
中国長江中流域の大平原の真ん中に、まるで島のように浮かんで見える廬山。大小171の峰々が寄り添うように聳え立ち、複雑な地形に彩られている。さらに、周囲を中国一の大河・長江と中流域の大小湖沼群に囲まれているため、湿度が高く、霧が出る日は年間に190日にもなる。 |
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中国の山水詩は、この廬山から生まれた。田園詩人の陶淵明をはじめ、唐の時代の大詩人、李白や白居易など、歴代1500人にも及ぶ文人墨客がこの廬山を訪れた。李白は廬山の躍動的な峰々、神々しく流れ落ちるこの黄岩峰の滝の美しさを詩「廬山の瀑布水を望む」に表した。 |
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廬山は、中国でも指折りの避暑地。19世紀後半、中国に来た欧米の宣教師や商人たちが、この廬山の景観と気候を愛し、競うように別荘を建てた。欧米18カ国の民間建築様式、約千棟が一同に会するのは、世界でもここだけだ。新中国成立まで、廬山は国民党政府の“夏の都”だった。 |
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4世紀の名僧・慧遠は、この廬山に東林寺を建立、浄土教を開いた。それまでの特権階級の仏教ではなく、“念仏で救われる”という、名もない庶民にもわかる大衆的な仏教である。後に、朝鮮半島や日本に大きな影響を与えた。また風光明媚な山中に寺院を建立するようになったのは、この東林寺からである。 |
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