8月4日開幕

世界陸上で生まれた世界記録27

世界陸上で誕生した最初の世界新記録 クラトフビロバが女子400m初の47秒台

世界陸上における記念すべき最初の世界新記録は、女子400mのヤルミラ・クラトフビロバ(チェコスロヴァキア)がマークした47秒99だった。2015年の今も世界歴代2位をキープしているタイムで、とてつもなくレベルの高い記録だったといえる。さらに、それを出したのがクラトフビロバだったことに、ちょっとした驚きもあった。

3レーンのクラトフビロバは200mでトップに立っていたが、4レーンのM・ピニギナ(ソ連)も競り合っていた。そこからはクラトフビロバが差を広げ始め、2位に上がったT・コセンボヴァ(チェコスロヴァキア)に5m以上の大差でフィニッシュ。最後の直線は圧倒的な強さだった。
「世界新記録で走ったなんて、信じられません。どうやったら1位でフィニッシュできるか、それだけを考えていました」

クラトフビロバは400m選手としてはスタミナ型で、前年に48秒55と当時の世界歴代2位で走ってはいたが、世界陸上で狙っているのは800mと思われていた。2週間前に現在も世界記録として残る1分53秒28で走っていたのだ。ライバルのマリタ・コッホ(東独)の存在も、“クラトフビロバは800m”の雰囲気を強くしていた。スピード型のコッホは、前年の48秒16まで6回も世界記録を更新していた。
そのコッホが世界陸上は100m(2位)と200m(優勝)に回り、400mには出ていなかったが、クラトフビロバも400mの前日に800m決勝を走っていた(1分54秒68で優勝)。疲れも間違いなくあったし、種目を兼ねる場合、スピードの速い種目が後から行われる方が難しい。
それらの状況で史上初の47秒台はマークされたため、多少の驚きも感じられたのである。

クラトフビロバの武器は、スタミナを活かした後半の強さだった。第1回世界陸上の200m通過は23秒1で、その後の選手たちも23秒2~3で走る。風向きも影響する部分だが、1991年東京大会優勝のM・J・ペレク(仏)は22秒82で通過した。それに対してクラトフビロバの後半200mは24秒9で、区間タイムが公表されている世界陸上では、その後誰1人として上回っていない。2年後にコッホが47秒60の現世界記録で走ったときも、後半は25秒2だったと報告されている。 史上最速の後半のスピードが、世界陸上最初の世界記録を誕生させた。

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