8月4日開幕

世界陸上で生まれた世界記録27

新旧世界記録保持者対決が生んだ2m09
跳躍種目の世界記録史上最長期間を更新中

跳躍種目の世界記録として男女を通じて最長寿命を誇るのが、(1978年に開催)第2回世界陸上ローマ大会女子走り高跳びで、ステフカ・コスタディノワ(ブルガリア)が跳んだ2m09だ。伝説になりつつある記録は、新旧世界記録保持者2人の激しい戦いから生まれた。

優位に試合を運んでいたのは、前世界記録保持者のタマラ・ブイコワ(ソ連)の方だった。世界陸上初代チャンピオンでもあるブイコワは、自身が4年前に出した大会記録を1cm更新する2m02、続く2m04と、失敗することなく最初の試技でクリアした。高さを競う走り高跳びと棒高跳びは同記録でも、3回まで許される試技のなかで、早い回数で跳んだ方の勝利となるのである。
ブイコワは1983年に大きく成長した選手。世界陸上金メダルで勝負強さを見せると、12日後に2m03の世界新に成功。さらに4日後に2m04へ記録を伸ばすと、翌1984年にも2m05と世界記録を更新。84年ロス五輪は、ソ連を中心とする共産圏諸国がボイコットしたが、実力世界一はブイコワと言われていた。

主役交替の舞台になったのは1987年のローマ世界陸上。前年に2m08の世界記録を出していたコスタディノワも、2m02を1回目に成功。2人が2m02以上を記録するのは史上初めてという、ハイレベルの戦いになった。
しかしコスタディノワは続く2m04では、腰は完全にバーを越えるが、足首で落としてしまう惜しい失敗を二度続けた。「タマラが調子よく跳び続けていたので、今日は勝てないと思っていました」
ところが身長180cmのコスタディノワは、2m04を3回目にクリアすると、続く2m06も2回目に成功。
その高さを2度失敗したブイコワは、3回目に跳んでも勝つことはできない。3回目の試技をパスし、チャンスは1回だけになるが次の2m08に勝負を持ち越した。そこで成功すればまた、次の高さに3回トライできたが、クリアできずにコスタディノワの金メダルが決まった。

金メダルの決まったコスタディノワは、2m09の世界新をバーを揺らしながらも1回目に成功。この日のコスタディノワは跳躍に高さはあったが、2m04では頂点が微妙にズレていた。それを見事に修正してみせた。
「まさか今日、世界記録が跳べるとは…」
マットから飛び降りてからも何度も跳びはね、両手で顔を覆い、頭を抱えて喜びを表現した。
女子選手が初めて2mの大台を跳んだのは1977年。ローマ大会までの10年間で世界記録は9cmも上昇した。まさか28年間も、その記録が更新されないとは誰も予想できなかった。

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