今日は、ホームレスなど路上生活者や、生活困窮者の支援活動をしている立川市の民間の施設、さんきゅうハウスを長田新さんが取材しました。
ここでは、路上生活を余儀なくされている人が、木曜と日曜を除く週5回、
無料でお風呂に入り、食事をすることができます。また、スタッフが、
仕事や生活保護の相談に乗ってくれます。
NPO法人さんきゅうハウス理事の大沢ゆたかさんに、さんきゅうハウスを作ったきっかけを伺いました。
「ある時ですね。若者で、『就職したい』というので、面接に行く時に、『ちゃんと、綺麗な服を着て、お風呂に入って行って下さい」という感じで、新しい服と銭湯の入浴券を渡して、『これで身ぎれいにして、面接に行って下さい』という感じで。しかし、結果的にはその人、銭湯から断られてお風呂に入れなかったんです。やっぱり、路上生活の人たちが社会復帰して行くためには、そこまで用意しないと今の社会では復帰できないんだと
いうことですよね」
一旦、ホームレスになってしまうと、社会復帰するには、相当、
高いハードルがあるということなんですね。
そこで、さんきゅうハウスでは去年11月、それまでアパートの一室だった拠点から、
3階建ての一戸建てを借り、路上生活をしていた人が社会復帰に向けて住むための
個室も用意しました。現在、2人の方が生活しています。
さて、お昼時になり、さんきゅうハウスの食堂には数人の人が、ご飯を食べにやってきました。
この日のメニューは、ご飯とジャガイモの味噌汁、焼きそばの3品でした。
食事をしている人に話を聞きました。
「おいしかった。なんか、友達に聞いたんですよ。ちょっとあの、仕事が見つかるまで、ここでちょっと、食べさせてもらおうかなと思って。働いていなくたって、お腹は減るか
ら。ありがたいですよ。食べ放題だから。はい」
ご飯は、各自が自分でよそうんですが、どの方も、ご飯を山盛りに盛り付けているのが
印象的でした。「あそこに行けば、ご飯を食べさせてくれて、お風呂に入れる」という
オアシスのような存在になっているんです。
今から11年前に、「ホームレス自立支援特別措置法」が施行されたことにより、
全国でホームレスの自立支援センターの運用などの施策が行われた結果、
厚生労働省の調査によりますと、10年前に全国で2万5000人以上いたホームレスは、
去年初めて1万人を切るまでになりました。
しかし、立川市をはじめとした三多摩地域の各自治体は、この法律を運用していないため、
ホームレス対策は、民間の「宿泊所」が中心になっています。
社会的弱者に対する「宿泊所」と聞くと、「貧困ビジネス」なども連想されますが、
「貧困ビジネス」とまではいかなくても、一般的に「宿泊所」は、
個室で何人かが共同生活をしますから、病気や自立的な行動ができない人は入ることができません。
したがって、そういう人は、いつまでも、路上生活から抜け出すことができない状況です。
そこで、さんきゅうハウスが、独自の支援活動を行っているんです。
最近、さんきゅうハウスにやって来る人に、気になる傾向があるということで、
自らもホ?ムレスの経験を持ち、現在は、
さんきゅうハウスの管理人を務める方に、話を伺いました。
「まあ、去年の暮からぼちぼち出てきたんですけども、まあ、20代、30代、40代の方が、ほとんどホームレスをしているっていう。多少、金がある時はネットカフェに泊まっていたり、カプセルホテルに泊まっていたり、それで、なんとか費用を浮かせようという、一食でもなんとかしようということで、ここに食べに来る人も増えています。それで、実際に生活保護をもらっていても、もう、もらって何日かは自分で生活できるんだけども、1週間とか2週間で尽きて、『なんとかしてくれ。食わせてくれ』って、来る人も増えています」
実際に、若いホームレスの人と至近距離で会ってみると、「えっ、この人が!?」という
第一印象で、自分と見た目があまり変わらなくて驚きました。
若い方は、やはり、「恥ずかしい」とか「人に知られたくない」という気持ちもあるでしょうから、
なかなか、自分から助けを求められないということもあると思います。
さらに今、さんきゅうハウスは、運営上、大きな問題に直面しています。
副代表の吉田和雄さんです。
「路上生活や生活困窮者に対する想像以上の偏見があると、今でも思っています。誰でも同じような立場になり得るんだということで、僕らはこれをやっているわけですから、特別な方のための施設とかではないんです。それから今、助成金というものを頂いて、それとカンパと、市民の。両方でやっているんですが、助成金がもう、いつどうなるか分からないというところに今きていますので、自分たちでとうやってそれを切り盛りして行けるかというのが大きな課題になりますね今後のね」
ということで、色々と厳しい状況の中、頑張っていらっしゃるんです。
吉田さんは、今後は、助成金を募りながら、喫茶店や野菜の販売など、
働く場を作れないか模索して行きたいと話していました。
本来、行政が十分な支援を行うべきところで、さんきゅうハウスの果たしている役割は大きいですね。<