2020年の世界自然遺産登録を目指す沖縄・やんばるの森。ヤンバルクイナなど世界でここでしか見ることの出来ない多くの希少生物が住むこの森は、“奇跡の森”とも呼ばれる。その森の大部分は、2016年に約半分が返還されるまで米軍基地だった。「基地があったから開発されずに貴重な森が残った」。沖縄の米軍基地をめぐり、よく耳にする言葉だが―。
米軍北部訓練場にほど近い東村に住むチョウ類研究家の宮城秋乃氏(41)。彼女の日課はやんばるに生息する昆虫や希少生物の研究・観察、そして米軍廃棄物の回収だ。
北部訓練場跡地には訓練弾や照明弾、ドラム缶からバッテリーまで実に様々な廃棄物がそのまま残されている。日米地位協定によって米軍は施設の返還にあたり、原状回復の義務が免除されているためだ。
米軍基地による環境汚染問題を長年調査してきたInformed Public Project(IPP)の河村雅美代表は、日本政府の原状回復への対応の不備と、米軍の論理、そして返還された土地を早く開発したい地元自治体の三者三様の目論見が複雑に絡み合い、問題が顕在化していると指摘する。
世界自然遺産登録に向け官民あげて盛り上がりを見せるなか、決して目をそらしてはいけない“奇跡の森”のリアルを見つめる。
制作:RBC琉球放送
ディレクター:平田俊一