この差って何ですか?

毎週火曜よる7時

過去の放送内容

2018年7月3日

(1)「色の濃い ごま油」と「色の薄い ごま油」の差

(写真)

専門家:角田龍一(竹本油脂)、堀佐知子(創作フレンチ「ル・リール」 オーナーシェフ) 、青柳憲明(海風堂 オーナーパティシエ)


この差は…
煎ったごまを使うか どうか
ニオイがするか どうか
材料となる「ごまの色」は関係ない。色の薄い「ごま油」は無味無臭。

〇「ごま油」の原料はどこから?
日本のごま油メーカーは、アフリカを中心に世界約25か国からごまを輸入して製造している。日本で1年間に生産されるごまは約200トン。1ヶ所のごま油工場で使うごまの量は1日だけで約200トン!よって、国産のごまでは1日分にしかならず、全く足りないため輸入したごまを使っている。

〇原料には差がない
材料となるごまを見ると「白ごま」や「黒ごま」など、さまざまな色が混ざっている。しかし、「ごまの色」は、「ごま油の色」の濃い薄いには全く関係がない。

〇どこで色の濃さに差がつく?
まず、ごまをふるいにかけてゴミなどを取り除く「選別」という工程を行う。その後、「色の濃いごま油」と「色の薄いごま油」で製造ラインが分かれる。この「選別」の次の工程のみ違い、後は「絞る」→「ろ過」→「瓶詰」と色に関係なく工程は同じ。
「ごま油の色」の濃さに差が付く工程は、「焙煎」。高温の熱風を使って20〜30分間ごまを煎る「焙煎」という工程を行うことで色のついたごまができる。この色のついたごまを使ったのが、「色の濃いごま油」となる。

〇「焙煎」することで生まれるもうひとつの差は「ニオイ」。
ごまを「焙煎」することによって色だけでなはなく、「ニオイ」にも差ができる。「焙煎」したごまを使う「色の濃いごま油」はニオイがするが、「焙煎」していない「色の薄いごま油」はニオイがしなく、味もしない。
つまり、「色の濃いごま油」は、「サラダ」や「炒め物」の香り付けに適している。また、「色の薄いごま油」は、「焼き魚」や「ホットケーキ」に適している。

〇プロが伝授!「色の薄いごま油」を使った料理(1) 「サバの香草焼き」
東京・千駄ヶ谷にある、創作フレンチ「ル・リール」では、「サバの香草焼き」に「色の薄いごま油」を使用している。

作り方は…
(1)サバに強めに塩を振り、臭みをとる。
(2)「色の薄いごま油」をハケで魚全体をコーティングするように塗る。
(3)250℃のオーブンで15分焼いたら完成。

「色の薄いごま油」でコーティングして焼くことによって、魚の水分が外に出なくなり、旨味も逃げないので非常にふっくらと仕上がる。「色の薄いごま油」は無味無臭なので、魚の味を壊さないのがポイント!「色の薄いごま油」を塗った場合と塗らない場合では、魚の柔らかさ、ふっくら感が全然違う。

〇プロが伝授!「色の薄いごま油」を使った料理(2) 「シフォンケーキ」
千葉・市川市にある、ケーキショップ「海風堂」では、「シフォンケーキ」に「色の薄いごま油」を使っている。

作り方は…
(1)卵黄・小麦粉・上白糖・ベーキングパウダー・水が入ったボウルに「色の薄いごま油」を入れて、混ぜる。
(2)卵白を泡立てたメレンゲを混ぜる。
(3)160℃のオーブンで約40分焼いたら完成。

ケーキにはしっとりさせるため、油脂を入れる。普通のケーキには、溶かしたバターなどを入れるが、バターは時間が経つと硬くなる油なので生地が硬くなってしまう。「ごま油」を使うと時間が経っても生地が硬くならずにふっくらし、しっとりする。軽さの違いを感じることができる。また、「色の薄いごま油」は味がしないので、ケーキの味を損ねることがない。

(2)「値段が安い緑茶」と「値段の高い玉露」の差

(写真)

専門家:石原克則(佐藤製茶 製茶部)

この差は…
茶葉を摘む前に日光を遮るか どうか
「玉露」は日除けをしているので甘く、「緑茶」は直射日光に当たっているので渋い。

〇「緑茶」も「玉露」も、同じ木からつくられている
「緑茶」と「玉露」は、どちらも「カメリアシネンシス」というお茶の樹の葉っぱからつくられている。「品種」の違いではない。

〇なぜ差が生まれる?
「緑茶」と「玉露」は栽培方法に差をつけることで、値段と味に大きな差が生まれる。
「玉露」は葉っぱを摘み取る20日前から、畑全体を黒い幕で覆っている。「玉露」は茶葉に直射日光が当たらないように「すだれ」や「ムシロ」で日除けして栽培したもの。

〇なぜわざわざ日除けして栽培する?
お茶の葉っぱには、「テアニン」という旨味成分が豊富に含まれており、「テアニン」が多い程お茶が甘くなるが、「テアニン」は日光に当たれば当たるほど渋み成分である「カテキン」に変化してしまう。
そのため、直射日光に当たって「カテキン」の多い「緑茶」は渋く、日除けをして「テアニン」が多い「玉露」は甘い。「玉露」は日光を遮る手間がかかるため、値段が高くなる。

(3)「お茶の種類による健康効果」の差

(写真)

専門家:山本万里(日本茶インストラクター 農研機構)

この差は…
・脳梗塞の予防には、「緑茶」
・がん予防には、「食後に緑茶」
・風邪予防には、「紅茶」
・寝つきが良くなるのは、「水でいれた緑茶」が効果的
「緑茶」の「茶がら」には、「カテキン」や「ビタミンA」、「ビタミンE」が豊富に含まれていて、食べると健康に良い。

〇お茶の樹からつくられているお茶はどれ?
「緑茶」、「ウーロン茶」、「紅茶」、「ほうじ茶」、「玄米茶」、「ジャスミン茶」、「プーアール茶」、すべて「カメリアシネンシス」というお茶の樹からつくられている。原料はすべて同じ!

〇なぜ味が違う?
味の違いは、「発酵時間」と「加工」の違いから生まれる。

まず「発酵時間」の違いで変化する種類、「緑茶」、「ウーロン茶」、「紅茶」。
「茶葉」は、摘むと「発酵」が始まる。「緑茶」は全く「発酵」させない。摘みとったらすぐに蒸したりして酵素を殺して、「発酵」をさせないようにするため「綺麗な緑色」になる。
「ウーロン茶」は12時間「発酵」させる。そのため、茶葉が「少し黒っぽい色」になる。
「紅茶」は13〜18時間「発酵」させる。そのため「赤っぽい色」になる。
「発酵」させるほどお茶本来の「渋み」が「甘み」に変化していくので、「緑茶」が一番渋く、「紅茶」が一番甘くなる。

次に、「ほうじ茶」、「玄米茶」、「ジャスミン茶」、「プーアール茶」。これらの原料は、実はすべて「緑茶」。どのように「加工」するかによって、味が変わってくる。
「ほうじ茶」は、「緑茶」を「ほうじ機」という機械に入れて約200℃で炒るため、非常に芳ばしい味わいになる。
「玄米茶」は、「緑茶」の中に炒った「玄米」を入れているので、「玄米」の芳ばしい香りがする。
「ジャスミン茶」は、「緑茶」の上に「ジャスミンの花」を敷き詰めて、さらに「緑茶」、「ジャスミンの花」と重ねて数時間置き、香り付けしたもの。桜など他の花でも香り付けすることができ、みかんの花などはとても良い香りになる。
「プーアール茶」は、「こうじ菌」や「乳酸菌」などで1〜2ヶ月じっくり「緑茶」を発酵させ、さらに風味を強くするため1〜3年間寝かせて熟成させてできる。

〇脳梗塞をより予防するのは、「緑茶」、「紅茶」どっち?!
お茶には、「脳梗塞」の原因である「悪玉コレステロール」を抑制する「エピガロカテキンガレート」という成分が含まれているが、お茶の種類によって「エピガロカテキンガレート」の含まれる量が異なる。
「エピガロカテキンガレート」が最も多く含まれるのは、「緑茶」。「緑茶」は7%も含まれている。「紅茶」は2.7%しか含まれておらず、その差は約2.5倍になる。「緑茶」は茶葉を発酵させないので、「エピガロカテキンガレート」が多く、「紅茶」は発酵させるので、酵素が働き「エピガロカテキンガレート」が少なくなってしまう。

〇「カテキン」には、さまざまな効果が!
「カテキン」には、さまざまな健康効果があり、「抗酸化作用」「アレルギー予防」「高血圧予防」「肥満予防」「消臭効果」「がん予防」「認知症予防」「血糖値上昇の抑制」「整腸作用」などが期待できる。
国立がん研究センターの調査によると、毎日5杯以上緑茶を飲む女性は、「胃がん」になる確率が約21%以上低下。また、毎日5杯以上緑茶を飲む男性では、「前立腺がん」になる確率が約11%低下。これは、「カテキン」が、「がん細胞」の表面の膜につき、「死になさい」というシグナルを送り、「がん細胞」が自滅していくと言われている。「カテキン」は、腸から入って体中に回って、その局所に行って「がん細胞」を死滅させる働きをする。
厚生労働省の発表した「がん死亡率の少ない市区町村」をみると、男女とも上位5位に「緑茶」生産量第一位の静岡県の市区町村が複数入っている。毎日「緑茶」を飲むことが、「がん死亡率の低さ」に繋がっていると考えられている。

〇がん予防により効果的な「緑茶」を飲むタイミングは、「食前」「食後」どっち?!
「がん予防」には、「食後」に緑茶を飲むと効果的。「がんの原因」のひとつとされているのが「活性酸素」。体に必要なものだが、過剰にできると「がん」を促進したり、細胞にダメージを与えてしまう。「カテキン」は、過剰にできてしまった「活性酸素」をやっつけてくれる働きがある。食事をすると消化・吸収によって「活性酸素」が大量に発生するが、食後に「カテキン」を体に入れることで、「活性酸素」をまとめて撃退してくれるため、「食後」に飲むのがいい。

「緑茶」を飲む量は、1日に湯のみ5杯程度が良い。「カテキン」は体内に入っても2〜3時間で消滅してしまう。また、食後の「緑茶」は、少しずつ飲むよりも“一度に飲み干す方”が、血中の「カテキン」濃度が高くなるため効果的。(※熱いお茶の場合はやけどをしないようにご注意ください。ペットボトルを一気に飲むなど無理な飲み方はしないでください。)

〇効果的な「カテキン」摂取法とは?
「茶がら」を食べること。「緑茶」を急須で入れると、「カテキン」はお茶に40%出るが、「茶がら」に60%残ることになる。また、「茶がら」には水に溶けない「ビタミンA」や「ビタミンE」が豊富に含まれているため「茶がら」を食べるのはとても健康に良い。
「茶がら」はそのままだと少し渋いので、お浸しのようにして食べると良い。「茶がら」急須1杯分に「しょうゆ」・「かつおダシ」を大さじ1杯けけ、「かつお節」をのせれば完成。ご飯にのせて食べるのもオススメ。1日6g程度食べると、ビタミン類も豊富に摂取できて良い。

〇かぜのウィルスを撃退できるのは、「緑茶」、「紅茶」どっち?!
「かぜ予防」には、「紅茶」が効果的。「紅茶」には「テアフラビン」というかぜのウィルスを撃退する働きのある物質が含まれている。「紅茶」の赤い色の本体が「テアフラビン」で、非常に強い「抗菌力」「抗ウィルス力」を持っている。

「緑茶」は、緑色で「テアフラビン」は入っていない。「緑茶」でうがいをするのは「カテキン」の効果を得るため。「テアフラビン」は、「カテキン」よりも強い効果がある。「紅茶」は発酵の過程で「カテキン」が「テアフラビン」に変化する。

「テアフラビン」は「インフルエンザウィルス」にも効果があると言われている。バイオメディカル研究所の調査では、約100万個の「インフルエンザウィルス」に「紅茶のエキス」を入れると99.9%死滅するというデータが得られた。「紅茶」に「お塩」を少し入れて、うがいをすると、「インフルエンザ」予防にとても効果がある。

〇飲むと寝つきが良くなるのは、「熱湯でいれた緑茶」、「水でいれた緑茶」どっち?!
「水でいれた緑茶」が、寝つきを良くするのに効果的。水でいれると「テアニン」という「リラックス成分」が出る。「緑茶」には、眠気を覚ます「カフェイン」が入っているが、「カフェイン」と「テアニン」が両方あると、「テアニン」によって「カフェイン」の効果が打ち消されるので、「水でいれた緑茶」はほとんど「カフェイン」の効果がなく、リラックス効果が得られる。
ちなみに、「テアニン」の「テア」は「ティー(お茶)」のことで、お茶以外に「テアニン」の入っている食品はない。

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