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2006年01月09日
 『「ニート』って言うな!』〜本田由紀さんインタビュー

本『「ニート」って言うな!』
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2006年、「ニート」は死語になる?!
『「ニート」って言うな!』の著者、本田由紀さん
インタビュー


成人の日のきょうは、若者に関して大きな問題になっている「ニート」について、東京大学社会科学研究所助教授の本田由紀さんをスタジオにお招きしてお話をうかがいました。本田さんは今月発売の著書『「ニート」って言うな!』(光文社新書。内藤朝雄さん、後藤和智さんとの共著)で、メディアや世間に流通する「ニート」概念に疑義を呈し、「ニート」という言葉を安易に使うべきではない、と主張されています。

※以下の記事は放送内容、本田先生との打ち合わせ、著作などを参考にまとめたもので、文責は担当ディレクターにあります。詳しくはぜひ『「ニート」って言うな!』をお読みください。

「ニート」という言葉の問題点
本田先生は「ニート」という言葉が大きな誤解を招いていると指摘しています。「ニート」という言葉は、日本では「職探しも進学も就職訓練も受けていない15歳〜34歳の若者」と定義されています。これで自体はニュートラルな定義のはずですが、イメージとして「働く気のない怠け者」「無気力」「心を病んでいる」といった非常にネガティブなものとなっていて、実際にマスコミなどでも「ニート主婦」(AERAでの猪瀬直樹氏の発言)、「社内ニート」(日経ビジネス)、「家庭ごとニート」(週刊ダイヤモンド)など、本来の意味からはかけ離れた使い方までされています。まあはっきり言って「ごくつぶし」とか「パラサイト」といった罵倒語に近い使い方をされているわけですよね。また、半ば意図的に「ひきこもり」と混同されている場合も少なくありません。


いわゆる「ニート」は増えていない!?
多少イメージが歪められているとはいえ、実際に働く気のない若者が増えているのは大きな問題じゃないかと思いますよね?ところが、本田先生によると「働く気のない若者が増えている」というイメージ自体が間違っているそうなんです。内閣府の報告書によると、ニートの数は2002年の段階でおよそ85万人。これは10年前の1.27倍で18万人の増加となっています。ところが、このなかで「働きたいという気持ちをもたない」、世間が思う「ニート」のイメージに近い人は42万人でほぼ半分。残りの半分は「働きたいという気持ちはある」が、今は具体的な職探しをしていないという人たちです(ケガや病気で休んでいる人もいれば、進学や留学、資格取得のために勉強している人などが含まれます)。

さらに10年前との比較を見てみると、「働きたいという気持ちをもたない」人は42万人でほぼ一定。増えた18万人のほとんどは「働きたいという気持ちはもっている」人なんです。また「働きたいという気持ちをもっていない」という人についても、一生働きたくない人(世間的にはニートってこういうイメージでしょう。某テレビ番組に登場した「働いたら負けかなと思っている」君みたいな)だけでなく、進学・留学、結婚などの準備で今は働く気がないという人なども含まれており、「ひきこもり」的な人もごく一部に過ぎません。つまりニートという言葉で一般的にイメージされる、働く気のない無気力な若者の数はほとんど増えていない、ということはデータ的にも明らかだというわけです。(実は昔から「働く気のない若者」というのは一定の割合で常に存在しているんですよね。「ドラ息子」とか、家事手伝いのお嬢さんとか。その一方でニートと分類される人の中には、芸術・文化活動などに積極的に取り組む、無気力のイメージとはほど遠い若者もいます。また、重い障碍や病気のため働くことのできない人や、家族の介護をしている人も統計的にはニートにカウントされてしまっています)


「ニート」が覆い隠すもの
世間がイメージする「ニート」がほとんど増えていないのに対し、むしろ圧倒的に増えているのは「職を探しているが仕事が見つからない」=失業者の若者です。ニートが10年間で1.27倍、18万人の増加なのに対し、失業者の若者は10年間で64万人から129万人と、2倍強、65万人も増えています。そしてその外側にはさらに多くのフリーターが存在しているのです(内閣府の統計では2001年の時点で417万人)。

ということは、むしろ問題の本質は長期間続いた不況やグローバライゼーションの結果、企業側が若年層特に新卒者の新規採用を大幅に抑制してきたことにあるのではないでしょうか?仕事があったとしても低賃金で過酷な長時間労働を強いられるために長続きしないというケースも多いようです。ところが、「ニート」というネガティブなイメージのついた言葉を使うことによって、「若者の側に問題がある」かのように語られてしまいます。「ニートは無気力な甘えた連中だ。だから内面から叩きなおさなければイカン」とか、「日本の若者も徴兵制にして鍛え直した方がいいですな」といった、よくある「いまどきの若者は〜」パターンですね(そういえば自民党の武部勤幹事長もフリーターやニート問題について「一度自衛隊にでも入ってサマワみたいなところに行ってみてはどうか」なんて言ってました)。経済や社会の構造的な要因が大きいにも関わらず、「ニート」という言葉によって若者側が一方的に悪者されて責任を押し付けられてしまっている、と本田先生は指摘しているわけです。例えば、最近は景気の回復や団塊世代の定年退職よって企業側が一時期よりは新卒の正規雇用を増やし始めているので、これから就職する世代は今の20〜30代に比べればニートやフリーターの数が減る可能性があります。しかしそれは、今の20〜30代が無気力で怠慢な世代だったからではなく、単に時代状況が悪かった、ツイてなかったからということですよね。そして一度正規雇用ルートを外れるとなかなか途中参加できない日本の雇用システムの下では、新卒でもなければ評価されるようなキャリアも持っていない人たちは、今後も使い捨てのような仕事にしかつけない可能性が高いのではないでしょうか。


「ニート」が政策をミスリードする?
去年あたりから国も様々なニート対策を打ち出し始めていますが(多額の予算がついて利権化している側面も)、「ニート」という言葉がもつ歪んだイメージによって政策が間違った方向に進みかねません。「若者の内面に問題がある」→矯正しなければならないという発想では、「人間力をつけましょう」といったトホホなものになりがちです。例えば国が支援する「若者自立塾」では、合宿形式の集団生活を通じて働く意欲を高めるとしていますが、これはむしろ「ひきこもり」対策であって、若年無業者一般に当てはめても効果はあまりなさそうです。誤解の多い「ニート」という括り方はもうやめて、より実態に即した区分けをしたうえでそれぞれに対する有効な対策を考えた方が良いでしょう。そしてその対策は、若者側に対してだけでなく、社会や経済の仕組み(企業の雇用形態や学校教育の見直し、マクロ政策による雇用創出まで)にアプローチする必要があるはずです。

担当ディレクター 長谷川裕
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