8月4日開幕

世界陸上で生まれた世界記録27

走幅跳と同時進行で出した初の37秒台
ルイス時代の幕開けを告げた世界新

世界陸上2つ目の世界記録は男子4×100mリレーだった。
史上初の38秒突破となる37秒86を、米国が1走=E・キング、2走=W・ゴールト、3走=C・スミス、4走=C・ルイスのメンバーでマーク。この種目で15年間続いた38秒台の時代にピリオドを打った。と同時に、ルイスが並行して行われた走り幅跳びでも金メダルを取り、“ルイス時代”の幕開けも告げることになった。
リレーメンバーの豪華さが特筆された。ルイス、スミス、キングは100mの金銀銅メダルを独占したトリオで、3走のスミスは200mの金メダリスト。そのなかで2走のゴールトが、110m障害選手だった点も注目された(110m障害銅メダル。100mの自己記録も10秒10)。

1・2走では5レーンのイタリアと、7レーンの東独も3レーンの米国と並んでいたが、3走のスミスで米国がリードを奪う。金メダリスト同士がバトンをつなぎ、4走のルイスが差を大きく広げてフィニッシュした。ルイスの区間タイムは8秒98で(リレーは助走付きになるため、通常の100mより速くなる)、銀メダルのイタリアは200m世界記録保持者(当時)のP・メンネアで9秒28だった。

この日のルイスは4×100mリレーの準決勝と決勝の間に、走り幅跳びの決勝を戦っていた。リレーの準決勝と走り幅跳びの1回目が重なったため、1人目だった跳躍順を最後の12人目に変更。その1回目で8m55の大ジャンプを見せた。
2回目の試技は最初の跳躍順に戻るため、ルイスが連続で試技をしなければいけなかったが、これはパス。3回目の試技でも8m42を跳んだ。前半の3回が終了した時点で、2番手はJ・グリムス(米国)で8m29。ルイスは4回目以降の試技をすべてパスした。逆転されたり、8m55に迫る選手が現れたらすぐに跳ぶ準備はしていたが、リレーのために体力を温存したのだ。
そうして2種目を勝ちきったルイスはリレーの後、「陸上競技人生で最も素晴らしいと感じた」と、興奮気味に話している。

翌年のロス五輪では200mも加えた4冠を達成し、1996年までの13年間で五輪9個、世界陸上8個の金メダルを獲得したルイス。陸上界20世紀最大のスーパースターが、複数種目の“勝ち方”を体得したのが第1回世界陸上だった。

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