この差って何ですか?

毎週火曜よる7時

過去の放送内容

2018年5月22日

(1)「お寿司のネギトロはネギがのっている」と「パックのネギトロにはネギがのっていない」の差

(写真)

専門家:青木智宏(まぐろ商店 店長)

この差は…
生臭さを消すためにネギをのせたか どうか
「ネギトロ」とは、マグロをミンチ状にしたもの。「ネギ」は全く関係ない

〇ネギとマグロで「ネギトロ」ではない?!
「ネギトロ」とは、マグロをミンチ状にしたモノのこと。ネギは全く関係ない。

〇なぜミンチ状にしたマグロのことを「ネギトロ」と言う?
マグロのお腹の部分は、「大トロ」、「中トロ」、「赤身」に分かれる。骨についた身は「中落ち」という。身から皮を剥がし、身を取り除いた皮に残った部分が「ネギトロ」になる。皮からスプーンで、身をそぎ取って「ネギトロ」を作るが、この「そぎ取る行為」を「ねぎ取る」と言い、「ネギトロ」の由来になっている。
江戸時代の建築用語で「土を掘る」ことを「根切り」と言っていた。「身をそぎ取る」様子が「土を掘る」ように見えたことから、この言葉がお寿司屋さんでも使われるようになり、「根切って取る」→「ねぎとる」→「ネギトロ」となっていった。

〇「中落ち」と「ネギトロ」の差
骨についた「中落ち」を「ネギトロ」として扱うこともあるが、「大トロ」と「中トロ」に面した脂ののった皮目の身を使う本来の「ネギトロ」とは、味がまったく違う。「中落ち」は、脂が少なくあっさりしている。

〇なぜネギをのせる?
マグロの身はミンチ状にすると空気に触れる部分がとても多くなり、生臭さが増す。その生臭さを消すために、ネギをのせたのが始まり。

(2)「ヤブ医者」とは言うが「ヤブ先生」とは言わない の差

(写真)

専門家:小野正弘(明治大学 文学部 教授)、藤原弘幸(養父市役所 社会教育課)

この差は…
実在の医者のモデルがいたか どうか
元々「ヤブ医者」とは、養父(やぶ)という村にいた名医のこと。

〇ヤブ医者の語源は地名?!
ヤブ医者の語源は「地名」からきていると言われている。
兵庫県に養父(やぶ)市という場所があり、その養父市に、ヤブ医者のモデルがいたとされている。江戸時代にいた、長島 的庵(ながしま てきあん)というお医者さんが 「ヤブ医者」のモデル。長島 的庵は名医で、もともと「ヤブ医者」という言葉は、下手な医者ではなく名医を指す言葉だった。

〇なぜ「ヤブ医者」は「腕の悪い医者」を指す言葉になったのか?
江戸時代中期、但馬国養父(現在の兵庫県養父市)で医者をしていた長島 的庵は、他の医者がさじを投げた病人も治してしまうほどの名医として名を馳せていた。その評判が江戸にも伝わり、遂には五代将軍徳川綱吉の耳にも入り、村医者から将軍家の専門医にまで大出世した。そして人々の間で、「養父の医者・的庵」のことを「養父医者」と呼ぶようになり、「名医」を指す言葉として使われていた。
しかし、「長島 的庵」の名が広まれば広まるほど、お金を稼ぐために「自分は養父医者の弟子である」とウソをつく口先だけの医者が続出。その結果、「養父医者ブランド」の評判が急落し、現在の意味合いである「養父医者」=「腕の悪い医者」となってしまった。

(3)「昔の健康常識」と「今の健康常識」の差

(写真)

専門家:白澤卓二(お茶の水健康長寿クリニック 院長)、梶本修身(東京疲労・睡眠クリニック 院長)、木村百合香(荏原病院 耳鼻咽喉科 医長)、市岡滋(埼玉医科大学 形成外科 教授)、深作秀春(深作眼科 院長)、大谷義夫(池袋大谷クリニック 院長)

この差は…
〇新常識では間違い!
「1日30品目食べるのが良い」
「早朝の運動は体に良い」
「耳かきはこまめにした方が良い」
「すり傷は乾燥させた方が良い」
「遠くを見ると目が良くなる」
「暗い所で本を読むと目が悪くなる」
「風邪を引いたら安静にする」
「一度花粉症になったら治らない」
「過呼吸になったら ビニール袋を使う!」


〇新常識でも正しい!!
「紫外線は目に悪い」

今の健康常識では、「食品の数は関係ない」、「早朝の運動はしてはいけない」、「耳かきは月に1回でいい」、「遠くを見ても目は良くならない」、「暗い所で本を読むと目が悪くなるわけではない」、「風邪を引いたら軽く運動をする」、「花粉症は治せる」、「過呼吸になったら口すぼめ呼吸」が正しい。

〇実は間違い?!「昔の健康常識」
「卵は1日1個まで」は間違い!「今の健康常識」では、「卵は1日5個食べてもOK」。昔は、卵を1日2個以上食べると、血中のコレステロール値が上昇すると言われていた。しかし、コレステロール値は食べたものの影響を受けないことが分かってきた。
「インフルエンザの予防にうがい」は間違い!「今の健康常識」では、インフルエンザの予防にうがいは無意味と変化。インフルエンザウィルスは喉についたら、わずか数分で体内に侵入してしまうことが判明したため。
かつては常識とされてきた医療や健康法の中には、研究が進んだことで大きく変化したことがたくさんある。

〇昔は「1日に30品目食べるのが良い」、今は「食品の数は関係ない」
そもそも この「1日30品目」が広まったのは、1985年に厚生労働省が「健康づくりのための食生活指針」に、このことを記載したことがきっかけ。「食品に含まれる栄養素は食品ごとにそれぞれ異なっていて、異なる食品から幅広く栄養を摂るべき」だと当時は考えていた。
しかし現在では、実際に30品目を使った料理を毎日食べていると、かなりの確率でカロリーが過剰になって、肥満や生活習慣病に繋がる可能性があることがわかってきた。
「肉」や「魚」「野菜」「果物」などをバランス良く1日に15品目ぐらい摂ると、「たんぱく質」や「食物繊維」など必要な栄養素を摂ることができる。とはいえ、カロリーは量に比例するので、食べすぎには注意が必要!

〇昔は「早朝の運動は体に良い」、今は「早朝の運動はしてはいけない」
昔は、朝起きてすぐに運動をすることによって血液の循環が良くなり、脳が覚醒すると考えられていた。
しかし、実は心臓をコントロールしているのは、脳の中にある自律神経。脳が覚醒していない早朝に激しい運動をしてしまうと、心臓自体が暴走してしまう可能性が高くなる。その結果、心筋梗塞など突然死のリスクが上がってしまう。
「今の健康常識」では、起きたらまず脳を目覚めさせるために、ゆっくりと朝食を摂り、最低でも食後1時間以上時間を空けてから運動をするのが良い。

〇昔は「耳かきはこまめにしたほうが良い」、今は「耳かきは月に1回でいい」
昔は、耳垢が溜まっていると、かゆみがでたり、不潔なので、「耳かきはこまめにした方が良い」と言われていた。
しかし、今の健康常識では、耳垢には殺菌作用や抗菌作用があり、表皮を保護する役目もあるため、取る必要はないと言われている。耳垢には、放っておいても自然に剥がれて排出される能力があるので、耳かきは必要ない。耳の中の皮膚は、鼓膜から外にベルトコンベアのようにゆっくり動いているので、耳垢は自然に外に押し出される。
気になる方は、1ヵ月に1回程度、耳かきをやるのも良い。「耳かきの方法」は、綿棒を水で濡らし、耳の穴の入り口から1cmほど内側を優しく擦るだけで良い。

〇昔は「すり傷は乾燥させた方が良い」、今は「すり傷は湿らせた方が良い」
昔は、傷口を治すために、乾燥させて早くカサブタを作った方が良いと考えられていた。
しかし、最近の研究では、カサブタを作らない方が傷は早くキレイに治ることが分かっている。「すり傷」ができると「傷口」から ジュクジュクとした「透明な体液」が分泌される。実は、その体液が「傷口」を修復してくれるのだが、「カサブタ」ができてしまうと、この体液が傷口全体に広がらなくなってしまう。「傷口」に絆創膏を貼って、湿ったままにしておくと「カサブタ」ができず、体液が傷口全体に広がるので傷が早く、キレイに治ることが分かった。
傷口を乾燥させないタイプの絆創膏は、以前は病院でしか扱えないように規制されていたが、今では、ドラッグストアで買えるようになった。

〇「遠くを見ると目が良くなる」は間違い!
遠くを見ても、目そのものが良くなるということはない。
近くばかりを見ている方、よく本を読む方、スマホばかり見る方は、目の中の「毛様態」と言う筋肉に力を入れて、収縮して、常に緊張した状態のため疲れてしまう。しかし、遠くを見ると、収縮していた筋肉が伸びることで緊張がほぐれて楽になるので、視力が良くなったと思う。ただそれは、疲れていたのが少し楽になるというだけであって、目が良くなるわけではない。例えば近視が治る、遠視が治る、老眼が治るということはありえない。遠くを見ることは決して悪いことではないが、目そのものが良くなる訳ではない。
「緑を見ると視力が良くなる」も間違い!緑の波長は網膜にとってとても心地良いため、気持ち良い、リラックスするというような効果はある。しかし、それによって目が良くなる訳ではない。

〇「暗い所で本を読むと目が悪くなる」は間違い!
暗い所は見えにくいが、それで視力が悪くなるわけではない。暗い所では、光をたくさん取り入れようとして、目は瞳孔、瞳が大きく開くため、近くが見えにくくなる。そして、見えづらくなった「近く」を一生懸命見ようとして、目の筋肉が収縮し、緊張してしまう。そうすると疲れるので、暗いせいで目が悪くなったと誤解される。目が悪くなるのではなく、目が疲れている状態。

〇「紫外線は目に悪い」は正しい!
紫外線そのものは目にとって良くない。
「紫外線」は「白内障」などの様々な「目の病気を引き起こす原因」と言われているので、できるだけ浴びるのは避けた方が良い。

〇「風邪を引いたら安静にする」は間違い!
風邪自体はウイルス性のもの。ウイルスが体に入ると、ウイルスを撃退するために体の中の免疫の細胞が戦う。以前は、安静にした方が免疫の細胞が活性化すると考えられていた。
しかし、最近の研究では、軽い運動をして血流を良くすることで「免疫細胞」が増加し、活性化することが分かった。そのため、風邪の初期、または軽い風邪の時には運動するのは良い。20分程度のウォーキングなど、軽く汗をかくぐらい、体がポカポカするぐらいの運動量がオススメ。ただし、38度以上の高熱の場合、運動をすると逆効果になるので注意が必要!

〇「一度花粉症になったら治らない」は間違い!
昔からよく言われていたのが「バケツ理論」。毎年、花粉の「アレルギー物質」が少しずつ体内に蓄積されて、許容量を超えると「花粉症」になる、という考え方。
しかし現在の常識は、「天秤理論」。その年の花粉の量と、ストレスなどの抵抗力の量、それがバランスをとっているという考え方。年によって、花粉が多くて、ストレスが多くて調子が悪い時には花粉症が出やすいが、「その時、その場所に舞う花粉の量」が「自分の抵抗力」を下回った時には花粉症の症状が現れない。
花粉症を治す方法は、「舌下免疫療法」。これは、アレルギーの原因となる物質を舌の裏に毎日投与することで、体をアレルギー物質に少しずつ慣れさせ、症状を改善する治療法。現在、「スギ花粉症」と「ダニ アレルギー性鼻炎」の2種類の治療に活用されている。スギに関しては8割〜9割の方の症状が楽になり、2割の方は薬が要らないくらい改善する。ただし、効果が出るのに数か月かかるため、来年の春を目指して6月頃から開始すると良い。現在、ワクチンを開発中で、10年後には花粉症は無くなるのではないかと言われている。

〇「過呼吸になったらビニール袋を使う」は間違い!
そもそも「過呼吸」とは、強い緊張やストレスなどによって発症する。酸素をとり過ぎて、二酸化炭素が減少することで、「手足のしびれ」「めまい」などの症状が現れる。
以前は「紙袋」「ビニール袋」で呼吸して、息を吐いて二酸化炭素を吸い込むことによって酸素の量を減らして、と考えられていた。しかし、袋で呼吸を塞ぐことで、二酸化炭素を吸いすぎ、逆に酸素が足りなくなってしまう場合があることが分かった。
今の常識は、「口すぼめ呼吸」。通常、呼吸するときに「息を吸う」対「吐く」が1対2だが、過呼吸発作の時には「息を吸う」対「吐く」が1対1になる。そのため、ゆっくり吐いて、呼吸回数を減らせばいい。「口すぼめ呼吸」の方法は、鼻から2秒で空気を吸って、口から8秒かけて吐き出す。これだけで、血液中の酸素濃度は下がってくれるので、症状が和らぐ。

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