住民の代表であるはずの議会が、住民の声を聞くことを否決した。
北海道・寿都町。日本海の強い風を活かした国内初の町営風力発電所が、まちの大きな財源だ。しかし、約2900人の人口は、今後も減少が見込まれていて、財政の見通しも厳しい。
去年8月、町長が、「核のごみ」の最終処分場の受け入れ調査への応募を検討していると明らかにした。突然全国の注目を浴び、混乱した住民は、分断していく。小さなまちの密接な人間関係の中で、多くの住民は声を潜めた。その中で、一部の住民が、行政に任せきりだったこれまでを反省し、声を上げ始めた。
「肌感覚では賛成が多い」と突き進む町長に、反対派の住民たちは、「正確な民意を反映してほしい」と住民投票を求める。しかし、議会はあっさりと否決した。住民の不安を置き去りにして、去年11月、文献調査は始まった。
冷たい風に晒される冬。報道陣もいなくなり、閑散としたまちで、町議会議員の解職請求を求め署名活動をしたり、話し合いを求め続けたりする住民たちがいた。
10年前に起きた東日本大震災でいったん止まった原子力発電所。しかし「核のごみ」の最終処分地が決まらないまま、全国で再稼働が進む。
国の原子力政策にとって重要な核のごみの処分が、国民的議論がまったく進まないまま北海道の過疎のマチの問題として進む。しかも議会は住民の声を聞こうともせず、住民どうしの分断が深まったまま。
「核のごみ」問題を通して民主主義のありようを問う。
制作:HBC北海道放送
ディレクター:幾島奈央