
アラビア半島の南端、砂漠と海に挟まれた山岳地帯に、類を見ない街がある。世界最古の摩天楼都市サナアだ。
古代より、交易によって栄え、その豊かさゆえに、抗争にさらされてきた。 |
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サナアの建物が高くそびえはじめたのは、膨らむ人口を、城壁の中に詰め込むための知恵。高いものは、7階にも及ぶ。ひとつの建物の中に、同じ血縁の者同士が10人から30人で部屋を分け合って住んでいる。主な建材は、土を固めただけの日干しレンガ。建物を補強するため、低層階には堅牢な石が使われている。 |
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最上階に置かれているのは、マフラージという特別な部屋。そこは、市街のパノラマを見下ろす特等室だ。大切な友達や商談相手を招く。
休日にはここで、カート・パーティが催される。カートはアフリカやアラビアで栽培され、葉を噛み砕き、そのエキスを飲みこむと、心地よい高揚感が得られるそうだ。 |
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標高2300mの高地に位置するサナアでは、意外なほど多くの青々とした緑地を目にする。摩天楼の隙間を縫って広がる、ブスターンと呼ばれる共同菜園だ。
敵の攻撃を受け、城門を閉めて篭城した時でも、食料を確保できるよう作られた。何百年もの間、この城壁の中で、自給自足の生活が受け継がれてきた。 |
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