16年ぶりの日本開催。有力選手が力を発揮できない中、日本を救ったのが男子4×100mリレー。予選・決勝ともにアジア記録を樹立し5位入賞。翌年の北京五輪でのメダルに繋がった。女子マラソンでは、大阪の猛暑を味方に土佐礼子が驚異の粘り。今大会唯一の銅メダルを獲得した。
前年の北京五輪で100m9秒69、200m19秒30という世界新を連発し、世界中を驚かせたU.ボルト。その記録を9秒58、19秒19まで伸ばしたのがこの大会。全人類の度肝を抜いた記録は、いまだに破られていない。東京2025でボルトをとらえる男は現れるか。
男子ハンマー投"世界の鉄人"室伏広治が、36歳と325日で圧巻の金メダル。それまでの年長記録を17日更新し、世界から賞賛を受けた。"人類最速"U.ボルトは100m決勝でまさかのフライング。この大会から"フライング=一発失格"の新ルールが適用。世界を騒然とさせた。
男子ではU.ボルトが、女子ではS-A.フレイザープライスがそれぞれ短距離3冠(100m、200m、4×100mリレー)という大偉業を成し遂げた。女子棒高跳では地元ロシアのY.イシンバエワが3大会ぶりとなる涙の金メダル。日本勢は福士加代子が女子マラソンで銅メダルに輝いた。
前回に続き、U.ボルトは3冠の偉業を達成。200mは4連覇。またボルトと並び、長距離で一時代を築いたM.ファラーも5000mと10000mで連続2冠を遂げた。日本勢では男子50km競歩の谷井孝行が競歩界初の銅メダル。またサニブラウンが16歳で世陸デビューを果たした。
引退を表明し臨んだU.ボルト。100mで銅に終わり、4×100mリレーでリベンジを誓うも、アンカーでバトンを受けると足を痛めて転倒。そのままレースを終えた。一方リレー侍は3着に入り、世陸初の銅メダル。また女王アリソン・フェリックスは金2個銅1個を獲得。メダル数を歴代最多とした。
ボルト引退後、男子短距離界はアメリ力勢が存在感。100mはC.コールマンと37歳J.ガトリンが金、銀。200mは21歳N.ライルズ が初の世界一に輝いた。女子は、ママになって帰ってきたS-A.フレイザープライス(ジャマイカ)が史上最多4度目の100m制覇。2歳の息子とのウイニングランで最高の笑顔を見せた。またS.ハッサン(オランダ)は、1500mと10000mという異例の2冠を達成。新時代の到来を告げた。
日中40°Cを超える猛暑を理由に、大会史上初めて深夜開催となったロード種目だが、灼熱のドーハで日本勢はむしろ躍動。女子マラソンで谷本観月が7位入賞を果たすと、男子競歩では20km山西利和と50km鈴木雄介が金メダルという史上初のダブル快挙を達成した。また男子4 x 100mリレーは、1走多田修平・2走白石黄良々・3走桐生祥秀・4走サニブラウンのオーダーでアジア記録を樹立。見事2大会連続の銅メダルを獲得した。
陸上王国アメリカ初開催に相応しく、女子400mハードルS.マクローフリン(アメリカ)、女子100mハードルT.アムサン(ナイジェリア)、男子棒高跳A.デュプランティス(スウェーデン)によって3つの世界新が誕生。また男子200mでN.ライルズ(アメリカ)がボルトの世界記録まで0秒12、女子200mでS.ジャクソン(ジャマイカ)がジョイナーの世界記録まで0秒11と迫り、不滅の記録の更新がいよいよ現実味を帯びた。
海外勢が進化を続ける中、日本勢の躍進も目立った。男子20km競歩では山西利和が連覇。銀の池田向希と合わせてワンツーフィニッシュを飾ると、新採用の35kmでも川野将虎が銀メダルを獲得した。また男子100mではサニブラウン A ハキームが日本勢悲願の決勝進出、7位入賞を果たした。そして女子やり投では、北口榛花が五輪含めて日本初となる銅メダルを獲得。最終6投目での逆転劇は、日本に感動と興奮をもたらした。
記録もさることながら、記憶に残る結果となった今大会。N.ライルズ(アメリカ)は、ボルト以来の短距離3冠を達成。アンカーを務めたリレーのフィニッシュでは指を3本立てて偉業をアピールした。しかし、それ以上にインパクトを残したのがF.ボル(オランダ)。大会初日の混合4×400mリレーでアンカーを走り、金メダルへ残り5mまで迫りながらまさかの転倒。無念の失格に頭を抱えた。だが、そこから立ち直ったボルは、本職の女子400mハードルで金メダルを獲得。その後、大会最終日最終種目の女子4×400mリレーに挑み、再びアンカーを激走。バトンをもらった時点では3位と厳しい状況だったが、最後の直線で一気に追い込むと、初日に転倒した「残り5m」の地点で奇跡の大逆転。見事に金メダルを獲得した。レース後、今度は嬉しさのあまり頭を抱えるボルの姿があった。
女子としてマラソン以外では初めてとなる世界陸上の金メダルを、オレゴンと同じ最終6投目の大逆転劇で、ついに北口榛花がつかんだ。涙ながらに「今日だけは、世界で1番幸せです」と答えたインタビューとともに、日本人の心に深く刻まれた瞬間となった。またサニブラウン A ハキームは2大会連続の100m決勝を着順で確定。田中希実は5000mの日本記録を15秒近く更新。三浦龍司が3000m障害でメダルまで1秒72の走りを見せれば、泉谷駿介は110mハードルで日本初となる決勝&5位入賞を果たした。他にも、競歩では男子35kmの川野将虎の2大会連続メダルに加え入賞2つ。女子10000mの廣中璃梨佳、男子走高跳の赤松諒一、さらには新生リレー侍も入賞を見せ、過去最多11の入賞(内メダル2個)が記録された。世界との差が確実に縮まっていることを、知らしめる大会となった。