この差って何ですか?

毎週火曜よる7時

過去の放送内容

2018年9月25日

(1)「着物」と「呉服」の差

(写真)

専門家:横手里望(清水学園 講師)

この差は…
「衣類」か「絹の生地」か どうか
「着物」は「衣類」のこと。「呉服」は「絹の生地」のこと。

〇「着物」とは?
「着物」とは、足首まで裾があり、最後に帯を締める衣類のこと。

〇「呉服」とは?
「呉服」とは、衣類を指す言葉ではない。
弥生時代、衣類に使う素材は「麻」と「綿」しかなく、身分が高い人も低い人も、みな「麻」か「綿」の衣類を着ていた。しかし、弥生時代中期になると、現在の中国(当時の呉)から日本に「絹」の生地が伝わってきた。それまで「麻」と「綿」の生地しか知らなかった日本人は、キメが細かく肌触りの良い「絹」の生地に衝撃を受けた。そして、「絹」の生地は、身分が高い人たちだけしか手に入らない高級生地として扱われるようになった。
当時の日本では、生地のことを「服」と書いて「はとり」と呼んでいた。そこで、「呉から来た絹の生地」のことを、「呉から来た絹の服(はとり)」、略して「呉服」と呼ぶようにした。つまり、「呉服」とは、完成された衣類ではなく「絹の生地」のことを指している。実際に広辞苑を見てみると、現在でも「呉服」は「呉の織り方によって織った布。絹の織物。」と明確に書かれている。

〇なぜ「呉服」が「着物」と同じ意味だと思われている?
江戸時代に「呉服屋」が誕生したのがきっかけ。江戸時代に誕生した「呉服屋」では、完成した着物は売っておらず、絹の生地である「呉服」だけを売っていた。
「呉服屋」では、当時としては画期的なあるサービスを行っていた。当時「着物」は身分の高い人も低い人も生地を買って持って帰り自分で作っていたが、「呉服屋」が仕立て職人を雇い、「呉服」からオーダーメイドで「着物」を作る新たなサービスを始めた。すると、完成した絹の「着物」を着て「呉服屋」から出てくる姿を目の当たりにした庶民は、「麻」や「綿」とは違い光沢のあるキラキラした絹の着物に衝撃を受けた。「呉服」は高価で身分の高い人しか買えず、庶民は「呉服屋」に出入りできなかった。「呉服」を見たことがない庶民は、完成した絹の「着物」を着て「呉服屋」から出てくる姿を見て、「呉服」は「完成した絹の着物」だと勘違いした。こうして、江戸の庶民の勘違いによって、本来「絹の生地」を指す「呉服」という言葉が、「完成した着物」という意味で使われるようになった。

(2)「値段が高い柿」と「値段が安い柿」の差

(写真)

専門家:熱川靖高(JA紀北かわかみ)

この差は…
「固形アルコール」で甘くするか、「炭酸ガス」で甘くするか どうか
「値段が高い柿」は、「固形アルコール」で甘くしている。
「値段が安い柿」は、「炭酸ガス」で甘くている。

〇秋が旬の果物「柿」
秋が旬の果物といえば「柿」。「ビタミンC」と「βカロテン」が豊富に含まれるため、「疲労回復」や「老化防止」に効果がある。見た目がほとんど同じ2種類の「柿」でも、値段に約2倍もの差がある。同じ「刀根早生(とねわせ)」という品種で、産地も同じ「和歌山県」なのに、値段に差があるのはなぜ?

〇「値段が高い柿」と「値段が安い柿」を切ってみると…
切ってみると、「値段が高い柿」はオレンジ色にたくさんの黒い点々が入っており、「値段が安い柿」はオレンジ色一色で中身が全然違う。食べてみると「値段が高い柿」の方が甘い。

〇値段の差は何から生まれる?
「柿」には、熟すと甘くなる「甘柿」と熟しても渋いままの「渋柿」の2種類ある。実は、「値段の高い柿」も「値段の安い柿」も「渋柿」。今売られている柿は値段の高いものも安いものも、「渋柿」を人工的に甘くしている。2種類の「柿」の値段の差は、「渋柿」を甘くする方法が違うから。

〇「値段が安い柿」はどのように甘くしている?
収穫した「渋柿」を、巨大な装置に入れシートで覆う。これは「炭酸ガス」を充満させて柿を甘くする装置。「値段が安い柿」は、「炭酸ガス」で甘くしている。
「柿」の渋みの原因は「タンニン」と呼ばれる成分で、食べた時に「タンニン」が舌から吸収されることで渋みを感じる。シートで覆われた装置の中に「炭酸ガス」を入れると、装置の中が「無酸素状態」になるため、「渋柿」は呼吸できなくなる。すると、「渋柿」に含まれる「アセトアルデヒド」が活性化し、渋み成分である「タンニン」を包み込んでくれる。そのため、「渋柿」を食べても「タンニン」が舌で吸収されにくくなり、渋みを感じにくくなって、「柿」本来の甘さが引き立つ。この方法だと1度に大量の「柿」を甘くすることができるので、安く売ることができる。

〇「値段が高い柿」はどのように甘くしている?
「値段が高い柿」は、まだ熟していない「青い渋柿」を甘くしていく。その際使うのが、「固形アルコール」。
「固形アルコール」を袋に入れ、「青い渋柿」を包んでいく。この状態で2日間放置する。 「柿」が「アルコール」を吸収することで、「柿」の中にある「アセトアルデヒド」が活性化し、渋み成分の「タンニン」を包み込むので、渋みを感じにくくなる。「値段が高い柿」は「固形アルコール」の入った袋で包み2日たったら袋を外し、およそ30日間かけてゆっくりと熟成させていく。
「値段の安い柿」は、1日で甘くしているので「タンニン」を全て抑えることはできない。一方、「値段の高い柿」は30日間もの時間をかけて隅々まで熟成させているので、ムラなく「タンニン」を抑えられ、より甘く感じる。
「タンニン」は「アセトアルデヒド」と結びつくと、時間が経つにつれて黒く変化する性質があるので、30日間かけて熟成させている「値段の高い柿」は黒くなる。
「固形アルコール」の方法だと1つ1つが確実に甘くなるが、手作業で袋を被せるなど手間がかかるので、高い金額になってしまう。

(3)「昔の健康常識」と「今の健康常識」の差

(写真)

専門家:植田美津恵(東京通信大学 医学博士)、梶本修身(東京疲労・睡眠クリニック 院長)、宮崎雅樹(みやざきRCクリニック 院長)、木村百合香(荏原病院 耳鼻咽喉科 医長)、伊藤静夫(五反田内科糖尿病クリニック 院長)、天野聖志(天野歯科医院 院長)

この差は…
「ストレス」に関する健康常識の差は、イライラした時「カルシウムをとると良い」が間違い。
「風邪」に関する健康常識の差は、風邪を引いた時「食事をとらないと元気になれない」が間違い。
「傷」に関する健康常識の差は、怪我をした時「傷口に消毒液をかける」が間違い。
「耳」に関する健康常識の差は、「耳」に水が入った時「水を抜かないと中耳炎になる」が間違い。
「食事」に関する健康常識の差は、「食べてすぐに運動をしない方が良い」と「疲れた時は甘いモノを食べると良い」の2つが間違い。
「歯」に関する健康常識の差は、「食べたらすぐに歯磨きをする」と「歯磨きをした後は口をしっかりゆすぐ」、「歯を磨く時は歯ブラシをしっかり濡らす」の3つが間違い。
「昔の健康常識」と「今の健康常識」が違うことがたくさんある。


〇「ストレス」に関する昔と今の健康常識の差
イライラした時、昔は「カルシウムをとると良い」と言われていたが、今の健康常識では「カルシウム不足とイライラは関係ない」と変化。
血液中の「カルシウム」が脳に運ばれると、脳の興奮を抑えるという作用はある。しかし、そもそも血液中の「カルシウム」が不足した場合は、骨の「カルシウム」から補給されるため、血液中の「カルシウム」が不足するという状態はまずありえない。もし本当に血液中の「カルシウム」が不足した場合は、肌がボロボロになったり、最悪痙攣(けいれん)状態に陥ったりして、イライラするだけでは済まない。恐らく何らかの病気である可能性が高い。
〇なぜ「イライラ」と「カルシウム」が関係あると思われた?
そもそも「カルシウム」の不足がイライラを招くという情報は、1975年にある雑誌で「ストレス社会の原因はカルシウム不足」という記事が載ったことが原因。当時はオイルショックなどの影響で高度経済成長も終わりを告げ、深刻なストレス社会の真っただ中で、日本中が「イライラ」を強く感じていた。ちょうど同時期に「食の欧米化」が一気に進み、それまでの魚中心の食生活から、肉中心の食生活へと変わり、「カルシウム」の摂取量が減少した。つまり、当時社会問題となっていた「ストレス社会」と、「カルシウム」の減った「食の欧米化」が偶然重なったことで、「ストレス」の原因と「カルシウム」不足を結びつける記事が出たことで、日本中が信じ込んでしまった。

〇「風邪」に関する昔と今の健康常識の差
風邪を引いた時、昔は「食事をとらないと元気になれない」と言われていたが、今の健康常識では「食欲がない時は食べない方が良い」と変化。
昔は体力を蓄えるために食事をとった方が早く治ると思われていた。しかし、最近の研究で、風邪を引いて食欲がなくなった状態は、脳が指令を出して、あえて食欲を抑えていることがわかった。まず、風邪を引くと、脳は胃や腸などの臓器に「ウィルスを退治する免疫細胞を増やしてくれ」と指令を出す。すると、胃や腸などの臓器は、それまで行っていた活動をやめて、免疫細胞を増やすことを最優先にする。こうして風邪は治っていくが、風邪を引いた時に食事をとってしまうと、胃や腸は消化活動を行わなければならなくなり、免疫細胞を増やすことができない。その結果、風邪の治りが悪くなる。そのため、風邪を早く治すためにも、消化活動を抑えることが重要。数日間何も食べなくても、ウィルスが死滅すれば自然と体力が回復し、食欲も戻る。
〇「風邪」を引いた時は何も食べなくていいのか?
「発熱」や「下痢」の症状がある場合は、脱水症状を伴うことも多いので、水分の補給は重要。


〇「傷」に関する昔と今の健康常識の差
怪我をした時、昔は「傷口には消毒液をかける」と言われていたが、今の健康常識では「傷口に消毒液をかけるのは良くない」と変化。
消毒液を使用すると傷口の細菌は死滅するが、傷を治す細胞も死滅してしまい、傷の治りが遅くなると考えられている。
〇「傷」ができてしまった時はどうすればいい?
「傷」は大量の水でキレイに洗うことが重要。その後、「傷」は湿らせたまま、「湿潤絆創膏」を貼るのが良い。ただし、「傷」が深い場合には水だけでは十分な洗浄ができないことがあるので、その場合には消毒液を使って除菌に努めることが大切。


〇「耳」に関する昔と今の健康常識の差
「耳」に水が入った場合、昔は「水を抜かないと中耳炎になる」と言われていたが、今の健康常識では「耳に水が入っても中耳炎にはならない」と変化。
昔は、「中耳炎」は耳に水が入ることで雑菌も耳に入り込んで繁殖してしまい発症すると考えられていた。しかし、中耳と呼ばれる部分は鼓膜より内側にあるため、そもそも水は中耳に入ってくることはない。そのため、「耳」に水が入っても中耳炎になることはない。
〇「中耳炎」はどのように発症する?
「中耳炎」は鼻やノドから入った菌が耳の奥の中耳に内側から入り発症する。


〇「食事」に関する昔と今の健康常識の差
「食事」に関する健康常識で、今では間違いとされているのは、「食べてすぐに運動をしない」、「野菜から食べた方が健康的」、「疲れた時は甘いモノを食べると良い」のどれ?大事なポイントは「血糖値」。
〇「食べてすぐに運動をしない」は間違っている
「食べてすぐに運動をしない」は間違い。横っ腹が痛くならない程度のあまり激しくない運動が良い。昔は血液を胃や腸に集めることで消化が良くなると考えられていたため、運動はしない方が良いと言われていた。しかし最近の医学の研究では、運動することで筋肉の血液量を増やし、胃や腸の血液を減らすことで、胃や腸の動きを緩やかにし、糖の吸収が穏やかになり、食後の「血糖値」の急上昇を抑えることがえきると考えられている。また、運動することで筋肉では糖を消費するので、さらに血糖値の上昇を抑えることができる。
運動するタイミングは「食後すぐ」がベスト、食後20分以内が好ましい。食後の運動でオススメなのは、スクワット20回。食後20分以内に行うと良い。人間は下半身に筋肉の7割があるため、上半身を使う運動より下半身を使う運動の方が効率的に血糖値を下げることができる。外食などでスクワットができない場合は、10分程度のウォーキングでも良い。普段より遠回りして歩くだけでも良い。
〇「食事は野菜から食べた方が健康的」は合っている
「食事は野菜から食べた方が健康的」は今も健康常識。野菜から食べると食物繊維が糖の吸収を緩やかにしてくれる。ただし、野菜なら何でも良い訳ではない。ニンジン、ゴボウ、レンコンなどの根菜類は食物繊維が多いが、糖質もが多いため、これらを最初に食べると血糖値が急上昇する可能性がある。最初に食べると良いのは「大豆製品」。「大豆製品」は食物繊維がゴボウの3倍入っていて当分は少なく、良質な「タンパク質」を得られるので、1品目に食べる食品としては最適。
〇「疲れた時は甘いモノを食べると良い」は間違っている
「疲れた時は甘いモノを食べると良い」は間違い。今では、疲れた時は甘いモノを食べるとかえって疲れると考えられている。確かに疲れた時に脳は糖を欲求し、糖をとると一時的に脳は満足して少し疲れをとることができるが、体はもっと疲れてしまう。甘いモノをとると「血糖値」が上がるが、その後必ず血糖値は下がる。この血糖値を下げる時に体はとてもエネルギーを必要とする。そのため、体は甘いモノを食べる前よりもさらに疲れた状態になってしまう。疲れた時は水で充分。体の疲れは血流が悪くなるため感じるので、水分をとって血流を良くするだけでも充分疲れはとれる。どうしても甘いモノを食べたい時は、食後に歩く等してその分消費すると良い。


〇「歯」に関する昔と今の健康常識の差
「歯」に関する健康常識で、今では間違いとされているのは、「食べたらすぐに歯磨き」、「歯磨きをした後はしっかりゆすぐ」、「歯ブラシをしっかり濡らす」のどれ
〇「食べたらすぐに歯磨き」は間違っている
今の常識では、食後すぐに歯磨きをするのは良くないとされている。食べてすぐの口の中は酸性状態になっていて、虫歯が細かくできる。しかし、しばらくすると唾液が酸性状態を中和してそれ以上虫歯になるのを防ぎ、さらに唾液に含まれるカルシウムなどが細かくできた穴を埋める働きをする。そのため、食後すぐに歯磨きをしてしまうと、唾液が虫歯を修復する働きを妨害してしまう。酸性状態が中和されて元の状態に戻る食後30分以上経ってから歯磨きをするのが良い。
〇「歯磨きをした後は口をしっかりゆすぐ」は間違っている
今の常識では、口をゆすぎ過ぎるのは良くないとされている。歯磨き剤には歯をコーティングして虫歯から歯を守る「フッ素」が含まれているが、口をゆすぎ過ぎると「フッ素」を洗い流してしまう。そのため、口は1回ゆすぐだけで充分。味が残ったくらいの方が良い。
〇「歯磨きをする時は歯ブラシをしっかり濡らす」は間違っている
歯ブラシを濡らして歯磨きをすると泡がいっぱいたつが、泡立ちが良すぎると少し磨いただけで磨いたつもりになってしまい、汚れが残ってしまう。
同じ人に全く同じ食事をしてもらい、歯ブラシを濡らした場合と歯ブラシを濡らさない場合で、「充分磨けた」と感じるまで歯を磨いてもらった。すると、歯ブラシを濡らした場合は57秒で歯磨き終了、一方歯ブラシを濡らさない場合は2分46秒で終了とおよそ3倍もの時間がかかった。汚れを赤く染める液体で磨き残しをチェックすると、汚れの落ち方に大きな差があった。

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