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2006年05月29日
 日照不足、天候不順で野菜が高騰!〜その実態は...?

リポートは954キャスター泉貴子が担当しました。

天候不順、日照不足で野菜が高騰!?
先週あたりから「値上がり」のニュースが相次いでいますよね。
以前から高値が続いているガソリンにくわえて、イワシが記録的な高値に
なっているとか、ティッシュやトイレットペーパーの卸値が25%も上がるとか、
デフレ脱却どころかインフレになるんじゃないかと思ってしまうほどです。

なかでも気になったのが「野菜の価格が高騰」というニュース。
例えば5月24日(水)の読売新聞の夕刊の1面トップには
日照不足 記録的  野菜じわり高騰
という見出しの記事が掲載され、
26日(金)の日経新聞の朝刊には
「天候不順で商戦に異変 生鮮野菜が高騰」
という見出しが躍っていましたし、テレビのワイドショーなどでもこのニュースが
扱われていました。
イワシはまあ、他の魚を食べればいいかとも思いましたが、野菜が全般的に高騰
しているとすれば、家計に与える影響も大きいはず。
そこで今朝は東京都中央卸売市場の太田市場に行って、野菜の高騰ぶりについて
その実態を確かめてきました。


野菜価格の実態は?
青果物市場としては国内最大の規模を誇る太田市場では、早朝から野菜や果物の
競りが盛んに行われていましたが、素人の目では何が何やらわかりません。

そこで、野菜卸の「東京青果株式会社」の加藤宏一さんにお話を伺いました。
すると、どうも話が違うようなんです...

  新聞報道などでは盛んに高騰と書かれていますが、実際には高騰という状況
  ではありません。私たちの会社が扱う全ての野菜の卸値の平均(総平均)が、
  現在1キログラムあたり230円くらいで、平年に比べると10〜20円程度の高値に
  なっています。本来は入荷が豊富で価格が下がる時期ですから、
  やはりやや高いことは確かですが、高騰という表現はあまりに大げさでしょう。
  高くなっている野菜もありますが、逆に安い野菜もありますから。
  卸値の平均が300円を超えてこないと高騰とは言えないと思います。


あれれ?「高騰」じゃない??
去年の12月に寒波で野菜の価格が上がった時は、東京青果の総平均も300円を超え、
高騰という雰囲気でしたが、現在は230円程度。騒ぎ立てるほどのことではないようです。
ピーマンやキュウリなど高値になっているものについても、6月に入れば
比較的天候に恵まれた東北産の野菜の出荷が本格化するので、
徐々に価格も落ち着いてくるでしょうとのことでした。


空騒ぎのカラクリ
では、なぜマスメディアは「野菜が高騰」と報じたのでしょうか?
その理由について東京青果の加藤宏一さんは、次のように語っています。

天候不順が続いたことから、まず農業の専門紙が生育状況に懸念がある                 という記事を載せ、それを見た一般紙が派手な見出しの記事を掲載しさらにそれを
テレビが追う、という形でどんどん大げさな表現になっていったのだと思います。                                         
僕のところにもいくつも取材が来ましたが、初めに結論ありき、
なので聞く耳を持たないんですよ。
こちらとしては丁寧に説明しているつもりなのですが、
出来上がった記事はまったく意図とは違ったものになっていて、
びっくりすることもありますね。
この手の記事は入社したての若い記者が担当することが多いので、
上の人に言われて無理にセンセーショナルに書いてしまうんでしょうねえ。
あんまり高騰と煽ると便乗値上げなどに加担することになりかねないのですが...。


耳が痛い...。実に耳が痛いお話です。
実は、僕自身も今回の企画を放送するにあたっては、まず新聞記事を見て
「へえ〜、野菜が高騰しているのか〜」と思って取材を始めたんです。
各地のJAなどに問い合わせてみたのですが、はっきりとした話が聞けず、
地味な企画になっちゃうかなあと思っていたところで出会ったのが加藤さん。
「野菜が高騰しているそうなので、お話を伺いたいのですが...」
と切り出すと、
「申し訳ありませんが、マスコミの方が期待しているような話は出来ないので...」
とのお答え。そこで「えっ、どういうことですか?」と食い下がって伺ったのが
上記の話だったのです。
メディア側はどうしても「派手でわかりやすい話」を求めてしまいますが、
そのことが事実(受け手の印象)を歪めてしまうことになるのだなあと、
あらためて感じました。


野菜の価格だけではなく...
今回は野菜の価格についてでしたが、考えてみると同じような問題は様々な方面に
ついても言えますね。例えば、「治安が悪化している」とか
「凶悪化する少年犯罪」といった表現についてはどうでしょうか?
マスコミで当たり前のように使われている物言いですが、法務省の犯罪白書
などを見ると、統計的な根拠が乏しいことがわかります。
平成17年度版の犯罪白書には
「各国の主要な犯罪統計をみる限り、我が国の主要な犯罪の認知件数
及び発生率は、他の4カ国(仏、独、英、米)を大きく下回っている」
とありますし、少年による殺人は、終戦から昭和40年代までは200〜400人台
で推移していたのに対し、平成16年は62人(前年比35.4%減)

となっていて、「治安が悪化した」「少年犯罪が凶悪化」というイメージとは
かなり異なっています。
例えばこの「現場にアタック」のコーナーでも「不審者情報配信サービス」の
話題などを取り上げていましたが、同時にその前提となるものに対しても、
常に「本当かな?」という視点を持って取材しないといけないな、と肝に銘じました。

担当ディレクター 長谷川裕

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