この差って何ですか?

毎週火曜よる7時

過去の放送内容

2018年3月13日

(1)「味噌汁」と「おみおつけ」の差

(写真)

専門家:神永曉(日本国語大辞典 元編集長)

この差は…
「庶民の呼び方」か「丁寧な呼び方」か どうか
「庶民の呼び方」は「味噌汁」。宮中で生まれた「丁寧な呼び方」は「おみおつけ」。

〇なぜ「おみおつけ」という呼び方が生まれたのか?
どちらもお湯に味噌を溶かしたもので全く同じものだが、先に生まれたのは「おみおつけ」。宮中で使われた言葉で、漢字では「御味御付け」と書く。
平安時代に味噌が作られるようになったが、当時の味噌には大豆の形が残っていて、貴族など宮中で暮らす人々はその味噌をお湯に溶かすのではなく、ご飯のお供としてそのまま食べていた。
鎌倉時代になると、宮中での食事の際に主食のご飯に汁物を付ける文化が誕生し、ご飯に付けるものという意味で「付け」と呼ぶようになった。
当時はすまし汁だったが、宮中で味噌を「付け」に入れて溶かした汁がおいしいと評判に。当初はただ単に「味噌の付け」と呼ばれていたが、室町時代になると宮中で働く女性たちの間で言葉の頭に「お」をつけて丁寧に表現する文化が流行り、「お付け」と呼ぶように。
その後味噌にも「御」をつけて、「味噌の付け」が「御味噌の御付け」に変化、そして「御味噌 御付け」になり、さらに言い易いように省略されて「御味御付け」という言葉が誕生した。

〇「味噌汁」という呼び方の誕生
「味噌汁」と呼ぶようになったのは江戸時代。江戸時代になると日本で大豆がたくさん作られ、味噌も大量に作られるようになり、庶民でも味噌が手に入るようになった。しかし、庶民は「おみおつけ」という宮中の言葉を知らなかったため、「味噌を溶かした汁」ということから味噌の汁、「味噌汁」となった。

(2)「匹(魚の数える単位)」と「本・枚・杯(魚の数える単位)」の差

(写真)

専門家:本橋清彦(魚屋シュン 副店長) 町田健(名古屋大学 名誉教授)


この差は…
帳簿で魚の名前を省略したから
数える単位で魚の種類が分かるようにした。

〇なぜ魚によって数える単位が変わるのか?
商人が早く記帳するため。江戸時代は漁師が獲った魚は商人が買い取り、「俸手振り」という売り子に託して町の人に売って回ってもらっていた。商人は売り子に渡す魚の種類を帳簿に記録していくが、毎回「鯵10匹、秋刀魚10本、平目5匹…」などと記入していくのは大変。そこで、魚の種類によって数える単位を変えて、「10本、3枚、5杯…」と数だけを書くことで早く記帳できるようにした。

〇サンマ・ヒラメ・イカ・・・魚を数える単位はどのように変わる?
アジやサバなど通常の魚は「匹」だが、サンマやサヨリなど長めの魚は「本」、薄く平べったい形のヒラメは板に例えられて「枚」と数える。魚を数える単位は形から決まることが多く、尻尾のような形のエビは「尾」、イカはひっくり返すとお酒を飲むときに使う杯の形に似ていることから「杯」。めざしはイワシの目に串を刺して数匹を連ねて干していたことから「連」。ただし串から外した場合はそれぞれ「匹」と数える。

(3)「悪事に手を染める」と「悪事から足を洗う」の差

(写真)

専門家:根本浩(国語教師)

この差は…
悪事について使う言葉かどうか
本来は「悪事に手を染める」は間違っている。

〇「手を染める」の語源は「手を初める」。
もともと「手を染める」は物事をしはじめるという意味で、悪いことを始めるという意味ではなかった。「手を染める」は元々「手を初める」と書いていた。手が最初に動くことから物事を始めるときの表現として「手を初める」になった。
「手を染める」は、昭和に入ってから「細雪」や「痴人の愛」などで有名な作家の谷崎潤一郎が使い始めたといわれている。小説「吉野葛」を執筆中に、谷崎潤一郎の遊び心から「手を染める」が生まれた。

〇なぜ「手を染める」が悪い意味になったのか?
染物で汚れてしまった手は簡単にはきれいにならないことから、なかなか汚れが落ちないことと悪事から抜け出せない様子が重なり悪事について使われるようになった。

〇「足を洗う」の語源。
「足を洗う」はもともとは仏教の世界で生まれた言葉。昔、お坊さんが外に修行に出るときは裸足で出て行った。外を歩くと裸足に煩悩がまとわりつくと言われていたことから、戻ってきてお寺の中に入る前に足を洗って煩悩を取り除いた。そのしきたりから、悪いことをやめるときは「足を洗う」というようになった。

(4)お葬式に参列する時のしきたりや礼儀作法の差

(写真)

専門家:木野島光美(冠婚葬祭マナーアドバイザー)

この差は…
(1)正式な喪服には切れ込みがない。
(2)革製のバッグはNG。
(3)アクセサリーに真珠はOK。2連のネックレスは避ける。
(4)すべての宗派に使える香典袋の表書きは「お香典」。
(5)お香典にはシワの付いたお札を入れる。

新札の時は折り目をつけてから入れる。

〇仕事で着る黒いスーツでの参列はふさわしくない?
一般的なスーツには、背中に切れ込みが入っているためふさわしくない。
昔、西洋では剣を持って武装したり乗馬したりしていたため、ジャケットにはサイドやセンターに切れ込みがあった。お葬式は静かに個人をしのぶ場所なので切れ込みのあるスーツはふさわしくなく、正式な喪服には切れ込みがない。

〇革製のバッグは黒くてもNG?
革製品は牛などの動物から作られており、殺生の意味合いがあるために仏式の葬儀にはふさわしくない。本来ならば布製品がよく、難しいならば合皮製品を使用する。同じく、靴やベルトも合皮製品にすることがふさわしい。

〇真珠のネックレスは二連にしない?
もともと葬儀には華美なアクセサリーを付けるべきではないが、真珠は涙の象徴として世界中で受け入れられている。ただし「不幸が重なる」意味を持つため、二連のネックレスはつけるべきではない。

〇お葬式の香典袋にふさわしい表書きは?
「お香典」の表書きは、たいていの宗派で使用できる。亡くなってから四十九日までは仏になる前の霊の状態とする宗派であれば「ご霊前」でも構わない。四十九日法要後は「ご仏前」を使う。ただ、宗派の違いがあるため「お香典」が一番適しているといえる。

〇お香典に新札を使うのは失礼?
新札を入れると、前もって不幸を予測して準備していたことになるためふさわしくない。新札の場合は折って入れたり、あえてシワの付いたお札を入れると良い。

〇香典袋へ入れるお札の向きや金額は?
香典袋の中に入っている「中包み」と呼ばれる中袋に、お札の肖像画の顔を下向きにし、さらに裏返して入れる。親しい方が亡くなると心が下を向く気持ちを表している。
近所の人や友人には3千円か5千円、上司や先生には1万円、親族やお世話になった方には3万円か5万円が相場。基本的には故人との縁が切れないようにという気持ちを込めて、割れない数である奇数が使われる。どうしても2万円にしたい場合は、1万円札を1枚と5千円札を2枚入れて、枚数が奇数になるようにすることもある。

(5)お葬式に参列した時のしきたりや礼儀作法の差

(写真)

専門家:井上広法(浄土宗光琳寺 副住職)

この差は…
(1)受付では「お悔やみを申し上げます」。
(2)数珠は左手に持つ。
(3)お焼香は故人ファーストで。
(4)お焼香は何回でもOK。
(5)「天国で安らかにお眠りください」はNG。

お葬式の後は、来た道と別の道を通って帰る。

〇「ご冥福御お祈りします」はふさわしくない?
「ご冥福」の冥は、暗黒の死後の世界を意味するが、宗派によっては極楽浄土の死後の世界を目指しているため、「冥福を祈る」という言葉は適切ではない。「お悔やみを申し上げます」ならば、ご遺族の方々の悲しみに共感している言葉なので、仏教に限らず使うことができる。

〇数珠は左手に持つのがマナー。
数の珠と書く「数珠」は、念仏やお経を数えるそろばんのようなもの。お坊さんの教本でも、合掌以外の時は左手に持つことがマナーとされている。

〇お焼香ではまず故人に弔意を表す。
お焼香の際は、まず故人に手を合わせ、弔意を表す。ご遺族へのお辞儀は、そのあとでよい。まずご遺族にお辞儀をしなくてはいけないという決まりはない。

〇お焼香は2回でも良い?
お焼香の回数に決まりはない。1回だけでも心を込めれば尊いもの。実際には1回2回3回
のお焼香にもそれぞれ意味はあるが、僧侶が修行する中、口伝で教えられるもの。

〇仏教に「天国」はない?
仏教には天国という概念がそれほどないので、「天国で安らかにお眠りください」というのはふさわしくない。地獄の反対は「極楽」であり、ご先祖様たちはあの世に行ってから仏になるための修行をするため、「眠る」というのも間違っている。気持ちや願いを込めた言葉を故人にかけるとよい。

〇お葬式の帰り道は「繰り返さない」。
お葬式の帰り道は来た道と同じ道を通って帰ってはいけない。仏教というよりも日本人の風習として、同じ事を繰り返すと死が死を呼ぶと考えられている。火葬場への送迎バスも、行きと帰りできちんとルートを変えている。

※お葬式のしきたりや礼儀作法は、地域や宗派によって異なる場合がある。

(6)「いびきをかく人」と「いびきをかかない人」の差

(写真)

専門家:梶本修身(東京疲労・睡眠クリニック)

この差は…
寝ているときに舌がノドに「垂れる」か「垂れないか」
舌がノドに垂れて気道をふさぐと空気の流れが悪くなりイビキが起きる。

〇なぜイビキが起こる?
仰向けで休んでいるとき通常であればスムーズに空気が気道を通り呼吸できるが、舌がノドに垂れてしまうと空気の通り道が狭くなるので、空気が振動して音を立てる。これがイビキ。

〇睡眠時無呼吸症候群の危険
イビキを放置しておくと突然死の危険が増す。10秒以上の無呼吸が1時間に5回以上ある状態を「睡眠時無呼吸症候群」という。無呼吸な状態が長く続くと突然死が起きやすくなる。心臓に酸素がいかなくなり、血圧が上がったりもするので、心筋梗塞や脳卒中を起こす恐れがある。

〇舌が垂れる原因(1):「加齢」
舌の位置を正常に保つ「舌筋」が「加齢」により衰え、ノドの奥に舌が垂れてきて気道をふさいでしまう。

〇舌が垂れる原因(2):「肥満」
体重が増えると舌も太る。舌が太ると重くなり、その重みで垂れてしまう。

〇舌が垂れる原因(3):「アゴが小さい」
ノドとの距離が重要なので、アゴが小さい人はどうしても舌が後ろに下がる。特に下のアゴが大事で、舌の納めるスペースが狭く、少し舌が下がるだけで詰まってしまう。小顔の方は睡眠時無呼吸症候群になりやすいと言える。

〇睡眠時無呼吸症候群を防ぐための対策は?
重症な人にはCPAP療法という治療がある。家庭でできる簡単な方法としては、横向きで寝ること。それだけでも8割の方のイビキが軽減した。横向きで寝るために、
・リュックを背負って寝て仰向けになることを防ぐ
・片側にだけ小さな照明を置き、無意識に明かりを避けるようにする
という方法がある。

(7)どう使い分けたらいいの?この差日本語辞典

(写真)

専門家:サンキュータツオ(日本語学者 漫才師)

(1)「玉子」と「卵」の差

この差は…
「生物学的なたまご」か「調理されたかたまご」か どうか
「卵」は「生物学的なたまご」、「玉子」は「調理されたたまご」を指す。

〇「卵」と「玉子」の違い
「卵」という漢字は卵の中に子どもがいる生物のたまごを表している。
「玉子」は室町時代に南蛮貿易が始まり、カステラなど鳥を卵を使った料理が日本人に広まると、あまりに美味しくてありがたいことから、宝石という意味の「玉」を使い、玉から子どもが生まれることから「玉子」という言葉を使った。
たまごかけご飯は「卵」、たまご丼、たまご焼き、たまご豆腐には「玉子」を使う。


(2)「十分」と「充分」の差

この差は…
「物理的に満たされている状態」か「気持ちが満たされている状態」かどうか
「十分」は「物理的に満たされている状態」、「充分」は「気持ちが満たされている状態」を指す。


〇「十分」と「充分」の違い
日本には昔「十分」しかなく、「腹八分目」のように目盛りの感覚で考えていた。近代になり気持ちと区別するために、「充実感」や「充足感」のように心が満たされた状態を表す「充分」が生まれた。


(3)「天気」と「天候」の差

この差は…
「特定の日時の大気の状態」か「まとまった期間の大気の状態」かどうか
「天気」は「特定の日時」、「天候」は「まとまった期間」の大気の状態を指す。

〇「天気」と「天候」の違い
「天気」の気は「気配」のことで、「特定の日時」の大気の状態。「天候」の候は中国の言葉で5日間を意味し、「まとまった期間」の平均的な大気の状態を指す。
午後6時の、明日の、金曜日の、は特定のピンポイント日時なので「天気」。秋の、12月の、今月中旬の、はまとまった期間なので「天候」となる。ちなみに「気候」は「天候」よりさらに長い期間の大気の状態のこと。

〇週間「天気」予報というのはなぜか?
週間天気予報の場合は必ず日付が入り、ピンポイントに1日1日の予報をしたまとまりのため「天気」となる。


(4)「了解しました」と「承知しました」の差

この差は…
「目上の人」が「目下の人」に使うか「目下の人」が「目上の人」に使うかどうか
「了解しました」は、「目上の人」が「目下の人」に使う。
「承知しました」は、「目下の人」が「目上の人」に使う。


〇「了承」と「承知」、なぜ使い分ける?
「了=終わらせる」、「解=理解するとなり」、「了解しました」には話を理解して終わらせるという意味がある。終わらせる権限があるのは「目上の人」だから、「了解しました」は「目上の人」が「目下の人」に使う言葉。「承」は、「承る=聞くの謙譲語」で、自分を下げる言葉であるため、「目下の人」が「目上の人」に使うのが正しい。

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