住み慣れた自宅を失ったショックを、78歳の小谷登志江さんは、こう語った。
「あの頃は半分死んでいた。ただ息をしていただけだった」
千葉県館山市布良。房総半島の南部にある小さな漁村だ。去年9月の台風15号による暴風で、多くの家が屋根を飛ばされた。復旧の見通しも立たないまま、さらに19号と21号、2つの台風が追い打ちをかけた。
一人暮らしの高齢者が多い布良。台風被害で人口流出も加速。2020年を迎えた今も、ブルーシートが目立ち、再建は進んでいない。
それでも、小谷さんは言う。
「ここにいたいんだね、私は」
屋根が飛んだ二階を切り取り平屋に建て直し、同じ場所に住むことを決めた。
3度の台風が布良の人たちに残した、深い傷あと。その中でも少しずつ、生きる力を取り戻そうとする人たちを追った。
制作:TBSテレビ
ディレクター:小松玲葉