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制作のUNiQUE project ソチオリンピック

ソチオリンピック取材を終えて

普段は「荒川強啓デイキャッチ」「安住紳一郎の日曜天国」というワイド番組を担当しているため、スポーツの現場で取材することはほとんどないのですが、オリンピックだけは別で、どんな番組を担当していてもTBSラジオの記者として1人ないし2人程度派遣されます。
「こういう仕事をしているからには、一度は行ってみたかった」という気持ちがあり、行きたいと手を上げていたら、今回のソチオリンピックは私が派遣されることになりました。

ソチオリンピック
ニュース情報部 本多 良恵 /
ソチオリンピック派遣記者
ニュース情報部
本多 良恵 入社11年目
2003年入社。事業部でイベントなどの運営、編成部でタイムテーブルの詳細を決めるトラフィック業務を担当した後、制作に異動。ニュース番組、バラエティ番組、幅広く担当する雑食系。
これまでに担当した番組は「ストリーム」「アクセス」。現在は「荒川強啓デイキャッチ」「安住紳一郎の日曜天国」を担当。

IBCとメディアホテルソチには2/3〜2/24までの3週間派遣され、主にメダルが出そうな注目競技を取材していました。試合を観て、選手にインタビューし、録音した音声素材を編集して会社に送り、番組の中でリポートを入れる、というのが主な仕事です。
テレビは数十人単位のスタッフが現地に派遣され集団で行動するのですが、関東のラジオ局から派遣されるのは各社1人なので、その記者同士で協力し合うことが多かったです(インタビュー音声の融通や情報交換など)。普段はあまり触れ合うことのない他社のラジオ記者と、オリンピックのときばかりは社の垣根を越え、協力し、仕事やそれ以外のことなども色々と話すことができ、大変刺激を受けました。
通信手段については、以前は国際電話とメールくらいしか選択肢が無かったと思いますが、今はLINEなども普及し、日本の番組担当者とのやりとりはかなりスムーズにできました。番組内でリポートするときも、WiFiが安定していれば「Lucy(ルーシー)」という無料通話ソフトで高音質で話すことができました。

ソチでは報道陣専用の循環バスが街中を24H走っていたので、毎日それに乗ってホテルからIBC(International media center)という世界中の報道機関が集まるメディアセンターに向かい、情報を集め、競技が行われている会場までバスか電車で行く、というパターンで動いていました。また、報道陣専用のホテルが100棟ほど建てられ、(公営住宅のように同じ造りの建物が乱立。 まるで旧ソ連のようでした…)そこにみな泊まっていました。暖房もセントラルヒーティングで部屋は暖かかったです。そもそもソチはそんなに大きな町ではないため、元々の宿泊施設の数では供給が圧倒的に足りず、オリンピックに向けてかなりたくさんの建物が建てられていました。オリンピック後、どうするのでしょうか。


オリンピックパークステーション現地での生活ですが、正直、食事を楽しむ時間はなかったです。朝食をホテルのバイキングでしっかり食べ、あとはIBC内にあるマックか、売店で適当に買うか、たまに他社の記者と食べに行くか、そんな感じです。ボルシチ(野菜の赤いスープ)とペリメニ(餃子のようなもの)は美味しかったです。油っぽくもなく日本人には合うと思います。

これまで私にとって、オリンピックというのものは「テレビで観るもの」でしたが、実際に取材してみると、テレビで伝えられている以外の、いろんなドラマが現場で起こっていることを初めて知りました。

例えば女子ジャンプ。高梨沙羅選手は「金メダル大本命!」と言われ、誰もが期待して試合を観ていましたが、結果は4位。金メダルどころか、メダルにすら手が届きませんでした。そんな悔しい試合の後、高梨選手は、17歳とは思えぬほどちゃんとインタビューの受け答えをしていましたが、体からは湯気が立ち上り、目からこぼれ落ちそうな涙を必死でこらえている様子が、言葉だけでは伝わらない「空気」として伝わってきました。その後、私は「「デイキャッチ」の中で高梨選手の様子などを電話リポートしたのですが、何を語っても高梨選手の本当の悔しさを伝えきれないような限界を感じてしまいました。

オリンピックパークステーション勝者ばかりがクローズアップされますが、実際に取材した今となっては、敗者達の方にこそ壮絶なドラマがあると分かりました。世界一を競うスポーツの現場は、世界一の喜びと落胆が集まるすさまじい現場です。一体どんな言葉でこの現場を伝えられるのか・・・ 心が動かされて、うまくしゃべれなかったリポートも多かったです。記者達にとってもオリンピックには魔物が住むのかもしれません。