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2006年04月03日
 都市型結核にご注意!〜若年層に蔓延の可能性も?

今朝のリポートは泉貴子が担当しました。

若年層にじわりと広がる都市型結核
ポスター結核は、過去の病気じゃないんですよ、土方さん!」と、新撰組の沖田総司が訴えるこのポスターは、東京都がこの春から若者たちに向けて結核を啓発するために作られたポスターです。通常、行政が作るポスターというと区役所や公民館などに掲示されているイメージがありますが、このポスターは予備校や映画館、漫画喫茶、ファーストフード店など若者の目につきやすい場所に貼られています。いまどきなぜ結核を、しかも若者に向けて啓発する必要があるのでしょうか?その理由を東京都感染症対策課結核係の岩本浪砂係長に伺いました。

「人口10万人あたりの患者数で見ますと、東京都は大阪府に次いでワースト2位。特に若年層が占める割合は全国平均の2倍近くと、非常に高くなっています。平成16年の1年間に新たに患者として登録された人数は、20歳代で522人、30歳代で506人で合計すると1028人に達するという状況です」

なんとなんと、東京都は20〜30歳代の若い世代だけで1年間に1000人以上の人が新たに結核患者になっているそうなんです。しかも結核は感染しても発症するのは1〜2割といいますから、実際には感染者の数は患者として登録された人数よりもはるかに多いはずです。そもそも日本は先進国の中ではずば抜けて結核の罹患率が高い国(人口10万人あたりの患者数=罹患率がアメリカは5.3、イギリスは10.8に対し日本は23.3で、WHOの定義によると「中蔓延国」にあたり、今でも年間に2000人以上が結核が原因で亡くなっています。そのなかでも東京都は罹患率(人口10万人あたりの患者数)で大阪府に次いでワースト2位。さらに若年層が占める割合が年々高くなっています。


なぜ大都市で若年層に結核が?
岩本浪砂係長と泉 若年層の割合が増えているのは東京だけではなく、大阪など他の大都市にも共通する現象です。日本で結核患者が最も多いのは60歳以上の高齢者(かつて結核が猛威を振るっていた時代に感染し、加齢などにより免疫が低下したために発症します。今回は若年層の結核に注目しましたが、60歳代以上の高齢者層では半分近い人が結核の保菌者とされますので十分にご注意ください)なのですが、最近では20代にももうひとつのピークが現れるようになってきました。国民病といわれていた時代の名残ではなく、まったく新しい「都市型結核」が問題になりつつあるのです。では、なぜ大都市で若年層の結核が多いのか?再び東京都感染症対策課の岩本浪砂さんに聞いてみました。

「大都市では24時間営業で寝泊りもできるようなマンガ喫茶やインターネットカフェなど、不特定多数が出入りする気密性の高い施設が多く、感染の場となっている可能性があります。また、アルバイトやパートなど、定期的な健康診断を受けにくい雇用形態が多いことも原因のひとつであると考えられます」

ポスター結核菌は非常に丈夫な細菌で、乾燥に強い性質を持ちます。咳やくしゃみで空気中に飛び出すと、周囲の水分が蒸発しても生存し、30分以上空気中を漂います。これを周囲の人が肺に吸い込むことによって感染(空気感染)してしまうのです。結核菌は屋外に出て拡散したり、紫外線に当たったりすると急速に感染力を失うのですが、逆に気密性が高く日当たりの悪い場所では感染のリスクは高くなります。この時期、歓迎会などでカラオケボックスに行ったり、終電を逃してマンガ喫茶やネットカフェで一泊、なんて機会も多いと思いますが、換気の状態には留意した方が良さそうです。実際に昨年、川崎市のネットカフェで13人が集団感染した事例もあります。

また、雇用形態の変化も見過ごせない要因です。学校を卒業した後は、就職先で定期健診を受けているという人が多いと思いますが、近年はアルバイトやパートなどの非正規雇用が増えており、定期検診を受けにくい人が増加しています。アルバイトやパートなどでも一定要件を満たせば、1年に1回健康診断を実施する義務が雇用主側にあるのですが、1年未満の短期雇用の場合にはこうした機会も逃すことになりがちです。問題となっている20〜30歳代は、まさに不況期で新卒採用が極端に減っていた時期に就職期を迎えた世代にあたり、同世代のディレクターとしては何とも切ない気持ちがします。


「火に油をそそぐ」懸念...
ポスター若年層の結核について、医学界では将来的にさらに深刻な問題になりうることが懸念されています。どんな事態が心配されるのか、国立病院機構・東京病院、呼吸器科の永井英明医長は次のように指摘しています。

「心配されるのはHIVとの合併感染が広まることです。HIVに感染すると免疫が低下するので、結核に感染しやすく、そして重症化しやすくなります。若年層のHIVやエイズの増加が問題になっていますが、そこに結核が広まれば重大な事態になる可能性があると危惧しています」

結核自体は現在では特効薬もあり、きちんと対処すれば怖い病気ではありません。また、HIVも薬である程度コントロールできるようになってきました。しかし、合併感染してしまうと治療が難しくなってしまうそうです。実際にアフリカなどHIV感染率が高い地域では、結核との合併感染が深刻な問題になっており、今後、日本でもHIV感染がさらに広まれば重大な自体になりかねません。HIVと結核がともに若年層で広がっているとなると、将来的にかなり心配です。


2週間続く咳には要注意
では、実際に結核の感染を広げないためにはどんなことに気をつければいいのか、ふたたび東京都感染症課の岩本さんに伺いました。

「これから時期に学校や職場で行われる健康診断は必ず受診するようにしてください。また結核は咳や痰、発熱などの症状で始まりますので、2週間咳が続いたら、結核の可能性を疑って医師の診断を受けることが大切です」

結核というと昔の病気というイメージがありましたが、実際には新たな形で脅威になりつつあるようです。おかしいなと思ったら、早めに病院に行ったほうが良さそうですね。

担当ディレクター 長谷川裕
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