ジャマイカ)が破るまで保持する世界記録をマーク。97年以降の個人種目は400mに絞り、99年世界陸上セビリア大会でついに、43秒18と今も残る世界記録をマークした。
そして、シュツットガルト大会の4×400mリレーの世界記録は、現在も歴代2位に1秒10差をつけて残っている。

一覧に戻る

このページのトップへ