過去の放送内容

「がっちりマンデー!!」毎週日曜あさ7時30分から

がっちりマンデー!!

過去の放送内容

2007年7月22日放送

特集

儲かる地方自治体

ゲスト

森永卓郎さん(経済アナリスト)、眞鍋かをりさん

番組内容

がっちりマンデー、本日のテーマはズバリ!儲かる地方自治体!
少子高齢化、過疎化、ずさんな古い体質や効率の悪い運営など、地方自治体の多くは何らかの問題を抱えています。
深刻な財政難から、遂に財政破綻を起こす地方自治体も!
しかし!苦しい状況の中でも、独自のアイデアと行動力で町のピンチを乗り越えた自治体がありました!
財政難を吹っ飛ばせ!儲かっている地方自治体を大公開します!

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儲かる自治体その1:岩手県葛巻町

岩手県北部に位置する葛巻町。

実はこの町には大きな問題が…。
それは、過疎化。
最盛期の1960年には、およそ16000人もいた町の人口は、2006年には8119人まで減少。
毎年150人が町から消えていく、日本有数の過疎化地域なのです。
さらに、この町の町長に聞いてみると…

葛巻町役場中村哲雄町長:駅もない!鉄道もない!インターチェンジもない!ゴルフ場もない!温泉もない!スキー場もない!
こういう町は岩手県内でも葛巻しかないっていう位、ないない尽くしの時代があったんです。

日本の僻地といわれる岩手県にあって、葛巻町は「僻地中の僻地」とささやかれている町なのです。
当然、町の借金も年々増加し、瀕死の状態でした。

しかし!ここ10年で、葛巻は生まれ変わったのです!
現在、葛巻町の財政は年間6000万円近い黒字!
さらには、毎年6億円ずつ借金を減らしてきているのです!
窮地を救ったキーマンこそ、中村哲雄町長!

一体、町をどのように変えたのか?聞いてみると…

中村町長:元々企業的発想による、役場の経営っていうことを掲げて町長に就任したんですよ。
"株式会社葛巻のトップセールスマンの中村でございます"ってあいさつするんですよ。
"株式会社葛巻"っていうのは、実体のない会社なんですね。
ですけど、ホントに株式会社らしい機能をしてる訳ですよね。有効に!!

そう!中村町長は、町を一つの株式会社と考え、再生に着手したのです!
その方法が、地方自治体と民間企業が共同で運営する法人、第3セクターの設立。
国や地方自治体のことを「第1セクター」、民間企業のことを「第2セクター」、その二つが共同運営するものを「第3セクター」と言います。

しかし、第3セクターの経営状況は厳しく、全国6706法人のうち37%が赤字経営。
その借金総額は、約2兆3100億円にも上ります。
ところが、葛巻町の第3セクターはなんと現在、年間17億円以上の収益を誇っているのです!

葛巻町の成功のポイント

▼成功のポイントその1:子牛保育園
人口8000人の葛巻町の主要産業は、酪農。人の数よりもはるかに多い13500頭の牛を飼っています。

葛巻町は第3セクター葛巻高原牧場を設立し、新たなビジネスに挑戦しました。
第3セクターの社長でもある成功の立役者、中村町長に聞くと…

中村町長:酪農家の子牛を預かって、お産をする2ヶ月前にお返しする。
代理で育ててあげますよという(ビジネス)

葛巻高原牧場が手がける新ビジネス。
それは、全国から生まれたばかりの子牛を預かり、いい乳牛に育つように大きくなるまで代理で飼育を行うというもの。
いわば、「子牛の保育園」なのです。

Q:一日おいくらなんですか?
中村町長:500円で月15000円。保育園の保育料に似ているじゃないですか。

たった500円とお思いでしょうが、現在この保育園に入っている牛はおよそ3500頭。
必要経費を差し引いても、1日で100万円以上の儲け!
1ヶ月で3000万円以上!年商に換算すると…

中村町長:全体では4〜5億円位の事業になりますよね

少ない利益からコツコツと!
子牛の保育園ビジネスで5億円の大儲け!
さらには、ここの保育園で育った牛が全国に戻り、各地のコンテストで数々の賞を受賞し始めました!

すると、"葛巻町に預ければブランド牛が育つ"そんな評判がドドーンと広まり、いまや全国から入園を希望する子牛が殺到!

また、儲かるヒミツにはこんな企業努力が…!

中村町長:選挙掲示板を利用した小屋みたいなものですけど、これだって立派に牛は飼えるんですよ。

なんと!タダでもらってきた選挙の使用済み掲示板を使い、牛舎を建設!
徹底的なコストカットも行っています!

中村町長:選挙が終われば我が社には牛舎が増える!

その他、骨組みには古電柱を使用するなど、利益を上げるため低コスト化を徹底!
さらに町長は、新たなビジネスにも着手!

中村町長:地元のある資源を生かした産業を興そうと。厄介ものを逆手にとって。

▼成功のポイントその2:やっかいものをお金に変える
日本有数の僻地、岩手には町民を困らせる様々な厄介ものが存在していました。
その一つが強風。
標高が400mを超える葛巻町は、風が強いことでも有名。
牧場の柵が壊れるなど、町の人を悩ませていました。
この厄介ものの風が一転、お金のなる木になるという!

その正体は…風力発電!
町内でも特に風の強い地域に、巨大な風車を建設。

中村町長:風は厄介もんでしょ?ですけど、厄介ものこそ風車にとってはいい風でしょ?厄介ものをエネルギーに変えるという逆転の発想。

厄介ものだった風。しかもタダで吹いている風を利用して…

葛巻町役場農林環境エネルギー吉澤晴之さん:年間5400万kWh発電しますので、1kWh当たり10円としても売電収入は5億4000万円になりますからね

現在、合計15基の風車が稼動。安定した電力を生み出し、電気会社を経由して町内にも供給されています。

中村町長:今、風車風力発電をあと80本ぐらい建てられる可能性があるんですよ

ということは…現在15基で5億円ですから、80基では26億円以上!
厄介ものだった風を、逆転の発想で儲けの種に変えたのです!
さらに町長は、こんなものにも目を付けた!

中村町長:家畜は1万3500頭いますから、650〜750トン位の排泄量が毎日出ますね。

そう、牛の糞尿!町民よりはるかに多い1万3500頭の牛から出る糞尿は、年間で28万トンにも上ります!糞尿の処理は、長い間酪農家の悩みの種でした。
その厄介ものをお金に変えようというのです!
それが、糞尿をエネルギーに変えるバイオマス発電!

牛の糞尿からメタンガスを抽出し、そのエネルギーを使って発電するというもの。

厄介ものからエネルギーが生み出せるという、またとない解決方法。まだ試験的な運用のみですが、今後の実用化が大きく期待されています。
またしても逆転の発想で、町の厄介ものを見事お金に変えた葛巻町!
中村町長にはデッカイ夢が…

中村町長:葛巻の電気は東京都に買ってほしいな〜なんていう夢を持っているんですよ。
山村は山村の務めをしっかり果たしながら、都市は都市の役目をしっかり果たしてお互いが連携をとりながら、地球環境改善にもエネルギーの問題にも貢献していこうという私の思想であり発想なんですよ

現在では視察のために、毎年50万人が訪れる葛巻町。
儲かる地方自治体として、全国でも今注目されています!

▼スタジオでお話を伺いました。
森永さん:(葛巻町は)アイデアもあるし行動力もあるから成功したんでしょうね。

進藤さん:電気だけではなく、ワインもあるんです。くずまきワインといって、白ワインは国産ワインコンクールというので2006年に銀賞を獲っています。赤ワインの方は銅賞を獲っていて、さらに奨励賞を獲っているワインもあるんです。最初はなかなか味が安定しなかったらしいんですが、苦労に苦労を重ねてここまで成長させたのがきっかけで、すごい売れているんですって。年間で5000万円もの売り上げになっている

森永さん:意識を変える改革者、リーダーが必要なんですね。

進藤さん:ワインだけじゃなくて、牛乳も。皆さんにおなじみのタカナシの牛乳。(パッケージの)上のだ円のところに書いてあるのがわかりますか?岩手の葛巻で作られた牛乳なんですね。

森永さん:タカナシ乳業の牛乳っていうのは、スターバックスで使われているんですね。スターバックスで「〜ラテ」を頼むと、全部じゃないにしても葛巻の牛乳が我々の口に入っているかもしれない。

儲かる地方自治体その2:大分県大山町

大分県の南部に位置する大山町。

その昔、大分県一貧しい村とささやかれていた大山町。

低い年収の原因は農業の不振。
耕作地のほとんどが急斜面に位置していたため耕作面積が狭く、作業効率が極端に悪かったのです。
しかし、全国の自治体が注目するほど儲かる町に大変身しました!

▼成功のポイント:産直所

こちらは大山町の産直所、木の花ガルテン。
駐車場にはたくさんの車があります!

Q:近くにお住まいですか?
女性客:大分県中津市から来ました(車で約2時間)。ここは野菜が新鮮ですので。
女性客:おいしい野菜がたくさんあります。

この産直所、オープン当初から売り上げをどんどん伸ばしています。

現在ではなんと、年商15億円!日本でも有数の儲かる産直所となりました。

儲かるヒミツは?

木の花ガルテン店長中嶋英明さん:やっぱり大山町がずっと進めてきた少量多品目というのがここに出てきているから、いろんな面白い商品が所狭しと並んでいます

店内を見渡すと、確かに色々な物が!
新鮮な野菜はもちろん、町の特産品から日替わりの惣菜まで!
さらには、クワガタやメダカなんてのも売られています!
その種類は入れ代わり立ち代わり、年間で800品目に及ぶといいます!

どうしてこんなに多品目なのか?

急斜面が多い大山町では、同じ種類の作物を同時に大量に作ることは困難。
ならばと、少量多品種農業に切り替え、少しづつ色々なものを作ることにしたのです!
狭い土地を有効利用し、1軒の農家で数種類の野菜を同時に栽培する。
これにより、種類が豊富で新鮮な野菜を提供できるようになったのです!

90年の開業当時は50人ほどだった出荷農家も、現在2500人まで増加!
今では、年収1000万円を超える生産者も!

Q:儲かってますか?
生産農家:ぼちぼち。
生産農家:40〜50万位は(収入が)上がりますので、お米と比べるとはるかに。

こんなにも儲かっちゃうヒミツは産直所のシステムにありました。

大山町農業協同組合参事矢羽田正豪さん:(農家の取り分は)従来ですと100円のものは20〜30円しか手取りにならない。
ところが木の花ガルテンは20%しか取ってないから、80%が(農家の)手取りになる。(農家の手取りが)まるで逆転してしまう

通常、1本100円の大根が売れても、卸業者などを通すため生産者の儲けは1割程度。

しかし産直所では、生産者が直接持ち込み販売することから、100円の大根で80円の儲けを出すことができるのです。

結果、産直所は15億円以上を売り上げ、年収1000万円を超えるリッチな生産者を数多く誕生させたのです!
しかし、この成功に至るまでには長く険しい道のりがありました。

大分県大山町の成功のポイント

大山町復興のきっかけとなったのが、一人の救世主の存在。当時の農協組合長、矢幡治美氏。

彼はこれまでの稲作に代わって…

矢幡さん:田んぼに梅を植えましょう、畑に栗を植えましょうという運動を展開したんですね

そう、梅・栗の栽培でした!
梅・栗の木ならば、山間部の大山町でも斜面が活用できる。
また、稲作に比べて軽作業で収穫することができ、収益性も高い。
さらに、大山の神様は農民を奮起させるため、盛大なキャッチフレーズを掲げる!それが…

矢幡さん:『ウメクリ植えてハワイへ行こう』というキャッチフレーズでね、みんな梅栗植えてハワイに行かれると思って植えたんです

Q:一生懸命働いたんですか?
矢幡さん:はい

矢幡氏は、「農業で成功すればハワイへ行ける!」と目標を立てさせ、士気を高めたのです。
結果、一生懸命働いて外国を見ようと農民は今まで以上に力を入れ、次第にウメ・クリの栽培は軌道に乗ります。
大山町の平均所得にも変化が!

今では、町民の70%がパスポートを所持。

町民:父と母と僕の終わったのと新しいのと、あと妻の4人のパスポートですね。

家族全員が持っている家庭も!

農家:最初はイスラエルとヨーロッパ行ってその後中国行ったし、東南アジアも韓国も行ったし。
農家:まだ僕は10カ国位で。

Q:まだ?もう充分じゃないですか?
農家:いえいえ、まだ行きたい所をたくさん残してますから。

ウメ・クリの木から始まった大山町のサクセスストーリーは、全国の農家の憧れとなったのです!

▼スタジオでお話を伺いました。
加藤さん:産直所の取り分を農家の人に多く与えるというのはデカイですか?

森永さん:農協を通して普通に出荷してたら、本当に農家の人の手取りは少ないですからね。人間が意欲を持って動くためには二つ必要で、一つは実現できる目標。もう一つは利益実感。例えば、本当にハワイに行ったっていう人が出てくると、「あいつが行ったんだったら自分もできるかな」ってどんどんどんどん人が集まってくるんです。
実は大分県は、前の知事の平松さんが打ち出した「一村一品運動(各市町村がひとつの特産品を育てる地域活性化運動)」でものすごく有名。これが日本全国に広がって、今は世界でもやりましょうということになっているんですけど、平松さんの「一村一品運動」の原点は、大山町でやられてたこと。

進藤さん:地方にずっといる人を引っぱっていける人の資質には何が大事ですか?

森永さん:今一番必要なのは、ビジネス感覚なんだと思います。最初からずっと役所に入って、役所の中だけの世界を経験した人だとビジネス感覚がわからないですからね。

加藤さん:市民とか町民とか村民にモチベーションをどれだけ与られるかですね。
「頑張ろう!」って思うモチベーションを与えるトップがいたら変わっていくんでしょうね。

進藤さん:今後注目の自治体を教えて下さい。

森永さん:それは、香川県の直島です。直島は瀬戸内海に浮かんでいる、周囲16kmの小さな島なんですけど、島全体をアートにしちゃったんです。今すごく流行っているんですけれども、例えば昔からの民家をアーティストにまかせて改装させて、建物自体もアートにしちゃうんです。だから島中全部がアートなんです。地中に美術館を造ってみたりと、どこ歩いても芸術作品の島。

真鍋さん:みんな瀬戸内海に来たらいいと思うんです。他にも島だらけで、島の中で民宿があって海を見ながら釣れた魚を食べたりとかができるのに、何で観光に力を入れないんだろうって思います。

加藤さん:気持ち一つなんだね。トップが変わらないとダメなんですね。

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