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「がっちりマンデー!!」毎週日曜あさ7時30分から

がっちりマンデー!!

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2006年7月23日放送

特集

W杯儲かりのヒミツ

ゲスト

二宮清純さん(スポーツジャーナリスト)

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大手スポーツブランド三社の歴史

世界最大のスポーツイベント、サッカーW杯。
大手スポーツ用品メーカーにとっても、自らのブランドを世界にアピールする、四年に一度の大事なイベントなのです。
世界のスポーツメーカーの中でも、今回の大会で特にしのぎを削ったのはスポーツブランド大手三社。
それは…アディダス、プーマ、ナイキ!
年間売り上げは三社合計で3兆円と、ダントツのトップ3なのです。

この三社の儲かりの歴史は、それぞれとてもユニークなものでした。
アディダスとプーマはドイツ生まれ。
実はこの二社、大昔は「ダスラー兄弟商会」という同じ会社だったのです。
元々は、1920年ドイツ南部の小さな村でダスラー家の長男ルドルフと次男アドルフが設立した運動靴の会社でした。

ところが第二次大戦後、会社のことをめぐって二人は大喧嘩!
それぞれが別々の会社を作り、兄がプーマを、弟がアディダスを立ち上げたのです。
ちなみにアディダスとは、アディー(アドルフ)・ダスラーを略したもの。

その後二社は、有名サッカー選手たちに自分の会社の靴を履いてもらおうと、専属契約をめぐって争います。
兄のプーマはサッカーの王様ペレと契約すると、弟のアディダスは皇帝ベッケンバウワーといった具合に、常にライバルとして競い合っています。
ドイツでサッカーが盛んなのは、二社の熱いバトルのおかげなのかもしれません。

一方、最近急速にサッカービジネスに力を入れているのが、スポーツブランド王者であるアメリカのナイキ。
1964年、フィル・ナイトとビル・バウワーマンが米オレゴン州で設立したブルーリボンスポーツ社がその前身でした。
設立当時の儲けの柱は、何と日本製の運動靴であるオニツカタイガー(現アシックス)の輸入販売だったのだとか!
そんなナイキの得意技は、大物ゲット!
バスケ界の大物選手マイケル・ジョーダンと専属契約して作られたバスケシューズであるエアジョーダンは、とんでもない大ヒットを記録し、会社の急成長のきっかけとなりました。
その他、陸上のカール・ルイス、テニスのアンドレ・アガシ、ゴルフのタイガー・ウッズなど、そのジャンルのトップアスリートと契約し、ブランドイメージを確立してきました。

1994年、W杯アメリカ大会をきっかけに、ナイキはサッカーへの本格参入を開始。
そして1996年、ナイキがゲットした世界最大の大物が…ブラジルナショナルチーム。
何と、230億円という破格の契約料!
その後も様々な有力選手との契約を進め、アディダス・プーマが築いたドイツサッカー王国の牙城に迫っています。

スポーツ用品メーカーのW杯儲かりバトル

世界的なスポーツ用品メーカーは莫大な金額を支払って各国代表チームと契約を結び、ユニフォームを提供しています。
それは一体なぜなのでしょう?

1)ブランドを世界中にアピールできる!
テレビに大きく選手が映れば、ユニフォームのロゴも大きく自然とテレビに映り、それが大きな宣伝になります。

2)レプリカユニフォームが売れる!
2002年の日韓大会の時には、一枚14000円の日本代表のレプリカユニフォームが60万枚以上売れました。一ヶ月で84億円の売り上げ!
そして、選手にとって一番大事なスパイクシューズは、メーカーと選手の個人契約が基本。
ここでも、とんでもない金額が動いているんです!
イングランドのデイビッド・ベッカムはアディダスと契約、年間の契約金は推定13億円!
他にもブラジルのロナウジーニョやポルトガルのC・ロナウドはナイキと契約、No.1ゴールキーパーであるイタリアのブッフォンはプーマと契約。
億単位のお金が乱れ飛ぶ、メーカーによる熾烈な選手獲得が行われているのです。

メーカーによるチーム・選手選びでの重要ポイント:強くて勝ち残るチームや選手と契約すること!

▼メーカーのユニフォームW杯
さて、アディダス、ナイキ、プーマの担当者にお話を伺いながら、今回のドイツ大会におけるメーカーのユニフォームW杯を振り返ってみましょう。
出場32ヶ国中、最も多くの代表にユニフォームを提供したのは、プーマ!
アフリカ勢五ヶ国全てを含む12ヶ国でした。

ナイキは、前回優勝のブラジルを含む八ヶ国。
一次リーグF組で日本と戦った三ヶ国全てがナイキでした!

アディダスは、強豪国揃いの六ヶ国。日本もその中に入ってます!

では、これらの中でどのメーカーが勝ち残っていったのでしょうか!?
決勝トーナメントベスト8に勝ち上がったのは、ナイキ2、アディダス3、プーマ1。
その他、イギリスのメーカーであるアンブロとイタリアメーカーのロットが一つずつ。

ベスト4はアディダスのフランス・ドイツ、ナイキのポルトガル、プーマのイタリア。

Q:ナイキが契約していた優勝候補のブラジルはベスト4に残りませんでしたが、一番売れたナイキのユニフォームはどこの国でしたか?
ナイキFBブランドマネージャー 青山節郎さん:全世界的には、やはりブラジルが一番人気でした。アディダスは、ベスト8でドイツ対アルゼンチンというサポートチーム同士の対決がありながらも、二ヶ国をおさえました。

Q:アディダスで一番売れた国のユニフォームはどこでしたか?
アディダスPRシニアマネージャー ジョー・キムさん:開催国ドイツのユニフォームでした。

Q:勝敗とユニフォームの売れ行きは関係あるんですか?
ジョー・キムさん:多少は影響すると思います。勝てば勝つだけそれなりに注目度はありますからね。

そして運命の決勝は、アディダスのフランス対プーマのイタリア。
何と、この対決はサッカー用品業界因縁の兄弟対決でもあったのです!
結果は、イタリアが四度目の優勝を遂げました。
プーマはスポーツ用品メーカーとして、W杯で悲願の初優勝を果たしました!

Q:ユニフォームが一番売れたのは、どの国でしたか?
プーママーケティング本部長 高宮達治さん:やはりイタリアでしたね!

アディダス、プーマ、ナイキのW杯をめぐる熱い戦い、これからも目が離せません!

▼さて、スタジオではゲストの二宮さんにお話を伺いました。
Q:今回のドイツW杯の日本チームの試合ぶりをどのように見ましたか?
A:残念でしたね。ですが、敗因ははっきりしていましたね。それは、日本選手の決定力不足とジーコ監督の采配不足です。初戦のオーストラリア戦が全てだと思っていましたが、あの試合のオーストラリアのヒディング監督のカードの切り方がすごかったと思います。

Q:アディダスとプーマの創業者が兄弟だという話がありましたが、現状ではアディダスの方が上になるのですか?
A:スポーツ用品メーカーではアディダスとナイキが二強で、プーマがその後を追っている状況です。W杯は延べ320億人、決勝は20億人が見たと言われるので、これ以上の宣伝の場はありません。

Q:今回イタリアが優勝したことで、プーマはどのくらいの儲けが入るのですか?
A:イタリアチームのデザインに関しては、世界的にファンがいます。それに対する広告宣伝の意図は達成されたと思います。

Q:チームの数ではプーマが一番多いですが、他社と張り合っているんですか?
A:プーマの場合、アフリカチームが多いですよね。アフリカは新興市場ですが、次の開催国は南アフリカです。W杯は開催国や開催国に近い国が有利ですから、次はひょっとしたらアフリカ勢の優勝が見られるかもしれません。そういうことまで恐らく考えているのではないかと思います。
また、FIFAは近頃サッカーを世界の文化にしようと力を入れています。例えば、1994年にはサッカーがあまり盛んではないアメリカでW杯が行われました。2002年には日韓大会があり、2010年はアフリカで初めての大会が行われます。サッカーに関して不毛の地と言われたところで、これまでもマーケットを開拓しようとしている。
そうなると、当然メーカーもそれを読んでいると思います。結局、先にカードを切れないと勝てないんですよ。これはジーコの采配と一緒でね(笑)

FIFAって何?

FIFAとはFederation International Football Association(フェデレーション・インターナショナル・フットボール・アソシエーション)の略で、国際サッカー連盟のこと。
ワールドカップを主催しているのはもちろん、各大陸に六つの下部組織を持ち、国連加盟国を超える207の国・地域が加盟する世界最大のスポーツ組織です。

FIFAは、サッカービジネスでもとても大事な役割を果たしています。FIFAの運営を支える収益の柱は、大きく分けて二つあります。

▼FIFA収益の大黒柱1 テレビ放映権料
全世界での延べ視聴者数は、サッカーW杯はトリノ五輪を軽く超えています。

そしてすごいのは、テレビ放映権料の上がりっぷり。
98年フランス大会の130億円から、8年後のドイツ大会では1410億円と、9倍に高騰しています。

▼FIFA収益の大黒柱2 公式スポンサー料
世界中が注目するW杯のテレビ中継。テレビ画面に企業名を入れられれば、広告効果は絶大。

しかし、テレビに映ることができる企業はごく限られた数しかありません。
それが、FIFA公式パートナー。
W杯ドイツ大会のFIFA公式パートナーのスポンサー企業は、ごらんの15社。
基本は、2大会連続の契約で80億円程度の金額と言われています。
試合の映像に公式パートナー以外が映ることは、絶対にありません。
公式パートナーになれるのは、1業者1社のみという厳格なルールに基づいて選ばれます。

そのため、試合会場への送迎バスも、地元ドイツメーカーのベンツにわざわざヒュンダイのロゴシールが貼られて運行されました!

また、こんな事件も!
会場に入ろうとした数百人のオランダ人サポーターが自国のビールメーカーのロゴが入ったパンツをはいていたため、入口で脱がされ下着姿で観戦させられたのです。
公式パートナーであるバドワイザーの権利を守るため、FIFAがとった措置でした。

▼FIFAのお墨付きをもらうと…スゴイ!
さらに公式パートナー以外でも、FIFAと契約して公認のお墨付きをもらうことで、いろんなものが世界中で売れるのです!
例えば、今大会で使われたアディダス製公式ボール「+チームガイスト」。
当初の販売目標は1000万個でしたが、全世界での売り上げは1500万個となりました!
つまり、タイプ別の平均を1個5千円とすると、推定で750億円もの売り上げに!

また、W杯開会式でヨーロッパの四人組人気グループのイル・ディーヴォとトニ・フラクストンが歌った「タイム・オブ・アワ・ライヴズ」は、FIFA公認ソング。
公認のお墨付きをもらうためにいくらFIFAに払ったかというと…
レコード会社によると20億円を支払っているとのこと!!
しかし、それだけの価値はあるんです。
イル・ディーヴォが三月にリリースしたセカンドアルバム「アンコール」の日本での売り上げは、W杯開幕をきっかけに、124位から15位へと急上昇!
世界中での売り上げは700万枚。全世界での宣伝効果を考えると、十分儲かっちゃうんですね。

ところで、FIFAは巨大な収益金を何に使っているのでしょうか?
W杯を決めた各大会の運営費はもちろんのこと、それ以外に年間150億円も投資する事業があるのです。
それが、ゴールプロジェクト。
まだサッカーがそれほど普及していない発展途上国に対し、サッカー用具の提供やグラウンドの整備など、サッカーに関するありとあらゆる資金援助をしているのです。
いわば、サッカー版ODA。世界中にサッカーをやる人が増えれば、サッカー人気もさらに盛り上がり、FIFAを中心とするサッカービジネスもますます拡大するという訳。
世界最強の儲かるスポーツであるサッカーの勢いは、とどまるところを知りません!!

▼引き続き、ゲストの二宮さんにお話を伺いました。
Q:こうやって見てみると、サッカーは儲かる感じがしますね。
A:W杯を世界最大のショーウィンドウと考えてもいいかもしれません。何しろ、W杯を見た人は320億人もいるんですから!

Q:それでは、ドイツまでわざわざで試合を見ても会場でドイツ以外のメーカーのビールを飲まなくてはいけないことは、ある意味仕方ないことなんですね。
A:そうですね、仕方ないですね。

Q:FIFA公式パートナーの一業種一社ルールもすごいですね。
A:今度は、企業数がもっと絞り込まれて、15社から6社になります。

そうなると、一社当たりのスポンサー料が高くなります。
ソニーの公式スポンサー料は、FIFAとの8年契約で約340億円にもなります。

Q:そんなにかけて、見返りはあるんですか?
A:ソニーの広告宣伝費はごくごく一分なんです。エレクトロニクス部門やパソコン部門、音楽やゲームなど、ソニーの事業領域は広いですが、その中でも世界でたった一社しか選ばれない。FIFAが開催する大会の多くで「SONY」と出ることで、有名なソニーの名がますます知れ渡ります。なので、確実に見返りはあります。

Q:FIFAに対抗するところはあるんですか?
A:スポーツ団体ではIOC(国際オリンピック委員会)です。IOCとFIFAは二強です。ただ、FIFAに対して一番対抗できるのは、各国のクラブ連合です。マンチェスターユナイテッドや、レアルマドリードなどといった、いわば世界のビッグクラブですね。選手の年俸や移籍金はクラブ連合が支払っています。FIFAとの契約によって選手を代表として拘束することになる訳ですが、そこで選手が怪我をしたらどうなるか、という問題もあります。各国のクラブからすれば、大金を投じて自ら育ててきた選手がFIFAの大会で怪我したら、少しはその分を補填しろと言いたくなる訳で、今そのような議論が実際に起こっています。

Q:今回の大会ではオーウェン選手などが怪我しましたよね。その場合はどうなったんですか?
A:FIFAは儲かってるんだから少しは負担して下さい、と各国クラブは言っています。現段階ではクラブ連合よりもFIFAの方が強いですが、将来的にはクラブ連合がもう少し拮抗する可能性もあります。

Q:クラブ連合が拮抗するとどうなるんですか?クラブ連合の力が強くなると、うちの選手をW杯に出さないよ、と言い出すクラブ連合も出てくるかもしれないのですか?
A:将来的にはないとは言えません。ただ、W杯の商品価値と各国が意志をかけて戦おうとすることの意味合いは違いますし、大会の重要性についてはクラブ連合も知っています。クラブ連合はW杯への出場を辞めろとは言わないと思いますが、W杯の代表として拘束する日を短くして下さいという注文をする可能性はありますね。

Q:今ヨーロッパで活躍する日本選手もいますが、クラブ連合がFIFAに拮抗してくると、日本に帰りなさいよと言う可能性もあるかもしれないのですか?
A:逆に言うと、ヨーロッパのビッグクラブでそこまで活躍する日本選手が出てくれば嬉しいのですが(笑)

Q:サッカービジネスの今後の狙い目を教えて下さい。

A:これからは女子サッカー。世界の先進国は少子化が進んでいます。将来的なマーケットを考えた場合、女性が子供を生んでお母さんになった時、お母さんは自分に役立つことをやらせます。お母さんがサッカーをやると、子供もその影響を受けるんですよね。そういうことまで考えていると思います。
A:僕も小学校からサッカーやっていて分かりますが、小学校のサッカーチームでは母ちゃんの応援が強いところは、大抵チームも強いんですよね(笑)

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