A：２週目は数ある重要建築の中でも１番の大御所・エルミタージュをたっぷりお見せします。 やはりエルミタージュは街のパワーの象徴とも言える重要なポイント。超一級文物です。本来ならば、映画の撮影でさえ、ステディカムを使って歩いて撮影するのが普通というくらい撮影許可の厳しい場所なのですが、ここに関しても今回はお願いにお願いを重ねてクレーンを入れさせてもらうことができました。正直、エルミタージュの中でこれだけの規模で撮影するというのはなかなかできることではありません!

今は美術館として有名ですが、もともとは宮殿。まずは本来の目線で、大宮殿としてとらえてみようと撮影していきました。それにしても本当にすごい！壮大！この部屋を抜けてもまだこんな部屋があるのか？というくらいスケールが半端じゃない。というか、まず階段を上がって上階へ行くんですが、その階段がすでに凄い。エルミタージュへ観光で行った人も、まずはここで驚くと思うんですけど、上がってふっと振り向いた時に、これはとんでもないところに来てしまった、この先どんな華麗な世界が？…。と思うんじゃないでしょうか。そのスケール感、圧倒感、過剰なまでの人工美。そうしたすべてをまるごととらえるような映像で、この遺産の超ド級のパワーに応えねばと、撮影スタッフのテンションも上がりっぱなしでした。
宮殿だけでもこんなににすばらしいのに、現在はさらにそこにレオナルド・ダ・ヴィンチなどの名画が所狭しと飾ってある。これもエルミタージュの凄さですよね。ただでさえきらびやかな世界に、傑作と呼ばれる数々の作品が並ぶと、もう半端じゃない！互いの気迫が迫ってくるようで、あいまって新たな世界を生み出しています

本当にエルミタージュは強敵でしたから、世界遺産を撮り始めて10年、これまでに培ったありとあらゆるパワーを駆使して大格闘したという感じです。今まで色々な場所で撮影してきたけれど、クレーン撮影などの技法だけでなく、文物を決して傷めずに最大限効果的なセッティングをするノウハウ、なにより遺産の魅力・存在感・それが孕んでいる歴史や価値�ゥ�ぢそうしたものを丸ごととらえたスケールの大きい画を撮ろうという、スタッフ全員の意思の力、そうした身についたものの全てが試されるような大仕事だったと思います。撮影に許されたのは正味１８時間。それだけの時間であれだけの質と量を撮った。終わった時には全員脱力。でも思う存分腕を振るわせてもらえて、感無量です。撮影は誰もいない休館日を二日間まるまる使わせてもらえたので、エルミタージュに行った事のある人も見た事がないような映像になっているのではないでしょうか。

Q：ロケ中の思い出話…。
A：いろいろありましたが、なによりスタッフの個人的な思い入れとか、因縁めいた気合いとか、情熱とか、そんなアツさが過剰に渦巻く現場でした。
まず僕ですが、実はディレクターになって始めての大きな仕事がロシアだったんです。92年に公開された「おろしや国酔夢譚」という映画のメイキングでした。当時はまだロシアではなくソ連で、ロケの途中で崩壊してロシアになるような時期。サンクト・ペテルブルク（当時はレニングラード）には約２ヶ月滞在して、すごいなぁこんな街があるのかと思ったのを鮮明に覚えています。あれから16年、再び仕事でサンクト・ペテルブルクを訪れることになるとは…。あの頃と街は変わったか？時の流れをどう感じられるか？自分はどうか？少しは成長したのか？以前と違う目で街を見つめられるか？といった感じで、自分を試したい気持ち、自分の中で一里塚というか区切りの仕事のような気もして、何だか心がフツフツとたぎっていました。