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2006年06月26日

　お父さんのためのファッション講座第２弾～２年目のクールビズ

今日のレポートは泉貴子が担当しました。

以前、「今年のメンズファッションはきれいめが流行る！」という話題を取り上げましたが
（http://www.tbs.co.jp/radio/stand-by/attack/20060306.html）、
今回はお父さんのためのファッション講座・第２弾、「２年目のクールビズ」についてです。

こんなクールビスはイヤ！
去年はクールビズ１年目ということで、長年スーツ姿に慣れたお父さんたちにとっては手探りの状態だったのではないでしょうか？今年は２年目ですから、去年よりワンランク上のクールビズを目指したいですよね。そこでまず、働く女性の方々に男性のクールビズ・ファッションについて、気になる点を挙げてもらいました。

「だらしない感じはイヤですね。特に襟元が広がってくしゃくしゃになっているのは汚らしい印象を受けます」
「崩し過ぎるのも問題です。胸元からＴシャツが見えてたりするのはやりすぎだと思います」
「ネクタイを外した時に下着が見えてるのはイヤ。サラリーマンとして許せない。なんでみんなもっと襟がピシッとしていないんですかね？なんかダラーンとしていて、いかにもオジサンって感じ」

キビシ～ですね．．．。ちなみに街頭インタビューを行ったのはお昼休みの日比谷公園。霞ヶ関の官庁街に隣接しているということでクールビズ姿のお役人さんを横目に見ながらのインタビューとなりましたが、クールビズ自体については「涼しげで良い」と肯定的なものの、いざ実例を前にするとダメ出しの連続。女性の目からすると合格点を付けられるクールビズ姿の男性はごくわずか、という厳しい結果となりました。

特に評判が悪かったのがシャツの襟元。普通のＹシャツの場合、ネクタイをすることを前提にしていますから、ノータイだとどうしてもヨレっとした感じになっちゃうんですよね。朝から「宴会の後」みたいな雰囲気になっちゃったりして。

まずはシャツ選び　

じゃあ、どうすりゃいんだ？ということで４０代以上のお客様も多いという日本橋高島屋の紳士服売り場を担当されている郡一哉副部長に、シャツ選びのポイントを教えていただきました。

「まず基本はボタンダウンです。さらにバリエーションとして今年はいわゆる開襟シャツ、今風にはイタリアン・カラーやスキッパーという言い方をしますが、これはあらかじめネクタイをしないことを前提にしていますから、襟がくしゃくしゃにならずキレイに決まります。また逆に襟が通常より１センチほど高いタイプ、特に第一ボタンが２つ付いているデュエ・ボットーニと呼ばれるタイプなどは襟がしっかり立ち上がり、ピシッと決まるのでこちらもお薦めです」
クールビズ

基本のボタンダウン・シャツは去年から着ている方も多いのではないでしょうか。襟の先に付いた小さなボタンを留めることで、襟が支えられダラッと広がることがないので収まり良いですね。アイビールックを経験した方には馴染み深いアイテムだと思います。今年はさらに取り入れていただきたいのは「イタリアン・カラー」や「スキッパー」といった開襟シャツタイプ（そういえば昭和３０年代くらいまでは日本のサラリーマンも夏は白の半そで開襟シャツを着ていましたよね。黒澤明の映画での志村喬とか、小津安二郎映画での笠智衆あたりがいい感じで着こなしていたのが印象的です）。それから襟が高くてピシッと決まるタイプ、特に第１ボタンが２つ付いていて襟腰が高めになっている「デュエ・ボットーニ」（イタリア語で「２つのボタン」の意）などを取り入れるとワンランク上の２年目らしさを演出できると思います。着る物はいつも奥様まかせという方も、今年はぜひ店頭で「こんな感じの色でデュエ・ボットーニのはあるかな？」などと言ってみてはいかがでしょうか。ご家族の見る目も変わるかも、しれません。（ここで噛んじゃったりすると一気にテンションが下がるので､何度か口の中で練習しておいた方がいいでしょう。「デュエ・ボットーニ」、ちょっと言いにくいですから）

クールビズ用に肌着も進化
先ほどの女性たちの指摘のなかでもうひとつ指摘が多かったのが。「胸元から肌着が見えるのがイヤ」ということ。この点について、日本橋高島屋の郡副部長は．．．

「今年はＶゾーンが深めの肌着を豊富にそろえています。また、グンゼから出ている肌着で、首周りを自分のスタイルに合わせて切ることができるものも人気です。普通のＴシャツなどは切ってしまうとそこからほつれてしまうしまいますが、この商品は特殊な加工がされているため、切ってもほつれません」

いつのまにか肌着も進化しているんですね。肌着といえば、クールビズで薄着になると体型が目立つということで、お腹やお尻を引き締める男性用の体型補正下着もよく売れているそうですよ。通常のトランクスなどに比べて２倍～３倍の価格であるにもかかわらず、高島屋で品薄の状態が続くほどの人気なんだそうです。

郡一哉副部長

男性ファッションの進化は時代の必然！？
襟にこだわったり肌着を工夫したりと、クールビズも楽ではないですね。「着るものなんて本人の勝手だろ！？」という声も聞こえてきそうですが、男性がビジネスファッションに気を遣うという流れはクールビズだけでなく、もっと大きな社会的変化も背景にあるようです。再び日本橋高島屋のの郡副部長のお話です。

「女性が長く働くようになり、上司が女性ということも当たり前になってきました。ですから女性の目から見た『仕事が出来る服』、というのも洋服選びポイントになるのだと思います。以前のような『男社会の仕事着』というものより、もっと進化してきているのではないでしょうか」

そういえば今年は男女雇用機会均等法が施行されてちょうど２０年。最初の年に就職された女性も４０代となり、女性の管理職や重役も（以前に比べれば）増えています。上司や取引先の相手が女性というケースも多く、ビジネスシーンにおいてもファッションの対する女性の目を意識することが、ますます重要になってきているようです。

伊勢丹メンズ館

クールビズと一線を画したい貴方には．．．
さて、今回はクールビズ特集でしたが、実際には勤務先や職種の関係でクールビズには出来ないという方も多いでしょうし、「そもそもクールビズなんてビジネスのスタイルとしてふさわしくない！」という美学をお持ちの方も少なくないと思います。その点、新宿伊勢丹メンズ館は、百貨店では珍しく一切「クールビズ」ということを謳っていません。他の百貨店とは一線画すあたり、さすがこだわりのメンズ館です。そのメンズ館が掲げているのが“THE SUMMER GENTLEMAN”というコンセプト。クールビズとどう違うのか、新宿伊勢丹メンズ館でスーツなど担当しているバイヤーの島崎信也さんにお話を伺いました。

「クールビズというとネクタイを外したり、上着を省いたりと、マイナス方向の着こなしで、ややだらしない印象がありますよね。うちに来るお客様はおしゃれにこだわりを持つ方が多く、だらしない恰好をしていただくわけにはいきません。一方、“THE SUMMER GENTLEMAN”というのは、夏だからこそあえて、きちんとスーツまたはジャケットにネクタイというエレガントな装いを提案するものです。ジェントルマンらしいベーシックなスタイルでありながら、麻やモヘアといった生地を使ったり、パッドや裏地などを極限まで省くことで日本の夏に負けない涼しさを実現しました。」

一般にクールビズが「涼しさ」「快適さ」といった機能面を重視しているのに対し、メンズ館の“THE SUMMER GENTLEMAN”は「スタイリング」をより重視しているようです。どんなに素材などを工夫しても、やはりネクタイや上着を外した方が涼しいのは確かだと思いますが、メンズ・ファッションの神様と呼ばれた故・石津謙介さん（ＶＡＮ創始者）も「ダンディズムとはやせ我慢である」と仰っていますから。「ワンランク上のクールビズ」のさらにその上を行きたいという方は、ちょっとぐらい暑くてもジェントルマンらしく真夏でもきちんとしたスーツスタイルで通す。これが正解なのかもしれません。

担当ディレクター　長谷川裕