この差って何ですか?

毎週火曜よる7時

過去の放送内容

2018年5月8日

(1)「お線香」と「お焼香」の差

(写真)

専門家:石田一裕(光明寺 副住職)

この差は…
手間がかからず値段が安いか どうか
「仏壇に手を合わせる時」や「お墓参り」では手間がかからず値段の安い「お線香」、「お葬式」は昔からの正式な儀式のため「お焼香」をあげる。

〇元々、仏事では全て「お焼香」が使われていた!
「お線香」も「お焼香」も、仏様や亡くなった方を拝む時に、自分の身やその場を清める為に使うもの。
飛鳥時代、仏教伝来と共に中国から「お焼香」が日本に伝わったが、元々「お経をあげる時」や「仏壇やお墓に手を合わせる時」など、仏事では全て「お焼香」が使われていた。

〇「お線香」が生まれたのはいつ?
「お焼香」が日本に伝わってから1000年以上後の安土桃山時代に「お線香」は誕生したと言われている。
実は「お線香」と「お焼香」は形は違うが、原料は同じモノ。「お線香」は「お焼香」をパウダー状にしてつなぎを混ぜて固めたモノ。

〇なぜ「お焼香」に代わって「お線香」が使われるようになったのか?
安土桃山時代まで全ての仏事において「お焼香」が使われていたが、「お焼香」はすぐに燃えてなくなってしまうため、長いお経の間ずっと燃やし続けるのはとても大変だった。

そんな中、困っている僧侶の悩みを聞いた薬商人が漢方の仕入れのために訪れた朝鮮半島で、「竹芯香」という「白檀(びゃくだん)」や「沈香(じんこう)」などの「香木」の粉末に「つなぎ」として「タブノキ」をまぜて竹の棒に塗りつけたモノをみつける。これは、1度火をつけると長い時間燃え続けるので、昔からアジアの国々の寺院で使われていた。

「竹芯香」を日本に持ち帰った薬商人は早速僧侶にすすめたが、火を付けると竹の焦げたニオイがするため室内で使うには向いていなかった。そこで、薬商人は竹には塗らずに粉末を固めて棒にすることを思いついた。こうして「香木」を固めて練り出し、棒状にした「お線香」が誕生した。

さらに、「お線香」は「つなぎ」となる安い「タブノキ」を半分混ぜていたので、「お焼香」に比べて大幅に安く作ることができた。長い間燃え続けて、値段の安い「お線香」は江戸時代になると一気に庶民に広がり、日常的に行われる仏事には「お線香」が使われるようになった。

〇なぜ「お通夜」や「お葬式」では「お焼香」が使われる?
直接亡くなった方に拝む「お通夜」や「お葬式」では、便利さや経済性を追求した「お線香」ではなく、「お焼香」をあげて供養するというのが本来の形。そのため、「お葬式」では、現在でも「お焼香」をあげる作法が残っている。

(2)「僧侶」「和尚」「住職」「お坊さん」の差

(写真)

専門家:井上広法(光琳寺 副住職)

この差は…
どのような立場の人か どうか
「僧侶」は出家して仏壇に入った全ての人、「和尚」は修行を積んで一人前になった人、「住職」はお寺を代表するただ1人の人、「お坊さん」は元々僧侶が生活する“坊”を管理する人のこと。

〇立場で呼び分けた方が良い
お寺では様々な立場の人がいる。本来は、立場によって呼び方を分けると良い。

〇「僧侶」の語源は「古代インド」の言葉
「僧侶」とは仏道修行をする集団を指す「古代インド」の言葉、「ソウギャ」が語源。つまり「僧侶」は 出家して仏門に入った全ての人を指す言葉。

〇「法士」と「和尚」の違いは?
「法子(ほっし)」とは、仏門に入ったばかりの「僧侶」を指す言葉。仏門に入ってすぐの名前は「○○法士」という。最低2年以上の勉強と修行を経て「○○かしょう」という名前に変わる。この「かしょう」を漢字で書くと「和尚」となり、これを「おしょう」と呼ぶ。

つまり、 「和尚(おしょう)」とは、僧侶の中でも修行を積んで一人前になった僧侶のこと。「曹洞宗」「臨済宗」などは「おしょう」、「浄土宗」「天台宗」などでは「かしょう」、「真言宗」などでは「わじょう」と呼ぶ。

〇1番偉いのは「住職」
「住職」とは、それぞれのお寺を代表する僧侶のこと。小さいお寺でも大きいお寺でも、基本的に1つのお寺に「住職」は1人しかいない。

〇「お坊さん」とは?
昔、お寺にあった「僧侶」たちが暮らす建物の事を「坊」と呼んでいた。現在は「宿坊」と言って一般の方が泊まったりするが、かつてはここで「僧侶」が勉強したり寝たりする生活の拠点となっていた。その「坊」で「僧侶」の生活を「寮長」のように管理・指導する人を「坊の主」ということで「坊主」と呼んでいた。つまり「お坊さん」のこと。

現在「坊」を持つお寺はほとんどないので、本来の意味からの「坊の主」、「坊主」つまり「お坊さん」はほとんどいない。しかし、現在も親しみを込めて「僧侶」を呼ぶ時に「お坊さん」という呼び方が広く使われている。

〇実際お寺で働く人のことを何と呼べばいい?
一番間違いない言い方は「和尚さん」。
「住職」でない人もいる。「お坊さん」でもいいが、どちらかというと「和尚さん」と呼んだ方が敬意があっていい。

(3)「正しい箸の作法」と「間違った箸の作法」の差

(写真)

専門家:小倉朋子(日本箸文化協会 代表)

この差は…
箸置きがない時に、「箸を皿の上に置く」
食べる時に、「箸で豆腐をすくって食べる」
汁物を飲む時に、「箸をお椀に添えたまま味噌汁を飲む」
割り箸を使う時に、「割り箸を上下ではなく、左右に割る」
はやってはいけない。

「箸先をお皿にのせる」、「箸で茶碗蒸しを崩して食べる」、「箸をお椀に入れたまま味噌汁を飲む」、「食事を終えたら割り箸を袋に戻す」はやってもいい。

〇やってはいけない作法の数々
箸先(はしさき)を食器で揃えるのは「揃え箸」。箸先や皿を傷つけてしまうのでやってはいけない。両手で揃えるのが正しい作法。
器の中の食べ物を探すのは「探り箸」。キレイに盛り付けた料理を崩すことになるのでやっていはいけない。上から順に取るのが正しい作法。
箸で食器を引き寄せるのは「寄せ箸」。箸は料理をつかむモノで、見た目からしてとても行儀が悪いのでやってはいけない。
このような、やってはイケない箸の作法は「嫌い箸」と呼ばれ、なんと80種類以上もある。

〇箸置きがない時に、やってはいけないのどっち?!
A:「箸を皿の上に置く」
B:「箸先をお皿にのせる」
→Aは「渡し箸」というやってはいけない作法。

「渡し箸」は食事の終わりを意味する。また、三途の川をイメージするという説もある。もともと日本の箸というものは、ただの道具ではなくて神様と人間をつなぐものという意味がある。
「箸先だけお皿に置く」というのは、「渡し箸」にはならない。自分の口をつけたところをテーブルの上にそのまま置くというのも失礼になるため、汚い所は立てかけるのが良い。

〇食べる時に、やってはいけないのどっち?!
A:「箸で豆腐をすくって食べる」
B:「箸で茶碗蒸しを崩して食べる」
→Aは「すくい箸」というやってはいけない作法

箸というものは摘んで丁寧にいただくもの。スプーンのようにすくっていただくのはやってはいけない作法のひとつ。ひとくちサイズに切ってから、挟んでしっかりつまんで頂くのがいい。
茶碗蒸しはそもそも汁物でもあるため、火傷をしないように少しかき混ぜて空気に触れさせて冷ましてから、直接口をつけて飲んで構わない。

〇味噌汁など汁物を飲む時に、やってはいけないのどっち?!
A:「箸をお椀に入れたまま味噌汁を飲む」
B:「箸をお椀に添えたまま味噌汁を飲む」
→Bは「持ち箸」というやってはいけない作法

お箸を持ちながら、同じ手でお椀も持つのはやってはいけない。箸先を他人の顔に向けてしまったり、ポタポタと汁が垂れることもあるため。汁が垂れるのは「涙箸」というやってはいけない作法のひとつ。
「箸先を入れたまま汁物を飲む」のは、箸先が人様に向くことにもなく、具材を押さえることにもなり、ポタポタ垂れることもない。

〇割り箸を使う時に、やってはいけないのどっち?!
A:「割り箸を左右に割る」
B:「割り箸を袋に戻す」
→Aはやってはいけない作法

勢い余って人にぶつかったり、食器やグラスを倒す可能性があるため、やってはいけない。上下にゆっくり割るのが正しい割り方。さらに、目の前で割るよりかは、テーブルの下で膝の上で割ると美しい所作になる。
使い終わった箸先を見せないように袋に戻すのは正解。さらに、使ったか、使っていないか分かるように、箸袋を折るのが理想。折っておくと、「使いました、ごちそうさまでした、おいしかったです」と表現できる。
箸置きがない場合に、箸置き代わりに箸袋を折って使うのも構わない。シンプルに箸袋を結ぶと、使った後に箸先を隠せるので良い。

〇他にもある?!やってはいけない作法
持ち手の方で料理を取るのは「逆さ箸」といって、やってはいけない作法。衛生的に良くないうえ、箸の両側が汚れて汚く見える。
箸を持ったまま「いただきます」をするのは「拝み箸」といって、やってはいけない作法。箸先が隣の人に向いて失礼になるうえ、合掌する時にモノを持つのは良くないためやっていはいけない。

(4)使い分けに悩む日本語

(写真)

専門家:サンキュータツオ(日本語学者 お笑い芸人「米粒写経」)

「反対」と「逆」の差

この差は…
正しい方向が決まっているか どうか
正しい方向はなく対立していると「反対」、正しい方向があり逆らって入れば「逆」

〇「反対」と「逆」の違いとは?
「反対」というのは、「2つのモノが、対立している状態」のことを言う。「反対」という言葉がつく言葉は、「反対意見」、「反対運動」、「反対語」など。AというものとBというものが、対立していたり、対になったりしている。これが「反対」。

一方、「逆」は「本来の順序や方向に逆らっている状態」のことを言う。「逆」という漢字が使われている言葉は、「逆流」、「逆走」、「逆風」、「逆立ち」など。「車線は反対」だが、本来行ってはけない方向に進むのが「逆走」。「正しく進むべき方向に逆らっている状態」を表す。

〇「反対」と「逆」、どう使い分ける?
いつもと立ち位置が違う場合は…「逆」。コンビでは立ち位置が決まっている。あくまで二人にとって正しい位置が違うという意味で「逆」。
二人の男性の好みが違う場合は…「反対」。正しい「好み」はない。
服の着方を間違えた場合…「逆」。服を着る向きは、正しく決まっている。
一人は上の階へ、もう一人は下の階へ、「行き先」が違う場合は…「反対」。二人の行き先は、上下という関係で正しい方向はなく、対立している。
「自宅の方向」を間違えた場合は…「逆」。自宅の方向は、正しい方向が決まっている。

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