担当：岡本祥子

年度末ということで転勤や新生活に向けての「引越シーズン」ですが、
今回は子育てをしている家庭向けの「お引越し下見サービス」を取材しました。

この「お引越し下見サービス」は、
調布市に拠点を構える「非営利型株式会社ポラリス」が、
去年の秋に始めたサービスで特徴は、
実際に地域で子育て中のお母さんが物件の内覧だけではなく、地域性を調べたり、
具体的なエリアの下調べをしてくれるんです。
「お引越し下見サービス」を立ち上げたいきさつを
非営利型株式会社ポラリス　代表取締役　市川望美さんは
『せっかく子育てとか地域で暮らしていることそのものを
価値に変えられるような仕事を作りたいなということで、
街の情報や暮らしの情報に長けているお母さんの力を生かすためには、
　引越ししてくる人の代わりに街の情報を調べてあげるのが一番いいだろうと
　立ち上げたサービスです。』と話してくれました。

　 大事なのは地域に住んでいるお母さんの視点なんですね。

対象のエリアは主に調布市、世田谷区、狛江市で、
行政や周辺施設などの基本情報の他に、 例えば「最寄り駅まで歩いて5分」とされている物件でも、
途中に坂があるとか、ベビーカーやよちよち歩きのお子さんと歩く場合、
雨の日に歩く場合の時間など、インターネットだけではわからない
住む人ならではの情報を具体的に調査します。

このサービスは有料で、あくまでも「お仕事」として
お母さんたちが依頼に沿った下見をしています。
このサービスを提供している非営利型株式会社「ポラリス」は、
地域で子育てをしている女性たちが、働きやすい仕事を作ろうと、
子育て中のお母さんたちが1年前に立ちあげました。
下見サービスは地域のお母さんの仕事にもつながっているんです。

仕事を請け負う下見のプロとしての視点が必要なため、
下見をするお母さんは前もって研修を受けてから調査に入ります。

お母さん目線での引越しの下見のポイントについて
ポラリスの企画部　山本弥和さんに伺いました。
『基本的には長い目を持って見るということ。
子どもの成長のスパンは本当に短いので、乳幼児から幼稚園、
さらに小学生になると、必要なこともどんどん変わってきてしまうので。
良い面と悪い面を客観的にきちんと把握し、悪い面はどうやったら楽しめるか、
暮らしを楽しむコツみたいなのを必ず盛り込むようにしています。』

大切なのは今の自分の目線だけではなく、
長い目で住んでいく環境を考えることなんですね。

住むための環境という面では、個人のお母さん以外にもニーズがあり、
不動産関係の企業からの依頼もあるそうです。
不動産販売の広告作成のため、サービスを利用している
株式会社　広和　営業部　滝沢浩二さんは
『基本的に自分が男だからというのはあるんですけど、
　子育て目線とか女性の目線とかというところで、
　作っているつもりでも作れてこなかったと思うので。
　そこに客観的な第三者でしかも本当のママの言葉であがってくるものが
あるというのはすごく心強いというか。
マンションを買う方に向けても説得力があるんじゃないかなと思います。』
　と話していました。
マンションや家を買う場合は大きな買い物ですし簡単には引越しできませんから、
販売する側からの具体的な情報があると安心して購入できそうですね。

滝沢さんはさらに、マンションを売る側として
「今後は情報提供だけでなく、これから開発する物件に対して
子育てをする当事者としての意見を聞いたり、
　協力してモデルルームで地元に住んでいるお母さんの生の意見を伝える場を
　作っていきたい」と話していました。

更なる可能性についてポラリスの市川さんは
『実際、引越しって外から越して来る方たちなので、
同じように地域に根差して働いているＮＰＯや子育てグループと連携して、
　お互いがお互いのエリアの紹介をし合う仕組み。
　例えば、東京から大阪に引っ越す人がいたら、大阪には○○さんが
　下見をやっているから利用するといいよ。と、
　お互いを繋ぎ合うような広報がでればいいなと思っています。』と話しています。

　サービスを始めてから4カ月。反応がある割に、申し込みは少ないため、
　今後は他の地域の人に向けて情報を発信するため、
　ネットワークをどう広げていくかが課題だそうです。

　依頼をしているお母さんや企業にとって、大変便利なサービスですし、
　地域のお母さんの働く場にもなっているので、もっと広がっていって欲しいですね。