この差って何ですか?

毎週火曜よる7時

過去の放送内容

2019年1月29日

(1)地名「大阪」と名字「大坂」の差

(写真)

専門家:関和彦(日本地名研究所 所長)、髙信幸男(名字研究家)

この差は…
地名の「坂」の縁起が悪いと考え変えた「大阪」
名字の「大坂」は、「大坂屋」から付けた「大坂」 か どうか
「大坂屋」は、北海道や東北・北陸地方の商店の屋号

〇名字の「大阪」と「大坂」、世帯数はどちらが多い?
NTTの「ハローページ」で確認したところ、「こざとへん」の「大阪」は113世帯で、「つちへん」の「大坂」は2061世帯と、圧倒的に「大坂」が多かった。

〇なぜ地名の「大阪」は、「こざとへん」なのか?
現在の大阪府は「こざとへん」の「阪」ですが、かつて大阪の「サカ」は「坂」を用いていた。そもそも現在の大阪府のあたりが、「オオサカ」と呼ばれるようになったのは室町時代の頃といわれている。室町時代、当時の「摂津国(せっつのくに)」に浄土真宗の僧侶「蓮如(れんにょ)」が寺を建てた。その寺の近くに大きな坂があり、「大きな坂がある寺」ということから、「大坂御坊(おおさかごぼう)」(※御坊=寺)と呼ばれるようになった。
その後、安土桃山時代になると、天下統一を果たした豊臣秀吉が「大坂御坊」の跡地に「大阪城」を建てた。現在は「大阪城」と表記されているが、当時は「大坂城」と表記されていた。
江戸時代になると「大坂」の「坂」は縁起が悪いとされ、「阪」に変えるようになった。なぜなら、「坂」は「土+反」でなりたっており、「つちにかえる」、つまり「死を連想させる」と考えられ、縁起が悪いとされた。明治時代には、「大阪府 府令」(明治2年)が発令され、正式に「大阪」となった。

〇なぜ名字は縁起が悪いとされた「大坂」が多いのか?
多くの方が「大坂だった頃に、その辺りに住んでいた人たち」が名乗り始めたと思われがちだが、実は違う。実際に「大坂」という名字の住んでいる方の住所を調べると、主に北海道や東北・北陸地方に多いことがわかった。実はテニス選手の大坂なおみ選手も、おじい様は北海道の方。
江戸時代の頃、北海道や東北・北陸地方には、「大坂屋」と言って、大坂から仕入れたモノを売るお店があった。そして、そのお店を営んでいる人たちが、「大坂」という名字を名乗ったと考えられる。
名字を変えなかった理由としては、すでに大坂屋が繁盛していたため、「今さら変えられない!」ということで、屋号と同じ「大坂」をそのまま名字にする人が多かったと考えられる。

(2)多数の漢字がある「ワタナベさん」の差

(写真)

専門家:髙信幸男(名字研究家)

この差は…
「戸籍法(明治4年)」における登録時の記入ミスで、たくさんの「ワタナベ」が生まれた
最初の「ワタナベ」さんの漢字は「渡部」

〇「ワタナベ」さんの漢字は58種類
NTTの「ハローページ」や人名辞典で調べてみたところ、渡辺や渡部、渡邊など、58種類あった(2019年1月時点)。ただし、実は、たった一つの「ナベ」という文字から、これだけの名字が発生した。

〇最初の「ワタナベ」さんの漢字は「渡部」
飛鳥時代には、「部」を使った「渡部」さんがいたと言われている。この「渡部」さんは、現在の大阪府にあたる場所にあった「摂津国(せっつのくに)」で「船渡し」をしていた人たちが名乗った名字といわれている。そもそも「部」という漢字は、当時の「職業を表す漢字」。「船渡し+部(職業)」なので、「渡部(わたしのべ)」と言われていた。その後、読み方にも変化が起き「ワタナベ」になった。そして、職業名である「渡部」が、そのまま名字になった。

〇「渡部」の次に登場したのが「渡辺」
「渡部」の次に登場したのが「辺」と書く「渡辺」。そして、「渡辺」は現在100万人以上いる名字で、現在日本の名字ランキングでも6位に入っている。
平安時代、大阪・摂津国にいた「渡部」さん。彼らは職業柄、川の近くの集落に住んでいた。その集落のことを「渡部の辺り」と呼ぶようになり、次第に「渡辺」と略して言うようになった。つまり、「渡辺」は元々「地名」だった。そして、その土地を治めるために、「源綱(みなもとのつな 953〜1025)」という源氏一族の武士がやってきた。その「源綱」が「渡辺綱(わたなべのつな)」と名乗るようになった。
その後、「渡辺綱」が、都に出没していた「鬼」と呼ばれる盗賊を退治したことから、その「鬼退治伝説」は、都周辺に広がることになる。そして、「渡辺綱」の名声に憧れる「渡部」さんが「渡辺」に名前を変える人が増えた。
鎌倉時代には、船渡しの「渡辺さん」は、船操技術で各地の権力者に雇われるようになり、日本全国に広がった。

〇「部」と「辺」以外の「ワタナベ」は、どのように生まれたのか?
明治4年に「戸籍法」が制定され、戸籍を届ける時に多くの「ワタナベ」の文字ができた。
当時は名前を申請する際に、役人に口頭で伝えたため、間違えが多発した。役所のなかには、旧字体である「渡邊」で登録するようにしてところもあったが、漢字の読み書きができない役人もいたため、記入ミスにより、微妙に違う漢字の「ワタナベさん」がたくさん誕生してしまった。

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