高度成長期には、柱時計や扇風機のタイマーなど様々なゼンマイ仕掛けが身近にあった。次々と電子式に取って代わられ、メーカーも数える程しか無くなってしまった日本のゼンマイだが、その力でクリーンな電力を生み出そうとしている男がいる。富山県黒部市の東洋ゼンマイ社長、長谷川光一、58歳。
用水路などの小さな流れでも水力発電が出来るゼンマイ仕掛けの発電機開発に取り組んでいる。ゼンマイ工場の跡継ぎとして生まれ、独特の金属臭を嗅ぎながら育った長谷川。阪神大震災を契機に、ゼンマイを使った非常時の電力供給を考え始めたとき、48歳で脳卒中で倒れ、生死の境をさ迷った。生きている限り、社会の、そして未来のために、ゼンマイを役立てたい。そう考えた長谷川が今開発を進めるのが、ゴミも二酸化炭素も出さないゼンマイでのクリーンな発電だ。省電力が大きく叫ばれる今、ゼンマイはクリーンな動力として脚光を浴び、生活の様々な場面で再び動き始めている。大きなゼンマイを使えば、小型の発電機を回すのは造作もないが、一度動力を発生すれば、巻き直さなければならないのがゼンマイの宿命。長谷川は、一体どうやってこの問題を解決しようとしているのか。
小さな流れさえあれば、どこでも電気が起こせるという「ゼンマイ式水力発電」。その実験に挑む長谷川を追った。