コラム|『ニューイヤー駅伝2017』

2017年1月1日 (日) あさ8時30分よりTBS系列生中継!

コラム

2017年1月1日更新 text by 寺田辰朗

第8回区間エントリーで各チームの陣容が決定
トヨタ自動車の3連勝か、Hondaの初優勝か、旭化成の21世紀初Vか

優勝候補の陣容と監督たちの意気込み

大会前日の31日にスタートリストが発表され、各チームの陣容が明らかになった。
優勝候補筆頭に挙げられるのは、3連勝を狙うトヨタ自動車だろう。
2年連続最長区間の4区(22.0km)を走った窪田忍(25)が故障で出場できないが、それは数カ月前から想定済み。4区には箱根駅伝2区2年連続区間賞の服部勇馬(23)が入り、3区(13.6km)には1万mで27分台に入った大石港与(28)、6区(12.5km)には2年連続区間賞の田中秀幸(26)が起用された。
佐藤敏信監督は「考えていたベストメンバーが組めた」と手応えを感じている。「コニカミノルタのコーチで3連勝しているので、トヨタの監督としても3連勝したい」

想定通りのオーダーが組めたのはHondaも同様で、4区には2年連続区間新の設楽悠太(25)がドンと座り、期待の新人の山中秀仁(22)が3区、リオ五輪マラソン代表だった石川末廣(37)が5区(15.8km)。
1年前も“いざ頂点へ”とチームのキャッチを掲げて初優勝を目指、設楽悠でトップに立ったのだが5〜7区で4位に後退。この1年間はキャッチを“頂点をこの手に”として取り組んできた。大澤陽祐監督は「さらに強くした思いを、この言葉に込めました」と、決意のほどを明かした。

旭化成は1区に1万m日本記録保持者の村山紘太(23)を投入した。2区のインターナショナル区間で大きく後れた前回の反省を踏まえ、1区でアドバンテージを得る作戦だ。2区(8.3km)には調子が上がってきた鎧坂哲哉(26)、3区には大六野秀畝(24)、4区には充実の市田孝(24)、5区には村山謙太(23)と、1区から5区まで1万m27分台ランナーを並べた。さらに7区にはリオ五輪マラソン代表だった佐々木悟(31)という豪華布陣。
就任2年目の西政幸監督は、「鎧坂が復調してきたことが大きい。積極的なレースをして、勝負にこだわります」と、静かに闘志を見せた。

コニカミノルタは4区に新人の神野大地(23)、3区に前回区間2位の菊地賢人(26)、5区に前回区間賞の山本浩之(30)と、主要3区間は強力。1区の設楽啓太(25)と、6区の宇賀地強(29)の1万m27分台ランナー2人が故障明けで、どこまで走れるか。
磯松大輔監督は「徳俵に足がかかった状態ですが、粘ることができたら何が起こるかわからないのが駅伝」と、選手たちに最後の一踏ん張りを期待した。

1区の注目は村山紘のペース。3区終了時のポジションが重要に

1区(12.3km)最大の注目点は、旭化成・村山紘太がどんなペースでレースを進めるか。コニカミノルタ・設楽啓太と、日立物流・浅岡満憲(23)も1万m27分台ランナーだが、設楽啓は故障明けでもあり、村山紘の力が1つ抜け出ている。
2区(8.3km)に外国人選手を持たない旭化成としては、少しでもリードを奪いたい区間だ。スローペースになれば、序盤から村山紘が飛び出す可能性もある。そうなった場合、他の選手は村山紘を追うのか、集団で自重するのかの選択を迫られる。
終盤勝負になっても、トラックのようなラスト100〜200mのスパートでは大差をつけることはできない。村山紘が仕掛けるタイミングにも注目が集まる。

日清食品グループ・戸田雅稀(23)は1500mの日本選手権優勝者で、自己記録3分39秒67と中距離のトップランナー。東日本実業団駅伝でも1区区間賞と、駅伝の距離にも対応してきた。村山紘も3分39秒56と、1500mでほぼ同じタイムを持っている。5000m以上の距離では村山紘の実績が勝るが、ラスト勝負になったらどうなるかわからない。
3区(13.6km)は前回区間賞のDeNA・上野裕一郎(31)、11月に27分台をマークしたトヨタ自動車・大石港与と旭化成・大六野秀畝、絶好調と伝えられるHonda・山中秀仁らが区間賞候補。2区のカロキ(26)の快走があれば、前回同様上野がトップに立つ可能性が高い。
有力チームは、ライバルとの差を可能な限り小さくしておきたい区間。

トヨタ自動車・佐藤監督は「2区が課題だが、そこで前についていることができれば3区で行くことができる。2区で後れても、大石で取り返せる」と自信を見せる。
旭化成・西監督は「駅伝の醍醐味であるごぼう抜きを期待できるのは、大六野だけ。ここでトップと30秒差以内に上がりたい」と強調した。
また、Hondaの大澤監督も山中の3区起用を「少しでもトップとの差を縮めて4区の設楽悠に渡したいから」と説明。
3区の出来不出来が、優勝争いに大きく影響する。

エース区間の4区は3年連続区間賞を狙う設楽悠が中心

4区(22.0km)は2年連続区間賞のHonda・設楽悠太、前区間記録保持者のトヨタ自動車九州・今井正人(32)、前回区間3位のMHPS・井上大仁(23)、16年シーズンに27分台に入った旭化成・市田孝と富士通・横手健(23)、新人のトヨタ自動車・服部勇馬とコニカミノルタ・神野大地らが区間賞候補。
名前と肩書きを見ると力が伯仲しているように見えるが、区間1位と5位では前回46秒違ったので、この区間だけでも流れが一気に変わる。設楽悠が「61分台を狙う」と宣言しているだけに、設楽に食い下がるのか、ある程度差を広げられても後半で勝負をするのか、判断力も求められる。

設楽悠はトップでタスキを受けた場合、「5kmを13分40〜45秒、10kmを27分30秒」で通過するプランだ。前を追う展開の場合は、もう少し速くなる可能性もあるが、基本的には13分30秒で入った前回よりも前半で余裕を持たせ、最後3kmのペースダウンを防ぎたい意向だ。

神野は「10kmを28分00秒で通過する準備はできている。ビビらずに行く」と話したが、11月末の甲佐10マイルでは日本選手でただ1人、アフリカ勢の集団に加わってハイペースで走った。追い風と下り気味コースでトラックよりも速くなるニューイヤー駅伝4区。その経験がないためイメージしにくいのだろうが、もう少し速く入ることもできそうだ。

旭化成も市田孝を自信を持って起用してきた。初出場になるが、シーズンを通して安定した実績を残し、西監督が今、最も信頼する選手だ。市田は2週間前の取材に「4区の覚悟は決めている。区間賞の走りで貯金を作り、優勝に貢献したい」と力強く語った。
今井は設楽悠ほど速い入りはしないが、後半に強さを見せる。甲佐でも最後は神野を追い上げたし、本番での勝負強さもある。設楽悠や、それに食い下がった選手が終盤でペースダウンした場合、今井が区間賞を取る確率が高くなる。

17年は5区決着か? 過去2年と同様に6区で抜け出したチームか?

過去2年はトヨタ自動車が6区で大きくリードを奪ったが、その前の3年間は優勝したチームが5区(15.8km)で、決定的とは言えないまでもある程度のリードは奪っていた。今回は5区で決着する可能性もある。
その候補はやはり、選手層の厚さを誇るトヨタ自動車・早川翼(26)と旭化成・村山謙太、前回区間賞のコニカミノルタ・山本浩之、そして好調が理由で5区に復帰したHonda・石川末廣ら。37歳と大ベテランの石川はリオ五輪日本代表を務めたが、大澤監督は「もう一仕事やってもらう」と、ニューイヤー駅伝初優勝にチームを導く舞台を用意した。

日清食品グループ・矢野圭吾(25)、トヨタ自動車九州・押川裕貴(26)、MHPS・松村康平(30)、富士通・松枝博輝(23)らにも区間賞の可能性がある。
そして6区(12.5km)には、2年連続区間賞で決定的なリードを奪ったトヨタ自動車・田中秀幸が今回も控えている。
佐藤監督は「4区か5区で行ければ行きたいですけど、6区までもつれるかもしれません」と言う。展開の可能性をいくつも想定したオーダーのようだ。
田中自身、レース展開ばかりは自分の力で決められないと、力んでいる様子はない。「力を出し切るだけ。その結果、優勝を決められたらいいのですが。調子はこの3年間で、一番良いですけどね」

Honda・服部翔大は過去2回は5区で、得意のはずの上りのコースで後半にペースダウンしている。気分転換の意味もあっての区間変更で、調子が悪いわけではない。
コニカミノルタの宇賀地は故障明けで、4月の兵庫リレーカーニバル以来のレース出場。コニカミノルタとしてはできれば、5区までにリードを奪いたい。

7区(15.5km)の区間賞候補はトヨタ自動車・宮脇千博(25)、Honda・馬場圭太(30)、旭化成・佐々木悟、コニカミノルタ・野口拓也(28)、トヨタ自動車九州・大津顕杜(25)、MHPS・定方俊樹(24)、日清食品グループ・高瀬無量(27)ら。
トヨタ自動車・佐藤監督は「ここまで何年も頑張ってきた宮脇には、駅伝であまり苦労をかけたくない」という理由も、7区起用にはあるという。しかしなんと言っても、27分ランナーをここに残しておけることは大きい。
旭化成も、調子を上げてきている佐々木を起用できた。勝負が7区までもつれた場合、この2チームの可能性が大きくなる。

61代目のチャンピオンチームは3連勝のかかったトヨタ自動車なのか、21回の最多優勝を誇る旭化成なのか、悲願の初優勝を目指すHondaなのか。
陸上界2017年最初のビッグレースが、元旦の朝9時15分にスタートする。

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寺田辰朗(てらだ たつお)プロフィール

陸上競技専門のフリーライター。
陸上競技マガジン編集部に12年4カ月勤務後に独立。
専門誌出身の特徴を生かし、陸上競技の詳しい情報を紹介することをライフワークとする。一見、数字の羅列に見えるデータから、その中に潜む人間ドラマを見つけだすことは当代随一。
地道な資料整理など、泥臭い仕事が自身のバックボーンだと言う。選手、指導者たちからの信頼も厚い。
AJPS (日本スポーツプレス協会) 会員。

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