TBS 日曜劇場「JIN -仁-」｜お江戸マメ知識

お江戸マメ知識

まるで本当に見てきたかのように「江戸のアレコレ」を語ってくれる、時代考証の山田順子先生。このコーナーでは毎週、そんな山田先生に“気になるシーン”について解説していただきます。

第4回

張見世の中に居並ぶ熱帯魚のような遊女たち

遊女が吉原にやってくるパターンは２つ。ひとつは野風のように、貧しい家が生活のため幼い子供を売るというもので、相場は文化年間（１８０４～１８１８）で３～５両（約２４万～４０万）。この子供は禿（かむろ）と呼ばれ、花魁の部屋子として身の回りの雑用などをしながら読み書きを習ったり、遊女になる教育を受けていくわ。もうひとつは、娘に成長してから売られてくるパターンで、すぐに客がとれるということから１０両（約８０万円）の値で売買されていたの。これが人間一人の値段だと思うと、ゾッとするわよね。
禿として入ってきた子供は、１３～１４歳になると「新造（しんぞう）」と呼ばれる遊女になり、客をとるように。その中から客に人気があり、稼ぎのいい者だけが「花魁」と呼ばれる遊女の最高位につくことができるのよ。新造になってから１０年経つか、年齢が２７歳になると“年季が明けて”自由の身になれるはずなんだけど･･･現実には遊女時代の借金が返済できず、自動延長ということが多かったようね。
遊女として人気を得るには豪華な衣装がいるし、妹格の禿が新造になる祝いの費用も花魁の負担。病気を患ったらその治療費も実費だし、遊女たちの借金はどんどんかさむ一方･･･。たとえ無事に年季が明けたとしても、彼女たちのほとんどは性病におかされて身体が弱く、結婚したとしても家事などやったことがないので嫁として務まらず･･･。なかなか幸福にはなれなかったんじゃないかしら。

３話までは、仁先生が丈の足りていない着物をまとっていましたが、当時の人たちは身長が低かったのですか？

当時の日本人の身長は、今ほど高くなかったわね。大きくても女性で１５０センチ、男性でも１６０センチぐらいが平均だったんじゃないかしら。だから、１７０センチどころか１８０センチ以上もある仁先生（大沢たかおさん）が江戸にいったら、大男として大変珍しがられたでしょうね（笑）。
ちなみに、橘恭太郎を演じていらっしゃる小出恵介さんも背がスラッとしていらっしゃるけれど、彼は武士という役柄なので、セットの天井が低いからといって頭を下げてくぐっているようでは風格もすたってしまう！だから、戸をくぐるときなどにもできるだけ「頭を下げる」のではなく、「膝を軽く曲げて」くぐるようにとアドバイスさせていただいているんですよ。

江戸時代って、女性は下着を履いていなかったと聞きました。本当ですか？

あの当時、男性はふんどしを身につけていたけれど、女性は下着を着けていなかったというのは本当よ。ただし、女性は月に一度、下着をつけていないとどうしても困る時期があるわよね。その時だけは女性たちもふんどしの一種を身につけて、綿や古くて使わなくなったぼろ布などをあてがってしのいでいたの。ただ、綿もこの時代の人々にとっては（先週このコーナーで解説した）砂糖と同じぐらい貴重なもの。裕福な家庭でしか使われていなかったと思うわ。日本の女性たちに下着が定着するようになったのはたしか、明治時代の中頃からだったはずよ。

山田先生への質問は締め切りました。たくさんの質問をいただき、ありがとうございました。

TBS 日曜劇場「JIN -仁-」

2009年10月11日スタート 日曜よる9時

お江戸マメ知識

第4回

2009年10月11日スタート日曜よる9時