8月4日開幕

世界陸上で生まれた世界記録27

ジャクソンらしい強さを発揮し、らしからぬ強さも見せた結果の世界記録

シュツットガルト大会のコリン・ジャクソン(英国)は、自身の武器を最大限に発揮し、弱点を露呈しなかった。武器とはスタートと中盤のトップスピードの高さ。弱点は終盤の減速が大きいことと、五輪&世界陸上の大舞台に弱いことである。

短距離種目では不正スタート発見のため、号砲からスターティングブロックを蹴るまでのリアクションタイムが計測されている。0.1秒より短いと自動的に不正スタートと判定されるシステムだ。
シュツットガルトのジャクソンは0.122秒で、F・シュヴァルトホフ(ドイツ)以外の6人には、そこだけで0.03~0.05秒差をつけた。

1台目のハードル通過タイムは2秒16。世界陸上3連勝のG・フォスター(米国)の東京大会が2秒54だったことと比較すると、ジャクソンがいかに速かったのかがわかる。
そしてハードル間(9.14m)の最速タイムの0.94秒を5台目(4~5台目)で記録。ハードルを越えたリード脚の接地で計測するので、インターバル間の走りだけでなく、ハードリングを含めたタイムである。6台目も0.96秒で、これもフォスターの最速0.98秒を上回る。シュツットガルトのジャクソンは、6台目で2位に約1mの大差をつけていた。

ジャクソンの武器はそれまでも、五輪&世界陸上以外では発揮されていた。逆に言えば、五輪&世界陸上だけ発揮できなかった。
1991年は世界陸上前の7月にフォスターを破っていたが、8月の東京大会本番では大会期間中にケガをして準決勝を欠場した。翌92年も5月のシーズン初戦から無敗を続け、金メダル候補筆頭に挙げられたが、バルセロナ五輪本番はハードルを何台も倒して7位に終わっている。

93年も世界陸上前は負け知らず。3週間前にはイタリアで12秒97の自己新をマークした。記録が出やすい高地ではあったが、向かい風1.6mの悪条件。12秒92の世界記録更新はいずれ実現すると思われていた。だが、それが世界陸上でできるかといえば、「?」をつけざるを得なかった。
ところがシュツットガルトのジャクソンは違った。後半の減速や、バルセロナ五輪のようなハードリングの乱れがなかったのだ。インターバルタイムは7台目、8台目と1.00秒をキープし、9台目も1.02秒、10台目も1.04秒と踏みとどまった。フォスターは終盤のスピードが武器だったが、それと同じか、わずかに速いスピードをシュツットガルトのジャクソンはキープしたのだ。

レース後のジャクソンは「今日はコリン・ジャクソンらしさを見せられた!」と胸を張った。最終日の4×100mリレーでも英国の1走を任され、銀メダル獲得に貢献した。シュツットガルトのジャクソンに、スキはまったくなかった。

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