今朝のレポートは泉貴子が担当しました。
<最近の学校のトイレはきれいになっている?>
学校のトイレは暗くて汚い…そんなイメージを持っていませんか?
私にとって学校のトイレは、暗い、臭い、お化けがでる怖い場所…
など、マイナスイメージが先行してしまいます。
でも、最近の学校のトイレは綺麗で明るくなっている
という情報をキャッチしたんです。
本当?と思いつつ、実際に学校に行って確かめることにしました。
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トイレの入り口 |
<トイレだけがまるで別世界>
うわさを確かめるため、
私は「横須賀市立上の台中学校」にお邪魔してきました。
学校は築20年以上経っていて、本当に綺麗なの?と少し思ってしまいましたが、
トイレまでたどり着くと、、、びっくり!トイレの一角だけ、
スポットライトが照らされたように綺麗なんです。
「こんな時しか入れないのかな」と、興味津々に男子トイレにお邪魔しました。
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洗面台 |
<ここはホテル?>
写真を見ればお分かりだと思いますが、
トイレが明るくとても綺麗でした。
間接照明や、オブジェを置く棚まであり、気になる臭いもありませんでした。
こんなお洒落な「学校のトイレ」を、私は見たことがありませんでした。
まるでホテルのトイレでした。
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男子用便器。右奥のアーチをくぐると、綺麗な個室トイレがありました。 |
ウォッシュレットもありました! |
<学校の中に新旧トイレが混在。その訳は?>
下の写真、私が想像していた一般的な学校のトイレですが、
このトイレも上の台中学校トイレです。
この中学は、古いトイレと綺麗なトイレが混在しており、
綺麗なトイレは各階に一箇所整備されていました。
変わっている?と思ったのですが、横須賀市の全ての小中学校が同じ状況ということ。
実は、横須賀市のトイレ改修事業、「トイレフレッシュアップ計画」によるものなんです。
このフレッシュアップ計画、総額23億円をかけ、平成10年〜平成15年に実施され、
横須賀市全ての小中学校のトイレが改修されていたんです。
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古いトイレの入り口 |
古いトイレの中 |
<横須賀市がトイレをきれいにした訳は?>
では、そもそも、なぜトイレをきれいにすることにしたのか
横須賀市、学校管理課の高田利男さんにうかがいました。
これまでにトイレといえば、5K(「暗い、臭い、汚い、怖い、壊れている=5K」
というマイナスイメージがあったのですが、まずはそれを脱却するためです。
汚いから「行きたくない」というトイレから、
積極的に「行きたくなる」トイレにする ことが狙いです。
汚いトイレからの脱却が−でも、それ以上に、「行政面」からの理由も大きな要因でした。
学校管理課は、以前からトイレの「整備」を担当し、予算を当てていました。
壊れたトイレの現状復帰が中心でしたが、直しては壊され、の「イタチごっこ」で、
ポイント的にトイレを改修しても、改修した翌日に壊されていたこともありました。
予算の無駄で、状況を打破したいと考え、「きれいなトイレ」なら
いたわって使うのではと考えました。
また、設計に生徒が加われば、
「自分たちかデザインしたキレイな自分たちのトイレ」
という意識が生まれると考え、設計に生徒にも加わってもらいました。
初期投資はかかっても、長い目で見れば節約できる−という期待があったんですね。
<狙いは達成?きれいなトイレで、生徒の心が変化>
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上の台中学校の皆さんと |
実際、その狙いは達成しているのか、高田さんにうかがうと、トイレの破壊行為は格段に少なくなったとのこと。
更に、実際に使っている生徒の反応を、再び上の台中学で聞いてきました。更に、実際に使っている生徒の反応を、再び上の台中学で聞いてきました。
〜生徒の声〜
- すごく広くて綺麗で使いやすいです。トイレに行くのが楽しくなりました。(中三女子)
- 小学校は和式でウンチするのがいやだったけど、今のトイレは洋式でうれしい。
家のトイレみたいに落ち着きます(中三男子)
- 小学校の時はお化けが出るといわれるくらい、汚くて暗かったけど、今は違います。
鏡でみんな髪を直し、休み時間には、おしゃべりしに自然にここに集まります。(中二女子)
- 小学校は、トイレでうんちをするとからかわれたから、行きたくありませんでした。
でも、今はトイレがきれいで行きやすくなりました。トイレに入ると「大丈夫か?おなか痛くないか?」と心配し、いたわってもくれるんです。(中二男子)
とても好評ですね。トイレがきれいになって思いやりが生まれるとは意外な発見でした。
<トイレが「悪い」たまり場から「良い」たまり場に>
先生の立場からは、トイレがきれいになってどんな変化を感じているんでしょうか?
上の台中学の校長・福家義晴さんにお話しを聞きました。
昔は、タバコやいじめの温床で、不良が集まる「悪い意味」での「たまり場」で、
時には、トイレのドアが蹴破られ、ドアが外れることもありました。
今のようにトイレが明るく、綺麗になったことで生徒は
綺麗に使うようになり、みんなが気軽に集まりおしゃべりできる、
「良い意味」での たまり場、「社交場」になってきたと思います。
また綺麗に使おうという意識から、掃除も積極的にするようになりました。
学校が荒れるとトイレも荒れると考えてきましたが
最近はトイレが綺麗だと学校も穏やかになるといっても過言ではありません。
<全国的な動きは?>
ここまでの取材で、横須賀市の計画は成功−の印象を受けましたが、
この動きは横須賀市だけなのでしょうか?
学校のトイレ事情に詳しい
「学校のトイレ研究会」事務長・高嶋弘明さんにお話をうかがいました。
この動きは、全国的にみられます全国的で広がるようになりました。
最初は、岐阜県の栗東市が平成6年に始め、平成9、10年あたりに、
横須賀、世田谷、岡山、富山、大分など全国的に広がりました。
中でもポイントは平成13年(2001年)でした。
13年に文部省(現在の文科省)が学校のトイレ改修の補助金制度を改正し、
築年数が20年を超えた学校のトイレにだけ給付していた補助金の
築年数制限を撤廃し、申請があれば比較的自由に
給付が受けられるようになり、改修する自治体の追い風になりました。
国がトイレのコミュニティとしての価値を再評価した結果だと思います。
国もトイレ事情に注目し始めたということなのですね。
<最新の学校トイレの事情は?>
更に、最新の学校のトイレ事情をうかがうと、
最近は、男子トイレが全て個室の「総個室トイレ」が何校かで試みられています。
また、赤ちゃん、障害を持った方、お年寄りまで誰にとっても使い勝手が良いトイレ、
いわゆるユニバーサルデザインのトイレが多くなってきています。
ユニバーサルデザインのトイレの一例として、
- 大地震などの災害時に地域住民が使えるような工夫のあるトイレ。
例えば、断水しても水に当分不便しないよう屋上にプールを置き、その水を使えるようにしているトイレ
- 参観日にお父さんが赤ちゃんを連れてきても、赤ちゃんのオムツを取り替えられるためのベビーベットがある男子トイレ
などがあります。また、小中学校のトイレの多くがきれいに整備されてきたので、
今度は高校、大学のトイレも注目されてきています。
特に大学は大学全入時代に入る2007年には、「トイレがきれい」であることが
受験生の大学選びのポイントになるのではないでしょうか。
トイレにも2007年問題が到来?!
これからは、トイレが変わると学校が変わる時代になるのかもしれませんね。
担当ディレクター:生駒佑人