この差って何ですか?

毎週火曜よる7時

過去の放送内容

2018年4月10日

(1)「がつがつ」「もぐもぐ」「もりもり」の差

(写真)

専門家:神永曉(日本国語大辞典 元編集長)

この差は…
食べる勢いで使い分けている。
食べる勢いが強い順に、「がつがつ」>「もりもり」>「もぐもぐ」となる

〇どのような食べ方を「がつがつ」というのか?
食べる勢いが最も強い「がつがつ」。目の前にあるたくさんの食べ物を手あたり次第に勢いよく口へ運んだり、慌ただしく料理に手を付けたりと、獣のようにむさぼり食べる様子ががつがつと音をたてているように感じることから、「騒がしく食べる=がつがつ」と表現した。

〇「がつがつ」と「もりもり」の違いは?
「もりもり」のポイントは盛りつけられた料理を次々に食べること。おかわりをする際に何度も料理を盛ってもらう様子から、「何度も盛ってもらう=もりもり」と言われるようになった。

「もりもり」は食べる量は多いが、食べる勢いは普通と変わらない。「がつがつ」はむさぼるように勢いよく食べるので、「もりもり」の方が食べる勢いが弱い。

〇どのような食べ方を「もぐもぐ」というのか?
「もぐもぐ」とは、食べ物を口に運ぶまでは勢いよく見えるが、噛み続けて飲み込まない状態。噛み続ける口の動きの様子から「もぐもぐ」というようになった。

「もぐもぐ」は食べ物で口の中がいっぱいになって次の食べ物を口に入れることができないので、食べる勢いはもっとも弱い。

(2)「斉唱」と「合唱」の差

(写真)

専門家:江原陽子(洗足学園音楽大学)

この差は…
音程を分けて歌うか どうか
同じ音程なら「斉唱」、異なる音程を合わせると「合唱」。

〇斉唱とは?
「斉唱」とは、同じ音程を大人数で歌うこと。

〇合唱とは?
「合唱」とは、いくつか違う音程を大人数で歌うこと。

(3)人を数える時に使う「人」と「名」の差

(写真)

専門家:山口謠司(大東文化大学 准教授)

この差は…
個人を特定できるかできないか どうか
個人を特定できない場合は「人」、個人を特定できる場合は「名」を使う。

〇どのような時に人数を「人」で数えるのか?
個人を特定できない場合。例えば携帯ショップの待ち人数は、順番待ちの段階ではどんな人が待っているのか個人を特定できないので「8人」。ライブの観客数は一人ひとりの名前を確認したりできないから「7,000人」。ドラマのエキストラ募集人数はどんな人が集まるのか募集の時点では個人を特定できないから「1,000人」などと「人」を使う。

〇どのような時に人数を「名」で数えるのか?
個人を特定できる場合。例えば飲食店の順番待ちの人数は、店員がお客の顔を見たり待機リストで名前を確認したりして個人を特定できるので「2名」。ライブの出演者は一人ひとり名前がわかっていて個人を特定できるから「46名」。TBS社員数は誰が社員なのか個人を特定できるから「1,072名」などと「名」を使っている。

〇もともと日本ではすべて「人」で数えていた。
昔、日本で人の数を数える時は、個人を特定できるかできないかに関わらず「人」を使っていた。奈良時代に成立した「日本書紀」では人数表記はすべて「人」。平安時代の法律がまとめられた「延喜式」にも人数表記は「人」が使われている。

〇いつから「名」が使われるようになったのか?
「名」が使われ始めたのは明治時代。陸軍を始めとする軍隊で使い始められたのではないかと考えられており、明治15年に定められた陸軍の報告書のひな型である”陸軍報告例”には、人数はすべて「名」で書くように示されている。

〇なぜ「人」と「名」を使い分けるようになったのか?
明治になって初めてできた陸軍は個人を特定できる組織だったため。明治5年に明治政府は国民一人ひとりの名前・年齢・住所を把握するため、壬申戸籍という「戸籍」を作った。この戸籍をもとに満20歳の男性に徴兵検査を義務付け、検査に合格した人が軍人となった。

明治になって初めてできた陸軍は個人を特定できる組織だったため、江戸時代の古い組織と区別するため、明治の陸軍は人の数え方を「人」ではない数え方にわざわざ変えたのではないかと考えられている。個人を特定できるということで、名前の「名」を取った「名」という数え方にした。

ただ、現在では「人」と「名」の使い分けが曖昧になっていて、単に丁寧な言い方をする時に「名」を使う場合もある。

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