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「がっちりマンデー!!」毎週日曜あさ7時30分から

がっちりマンデー!!

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2005年5月15日放送

特集

M&Aの現場に密着!

ゲスト

渡邉美樹さん(ワタミフードサービス代表取締役社長)

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M&Aって何?!

和解という形で一応の決着がついたライブドアとフジテレビの買収騒動。
そこでがぜん注目されたのは…M&A!
M&Aとは、Merger&Acquisitionの頭文字をとったもので、合併と買収という意味です。

GCA株式会社代表取締役の佐山展生さんによると、M&Aは急速に右上がりにこの10年間で増えているとのこと。
このグラフからも分かるように、日本のM&A、企業買収の件数は近年急激な伸びを見せています!

M&Aの例としては、焼肉チェーンの牛角がコンビニエンスストアampmを買収!
800億円だった売上高が、翌年には1400億円に!

また、フランスの自動車メーカーのルノーが日産を買収。
ルノーから送り込まれたゴーン社長は、見事日産の復活に成功しました!

そして今年二月、ライブドアがニッポン放送の買収に乗り出していた頃、ある会社のM&Aが進んでいました。
それは…居酒屋チェーン「ワタミ」!
あの熱血の渡邉美樹社長もM&Aに踏み切っていたんです!
今回は、居酒屋チェーンのワタミが介護事業の会社を買収するまでを完全密着しました!

ところで、なぜM&Aで会社を買うのでしょうか…?それは、ずばり儲かるから!

M&Aはその儲け方で、大きく2つに分かれます。
一つは「転売儲け型」。
会社を買収して建て直し、株価が上がったら他の会社に売って株の売却益で儲けるというやり方です。

米国のリップルウッド・ホールディングスが日本テレコムを2513億円で買収。
その後ソフトバンクに3400億円で売却したところ、887億円の売却益が!

もう一つは、「組み合わせ儲け型」。
これは、自分の会社の長所と買った会社の長所を組み合わせて事業を拡大して、儲けを増やすやり方です。

楽天が、DJディレクトSFG証券を買収。「ショッピングサイト」と「証券会社」のそれぞれのノウハウが一つになって、180億円だった楽天の売上高が、買収の翌年には455億円に!

そして今回、ワタミが組み合わせるのは「外食」と「介護」!
この意外とも思われる組み合わせに、大きく儲かるM&Aパワーがあったんです!
それでは、ワタミが行ったM&Aを見ながらその方法を勉強していきましょう。

渡邉社長が仕掛ける!ワタミフードサービスのM&Aに密着!!

▼M&A儲かる仕組みステップ(1)密かなスタート
およそ一年前に渡邉社長がこの番組に出演した頃、実はワタミのM&Aが密かに始まっていたのです!
その当時、1700名の従業員の中でM&Aの話を知っていたのは…渡邉社長・高橋副社長・M&A担当の小林部長のたった3人。
最重要機密としてM&Aは進められました。

▼M&Aの儲かる仕組みステップ(2)買収する会社を探す
渡邉社長は、「介護事業をしている会社を探してほしい」と銀行、証券会社、M&Aコンサルティング会社などの「M&Aアドバイザー」に依頼しました。
M&Aアドバイザーとは、常に様々な業界の買いたい会社と売りたい会社、それぞれの情報を持っている人物のこと。会社同士をお見合いさせ、買収成功までをリードしていく、いわば仲人のような存在なんです。

GCA株式会社の佐山さんによると、M&Aアドバイザーに誰がどう聞くかによって答えが違うといいます。Aさんが行って「売らない」と言われても、決して終わりではなく、Bさんが行けば売るということもあるのです。

実は、IT業界の勝ち組である楽天の三木谷社長も、日本興業銀行時代にM&Aアドバイザーとして活躍していました。現在の企業買収の成功もうなずけます。

渡邉社長の所に挙がってきた会社の中で彼が興味を持ったのは、神奈川県海老名市に本拠地を構える「アールの介護」という会社。
関東一円で16棟の介護老人ホームを経営しているという、介護業界では老舗の会社。

しかし調査を進めると、この会社を買収するには、20億円の借入金を含め100億円近い資金が必要と判明したのです…
これは、今まで20年間ワタミが借金した金額とほぼ同じか、それ以上にあたる額となるくらいの大金なんです!

▼M&Aの儲かる仕組みステップ(3)社内幹部への発表
2月25日にワタミ本社で開かれた取締役会議で、M&Aの突然の発表。
幹部役員たちは、ワタミが介護企業を買収することをそこで初めて知らされました。

▼M&Aの儲かる仕組みステップ(4)マネージメントインタビュー
決算報告など数字上のデータは入手できても、最終的に重要なのは人材!
買収する会社の幹部と直接面談し、社内の雰囲気や経営の考え方などを探ります。

通常は部長クラスが出向くというマネージメントインタビューですが、渡邉社長は自らアールの介護本社へ乗り込むことに!
買収される側にしてみれば、渡邉社長は明らかに侵略者ですが、渡邉社長は笑顔の名刺作戦で幹部と対談し、さらにアールの介護の創業者の川邉会長にも面談して理解を得ました。

▼M&Aの儲かる仕組みステップ(5)最終交
GCA株式会社の佐山さんは、M&Aの最終交渉についてこうコメントしています。

「買収契約書のサインをするまでは本当にどうなるかわかりません。調印式の準備をしていて皆が集まっている所に、結局社長だけが来なかったということもたまにあるんですよ。最後の交渉とはどちらも譲れない所をどうするのか、と議論するところなので、朝5時、6時まで行われる、というのもざらです。」

M&Aの記者発表を明日に控えた3月28日。
ワタミのM&A担当の小林さんは最終交渉に入っていました。
しかし、何%の株をいくらで買い取るかなど、条件面で交渉は難航…
結局、契約書の中身が最終的に合意できたのは3月28日の夜11時過ぎでした!

そしてついに記者発表当日の3月29日。
最終的には、ワタミが100%の株を取得することで両者が合意、買収が成立しました!

翌日、1700名の社員にアールの介護を買収したことを報告。
続いて渡邉社長が向かったのは、アールの介護の現在の社長のもと。
社長が交代することを直接伝えるのだといいます。
実は、無用な混乱を避けるために、渡邉社長は社長交代についてはギリギリまで伏せてきたのです。
現在の社長は、その時に初めて社長交代を知らされました!
そして、アールの介護の幹部たちに渡邉社長が買収したことを報告しました。
このように様々な道のりを経てワタミはM&Aにたどりつきました。
今後アールの介護をどう変えていくのか、渡邉社長への期待は大きいようです

渡邉美樹社長にインタビュー M&Aの裏話(1)

さて、スタジオではワタミフードサービスの渡邉美樹社長に、M&Aの裏話をあれこれ聞いちゃいました!

Q:買収にあたって一番苦労したことは何ですか?
A:ワタミはアールの介護を93億5千万円で買ったわけですが、その価値があるのかどうか、ということです。つまり、株主が納得して頂ける価格かどうかということ。ですから、私は買収前日の夜11時まで、電話であれこれ指示を出していました。

Q:その結果、社長にとっては一番いい状態の値段で買えたということですか?
A:一般的にみたら高い値段だと思います。普通に経営していたら、元を取るのに約15年かかりますが、我々は借金を5、6年の短期間で返そうという励みを持ってやっています。

Q:M&Aをする上で、渡邉社長はアールの介護の社長に「変わりましょう」と直々に社長交代を告げましたよね?
A:いやなことは直接自分で言わなくてはならない。人に言わせるのは簡単だけど、一番いやなことだからこそ、社長に「お疲れ様でした」と言いに行きたいですね。

Q:社長の後に(アールの介護の社長のためのポストを)残すことはできないんですか?
A:いろいろ考えましたが、残さない方がいいと判断しました。

Q:M&Aは、ワタミにとって実は今回が初めての試みではないということですが?
A:私はもともと介護をやりたかったんですね。そう思っていたら、たまたま理念も良くてワタミと合いそうな会社を自分で見つけたんです。ですから、「一緒にやらせて下さい!」とアールの介護に直接一人で電話交渉して、ついに向こうに乗り込んでしまいました。相手の社長はびっくりしてました(笑)でもそれは実に友好的だったんですけどね。ただM&Aのプロの方に言わせると「そんな無謀なことして成功することはない」とのことでしたが(笑)

Q:払う手数料はどのくらいだったんですか?
A:M&Aアドバイザーの方は、通常売却金額の3%かかるとのことでした。つまり、今回の取引では3億円程度になりますね。我々はそれなりのお金(=93億)を払いましたが、私はその価値があると思っています。

居酒屋チェーンと介護老人ホームが手を組むメリットとは?

買収成立後、アールの介護本社で行われた幹部会議。
アールの介護の前経営陣から残ったのが、ただ一人の常務。
一方、周りは全員ワタミの幹部…
従って、両社の意見のすれ違いが生じることも少なくありません。

全国で460店舗ものチェーン展開をし、各店舗の運営管理をしてきたワタミの経営陣と、16棟の介護施設を運営管理してきたアールの介護。
経営に対するスピード感の差が、食い違う原因のようです。

ところで、居酒屋チェーンのワタミと介護老人ホームが一つになることで、どんなメリットがあるのでしょうか?

▼(1)「施設の改装」で居酒屋パワーを発揮!
渡邉社長は、少なくとも週に一度は自ら各地の老人ホームを視察しています。
築15年の物件の狭くて暗い部屋を見た渡邉社長は、大胆にも改装の計画について簡単に話していました。

一体なぜなのでしょうか?
それは、ワタミが子会社に建設部門を持っているから。
各地で店舗を作ってきたノウハウを使って、古くなった介護施設のリフォームもすぐに対応できると言う訳なんです。

▼(2)「介護スタッフの育成」で居酒屋パワーを発揮!
アールの介護は、若いスタッフの人材育成に手詰まりを感じていました。
そこで、460店舗の店長を育て上げたワタミの人材育成マニュアルが力を発揮!
スタッフ育成はお手のものです。

▼(3)「食事の改善」で居酒屋パワーを発揮!
入居者に食事の感想を聞いてみる渡邉社長。
すると…入居者の口をついて次々と出てきたのは、本音で語る辛口コメント!
ですが「居食屋」を名乗るワタミにとって、食事メニューの改善はノウハウを最大限発揮できる部分なんです!!
ワタミでは、ワタミの農場で採れた有機野菜や独自ルートで入る新鮮な肉や魚を使っています。
このように食材調達から調理まで従来のシステムを使うため、低コストでおいしい料理が提供できるという訳なんです。
居酒屋チェーンと介護ビジネスの組み合わせ。
このM&Aパワーで、渡邉社長は2020年までに介護老人ホーム1000棟を目指します!!

渡邉美樹社長にインタビュー M&Aの裏話(2)

ワタミの驚くべき大胆な目標を知ったスタジオの加藤さんと進藤さんは、さらに渡邉社長を直撃しました!

Q:2020年までに介護老人ホーム1000棟の建設を目標にするとは、すごいですね!
A:我々がこれはできる!と思っているのは、21年間のワタミのノウハウが介護事業にも全部生かせるからなんですね。

Q:外食産業のワタミが介護事業を思いついたのはなぜですか?
A:日本では現に、十分な介護を受けていない方が多い。国がやっている特養老人ホームでは三十数万人待ちという有り様です。一方でお金のある人は、高いマンションを買うことができる訳です。普通の生活をしてきた人が、普通の年金以外で幸せに暮らせる老人ホームっていうのが、非常に少ない。それなら、これを作らなくてはいけないじゃないか、このような老人ホームを作ることこそが我々の仕事ではないか。このように居酒屋チェーンと介護事業を結びつけて考えて、どうすれば介護を喜んで頂けるか、ということを検討してみたら、何とお互いの共通項がバンバン出てきた、と言う訳なんですね。

Q:これからワタミが介護以外に注目するビジネスとは?
A:それは「環境」です!先月京都議定書が批准されましたが、1990年比でCO2の排出量を6%削減することが決まりました。つまり、今から比べると13%落とさなくてはならないということなんです。
そこで、ワタミは実際に13%のCO2の排出量を削減する仕組みを作りました!それが「エネルギー・マネジメント」と言う特別な仕組みなんですが、将来他の会社の方に作って頂けたら、と思っています。また、現在「ワタミ・エコロジー」という会社も実際に立ち上がっているんです!
抜け道無しの大規模な経営戦略を発揮するワタミの渡邉社長。ワタミの今後のビジネスに、期待大です!!

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