TBSテレビ・毎日新聞社2015年・戦後70年共同プロジェクト「千の証言」



[ 千の証言・投稿 ]
神奈川県海老名市・橋本ヨシエさん(78)


私は9歳の時、「横浜十全病院」の前に住み、5月の大空襲にあいました。病院脇の住民は転居させられ、大きな防空壕がいくつか出来ました。

午前中のことだったと思います。防空壕に避難してしばらくすると、警防団員が「ここから早く逃げろ」と怒鳴ります。外に出たら町中火の海。我が家も燃えています。夜勤明けの父が爆風に飛ばされ、前歯が欠けました。私たちも皆の行く方へ走り出すと、父が「こっちだ、こっちだ」と風上の方へ引き戻しました。機銃掃射の中、橋を渡り、林の中へ逃げ、飲食できないまま夕方に焼け野原の町へ戻りました。川の中の焼死体、破裂した水道管の噴水、空になった防火用水の中で焦げている金魚……。ものすごい臭いです。

父と兄が焦げたお米と鉄かぶとを拾い、それを使って夕飯を作りました。防空壕に雨水がたまり、拾った箱の上で1週間いました。町は無法地帯、市電の線路や敷石をはがす人、土地は分捕り得。我が家もすべて失いました。

戦争の実感のない世代中心の世の中が気になります。こうした過去の上に現在があります。戦争は多くの人生を狂わせます。戦争のない世界になってほしいと願うばかりです。絶対に戦争はやめましょう。


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