コラム

2020年1月1日更新 text by 寺田辰朗

第9回MHPSは4区の井上、コニカミノルタは5区の山本でリードしたい布陣
トヨタ自動車は5区の服部か6区の田中、旭化成は7区の鎧坂で勝負か?

内容

旭化成の4連勝か、トヨタ自動車が4年ぶりに王座を奪回するのか。
ニューイヤー駅伝の出場オーダーが12月30日に発表された。
旭化成とトヨタ自動車の2強はどこの区間でリードしても不思議はないが、4区でHondaが設楽悠太(28)で、MHPSが井上大仁(26)で抜け出すことも予測される。5区ではコニカミノルタが山本浩之(33)でトップに立つ可能性もある。
選手層の厚さから終盤の6・7区で抜け出すとしたら、やはり旭化成とトヨタ自動車の2強と思われるが、2強以外でも終盤区間で予想以上の快走をする選手が現れれば、勝負の行方は予断を許さなくなる。

1区(12.3km):黒崎播磨・田村の大逃げがあるのか? 対応できる選手は?

牽制し合うことの多い区間だが、九州予選1区で区間賞の田村友佑(黒崎播磨・21)が前半から速いペースで行くのではないか。何人もの監督がそう予測している。
黒崎播磨の澁谷明憲監督はペースについてのコメントを避けたが、「田村のコンディションは良いですよ」と明るく言い切った。
「結果を気にせずに走るよう、田村には言いました。九州予選みたいに茂木(圭次郎・24)君と競り合ったら、意地の張り合いになるでしょうね」
旭化成は、田村がハイペースで飛ばしたら後続に大きく差をつける狙いで、日本選手権5000m4位の茂木を配置した。トヨタ自動車の藤本拓(30)も、福岡国際マラソンから順調に回復している。九州勢に食い下がるだろう。
服部弾馬(トーエネック・24)が最後まで先頭につくことができれば、ラスト勝負で区間賞を取る可能性が高い。

2強に続く評価のコニカミノルタは5区と7区で区間賞を取ったことのある野口拓也(31)、前回2位のMHPSは日本選手権1500m4位の的野遼大(27)、初出場初優勝を狙うGMOインターネットグループはチーム一番のスピードがある倉田翔平(27)で、3人とも2強には後れたくない。
Hondaは東日本予選同様新人の小山直城(23)に、マツダは前回と同じ山本雄大(26)に1区を託す。ハイペースになったときの対応が注目される。

2区(8.3km):世界陸上4位、ケモイのスピードは必見。MHPSはオムワンバで上位に

唯一、外国籍選手の出場が認められている区間で、前回はロジャース・チュモ・ケモイ(愛三工業・21)が、区間賞でトップに躍り出た。ケモイは世界陸上ドーハでは10000m4位と、メダルに迫るまでに成長した。前回1区区間3位だった山口浩勢(28)が今回も、1区がハイペースになったときに対応できれば、愛三工業が今回も2区でトップに立つのではないか。21分54秒の区間記録更新も不可能な数字ではない。
ケモイは出場しなかったが、中部予選2区で区間賞のエバンス・ケイタニー(トヨタ紡織・20)、中国予選2区で区間2位に24秒差をつけたアモス・クルガト(中電工・27)、九州予選2区区間賞のベナード・コエチ(九電工・20)らが区間上位候補。
MHPSのエノック・オムワンバ(26)も、全日本実業団陸上10000mで優勝するなど力をつけた。左ヒザの痛みがなくなり、区間賞に意欲を見せている。1区の的野が区間上位で走れば、優勝候補チームの中ではMHPSが2区で最上位に位置するかもしれない。
旭化成のアブラハム・キャプシス(26)は今大会が日本ラストラン。前回は区間10位で順位を6位から8位に落としたが、2年前は区間3位で9位から8人抜きでトップに立った。7区の鎧坂哲哉(29)は「優勝しか知らないままアブラハムを送り出したい」と、キャプシスにやる気を喚起されている。

3区(13.6km):トップに立つのは延藤、菊地の3区実績組か、市田宏、西山、定方の初3区組か

スピード自慢の選手が集まり、前半区間ということもあり順位が大きく変動する。
前回区間2位の延藤潤(マツダ・28)と牧良輔(SUBARU・33)、15・16年と連続区間2位の菊地賢人(29・コニカミノルタ)の“3区実績組”が、この区間でトップに立とうと経験を駆使して走る。
それに対して3年連続6区区間賞の市田宏(旭化成・27)、前回5区区間3位の定方俊樹(MHPS・27)、初出場の西山雄介(トヨタ自動車・25)は“初3区組”。3区特有の速い入りに対応できれば区間賞の力はある。区間記録のときの宮脇千博(トヨタ自動車)は5kmを13分29秒、前回の延藤は13分34秒で通過している。
過去3大会で6区、1区、3区で区間ヒト桁順位を続けている藤川拓也(中国電力・27)も、高いレベルのマラソン練習ができている。駅伝でブレイクする可能性を持つ選手だ。

大卒新人も何人かエントリーされた。箱根駅伝2区と3区で区間賞を取った森田歩希(GMO・23)、関西予選7区区間賞の橋詰大慧(SGホールディングス・22)、Hondaで課題だったこの区間に抜擢された中山顕(22)らが出場する。
そして35歳の高井和治(九電工)も、九州予選4区区間賞の勢いで、4年ぶりに3区に挑戦する。
1区が超ハイペースになると差が開く傾向になるが、通常2区終了時にはそれほど大きな差はつかない。どのチームにも3区で上位に浮上するチャンスはあるが、特に延藤のマツダと森田のGMOは、この区間でトップに立ちたいところだろう。
4区に設楽を擁するHonda、前回4区区間賞の井上がいるMHPSは、この区間のスピードに対応できれば4区でトップに立てる。

4区(22.4km):MGCファイナルチャレンジを目指す設楽悠、井上、山本らマラソントップ選手が激突

各チームのエースが集結し、この区間終了時で1分以上の差をつけられると優勝が厳しくなる。
設楽がこの区間で過去3回、市田孝(旭化成・27)は17年大会、井上は前回19年大会で区間賞を取っている。その3人に前回区間2位の岡本直己(中国電力・35)、同区間3位の山本憲二(マツダ・30)、3区と5区で区間賞を取ったことのある大石港与(トヨタ自動車・31)を加えた6人が区間賞候補。
蜂須賀源(コニカミノルタ・25)、細谷恭平(黒崎播磨・24)の2人も、長距離関係者で高い評価があり、今大会でブレイクするかもしれない。
18年大会で区間記録を出した設楽は27分54秒、前回区間賞の井上は28分16秒で10kmを通過した。観戦の目安にしてほしい。
設楽はトップと30秒以内の差でスタートすればトップに立つ可能性がある。旭化成とトヨタ自動車、コニカミノルタは5区以降でも攻勢に出られる戦力だが、MHPSとマツダはできれば4区でトップに立ちたい。
ここまで名前を挙げた選手以外では、MGC4位の大塚祥平(九電工・25)を筆頭に、河合代二(トーエネック・28)、高久龍(ヤクルト・26)、竹ノ内佳樹(NTT西日本・27)がMGCに出場した。山岸宏貴(GMO・28)はMGC出場資格があったが世界陸上にターゲットを変更して代表としての走りを経験した。
10000mで28分ヒト桁台のスピードを持つ河合もいるが、マラソン選手らしい粘りを発揮すれば区間10位前後では走れる。それができれば入賞など、チームの目標順位にも近づくだろう。

5区(15.8km):旭化成・村山、トヨタ自動車・服部、コニカミノルタ・山本がトップ進出を狙う

この区間に、4区のエースに近い力を持つ選手を起用できたのが旭化成、トヨタ自動車、コニカミノルタの3チームだ。
村山謙太(旭化成・26)が前半から速いペースで入る走りなのに対し、服部勇馬(トヨタ自動車・26)と山本浩之(コニカミノルタ・33)の東洋大OBコンビは、村山ほど前半を突っ込まない。詳細はコラム第6回で紹介している。
3人がタスキを受け取ったときの位置関係と走りのタイプを把握しておくと、観戦の面白さが増すはずだ。
4区でトップに立っている可能性があるのはHonda、MHPS、マツダといったチーム。5区の頑張り次第ではトップをキープできる。
MHPSの佐藤歩(31)は、前回の岩田勇治(32)がそうだったように、30歳を超えて過去最高ともいえる練習ができている。向晃平(23)はマツダの育成ノウハウで急成長中の選手。母校である國學院大の後輩の活躍にも、刺激を受けてモチベーションがアップしているという。ニューイヤー駅伝でブレイクする可能性がある選手だ。MHPSもマツダも4区でトップに立てば、5区もその位置を突っ走る期待を持てる選手を配置している。
GMOは渡邉利典(26)で東日本予選4区の区間賞を取った選手。GMOはコラム第5回で紹介した一色恭志(25)と橋本崚(26)を起用できなかった。5区以降が手薄になったが、渡邉が今大会でも区間賞の走りができれば、初出場初優勝の希望をつなぐことができる。

6区(12.1km):15・16年大会区間賞のトヨタ自動車・田中か、旭化成の4年連続区間賞を狙う小野か

7年連続優勝チームの選手が区間賞を取っている区間。そして過去8年連続で、この区間をトップで走り終えたチームが優勝している。
田中秀幸(29)はトヨタ自動車が2連勝した15・16年大会で区間賞を獲得した選手。19年は5000mで13分22秒72のシーズン日本最高記録で走り、3区起用も考えられた。3年目の西山が成長して3区を任せられるようになり、向かい風に抜群に強い田中を6区に残すことができた。本人もコラム第2回で紹介したように、「勝負のキーマンとして走ってみたい」と6区に意欲を見せている。
旭化成の小野は高校から実業団入りして2年目の若手選手。初出場だがコラム第8回で紹介したように、田中に対しても臆していない。練習の10000mで28分40秒の力を、試合でプラスアルファをして発揮できれば区間賞もあるかもしれない。
6区にこれだけの選手を残せるのは2強だけだ。
だがコニカミノルタの我那覇和真(26)も、夏頃は3区の菊地と並んで、チーム内で一番練習での強さがあった。MHPSの吉田裕晟(24)も練習では積極的に引っ張っているという。6区のトップを走ることでテンションが上がり、いつも以上の力が出て快走をする可能性も否定できない。

上位チームにとって不気味な存在は、Hondaの山中秀仁(25)だろう。19年の4月から10月まで競技から離れていたが、陸上部に復帰してわずか2カ月でニューイヤー駅伝メンバーに選ばれた。
引退した理由は、前回のニューイヤー駅伝5区で区間36位になった故障なども一因だが、精神的なものだったという。9月にMGCの応援に行ったとき、「(同学年の服部)勇馬も走っていたりして、もう一度走りたいと思った」ことがきっかけになった。
「チームの練習ができるようになるまで半年くらいかかるかな、と思っていましたが、1カ月で戻ることができました」
2年前に5区を区間2位で走った選手である。小川智監督はそこまで期待していないようだが、予想以上の快走があればHondaが優勝争いに加わる。

7区(15.5km):前回は旭化成とMHPSがデッドヒート。2年連続アンカー決戦があるのか?

6区まででリードを奪ったチームが逃げ切るケースが多いが、前回は2秒差でタスキを受けたMHPSが旭化成に追いつき、ゴール直前まで競り合いを続けた。
この区間でも旭化成が5000m、10000mとも日本歴代2位を持つ鎧坂、トヨタ自動車が2年前と15年大会の7区で区間賞を取っている早川翼(29)と、強力な選手を残している。鎧坂も2年前に7区に起用され、区間賞の早川と2秒差の区間2位で優勝テープを切っている。
旭化成の西政幸監督は「鎧坂に20秒差でタスキを渡せば、ぎりぎりで逆転できる」と見ている。
MHPSは木滑良(28)で、MGCでは動きが崩れていて18位に終わったが、ニューイヤー駅伝が近くなって復調してきた。前回は6区で旭化成・市田宏に逆転されただけに、今回もトップでタスキを受けたなら、前回の反省も活かして、あるいは意地で好走するのではないか。
コニカミノルタは19年からプレーイングコーチになった宇賀地強(32)がアンカーで、「駅伝に出たいなら自分を超えてほしい」と練習で壁になろうと頑張っていたら、自身の状態が上がってきた。チームは6区までに勝負の大勢を決め、宇賀地には負担をかけない方針だが、コラム第3回で紹介したように、コニカミノルタらしい攻めの走りは絶対にする選手だ。トップのチームが見える位置でタスキを受けたなら、最後となるかもしれない駅伝で大逆転を演じるかもしれない。
令和初の駅伝日本一を決めるニューイヤー駅伝は、オリンピックイヤーの元旦9:15にスタートする。

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寺田辰朗(てらだ たつお)プロフィール

陸上競技専門のフリーライター。
陸上競技マガジン編集部に12年4カ月勤務後に独立。
専門誌出身の特徴を生かし、陸上競技の詳しい情報を紹介することをライフワークとする。一見、数字の羅列に見えるデータから、その中に潜む人間ドラマを見つけだすことは当代随一。
地道な資料整理など、泥臭い仕事が自身のバックボーンだと言う。選手、指導者たちからの信頼も厚い。
AJPS (日本スポーツプレス協会) 会員。

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