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2005年09月05日
 アカデミー賞候補の映画『ホテル・ルワンダ』が日本が公開されない!?

10月3日追記;放送からおよそ1ヶ月、「『ホテル・ルワンダ』日本公開を求める会」の活動が実り、ついに来春『ホテル・ルワンダ』が日本でも公開されることが決定しました!放送を聴いた「森本毅郎スタンバイ!」リスナーの方からも多くの署名が寄せられ、こうした声も大きな力になったようです。公開が決まった以上、できるだけ多くの方にこの映画をご覧いただきたいと願っております。

「現場にアタック」音声を聴く
▲9月5日に放送した「現場にアタック」の音声を聴くことが出来ます。

毅郎さんを筆頭に出演者、スタッフに映画好きが多い「森本毅郎スタンバイ!」ですが、今朝は日本での公開が危ぶまれている映画『ホテル・ルワンダ』についてお伝えしました。

「ホテル・ルワンダ」HP アカデミーにもノミネートされた
『ホテル・ルワンダ』

今年のアカデミー賞といえば、大本命といわれながら作品賞を逃したL・ディカプリオ主演の『アビエイター』、クリント・イーストウッドの『ミリオンダラー・ベイビー』(素晴らしかったですね)などが話題となりましたが、この『ホテル・ルワンダ』も主演男優賞、助演女優賞、脚本賞の主要3部門にノミネートされ注目を集めました。1994年にアフリカのルワンダで起きた大虐殺(多数派のフツ族が、植民地時代に支配層だった少数派のツチ族を殺害。3ヶ月で100万人が殺されたとも言われる)をテーマにした作品で、実話を基にしています。


映画としての評価は?
では実際にこの『ホテル・ルワンダ』はどんな映画なのでしょうか?アメリカ公開時に実際にご覧になったというアメリカ在住の映画評論家町山智浩さん(TBSラジオの『ストリーム』「コラムの花道」火曜日でもおなじみですね)に感想を伺いました。

「主人公は首都キガリの外資系最高級ホテルの支配人ポール。この映画が素晴らしいのは上からの視点ではなく、あくまでもポールの視点から離れることなく状況が描かれること。私たちはポールになった気持ちでこの事件に巻き込まれていくことになります。ポールのホテルには1200人のツチ族が逃げ込んできますが、それを知ったフツ族の武装勢力は今にもホテルに突入し、彼らを皆殺しにしようとします。それに対し、ポールはホテルマンとして培ったあらゆるコネやハッタリを駆使して彼らに対抗し、1200人を救おうとします。『ホテルに来た人はみんなホテルの客だ。客の安全を守るのが僕たちホテルマンの責務じゃないか!』と。銃を持つのではなく、あくまでも自らの責務を貫くことで、ごく普通のサラリーマン的な人物が英雄となっていく姿が実に感動的で、映画として本当に素晴らしい作品です。」

「ホテル・ルワンダ」HP どうです?良さそうな作品じゃないですか。マッチョなヒーローがバッタバッタと敵を倒していくような映画もスカッとするでしょうが、ごく普通の人物が重責と恐怖に崩れ落ちそうになりながら、自らの職務を誇り高く貫くことで人々を救おうとするなんて、なんかグッときますよね。ストーリー的にはアフリカ版『シンドラーのリスト』といえばイメージがわきやすいでしょうか?実際アメリカのメディアでも、例えばニューズ・ウィークでは「とてつもなく心をつかまれる物語」、ニューヨークタイムズ「感情と涙腺を揺さぶられること間違いなし」、USAトゥデイ「今年最もパワフルな感動作」などなど、高い評価が並んでいます。また興行成績もアメリカだけで23億円以上を稼ぎ出し、決して悪くありません。


なぜ日本での公開が決まらないのか?
ところが、この『ホテル・ルワンダ』は未だに日本での公開のメドが立っていません。日本ではどこの配給会社も買わなかったからです。なぜなのか?ある配給会社関係の方は次のように話してくれました。

「配給会社にとってビジネスとして成立するためには、お客さんが入ってくれなければいけません。ところが、この『ホテル・ルワンダ』は日本でヒットする条件を満たしていないんです。日本で受ける映画とは、1.主演俳優がビッグネーム、2.ファミリー向けの内容、3.爆破、アクション、CGが派手なもの、、、。お客さんは頭を使うために映画館に来るのではなく、単純な爽快感を求めている人が多いんですね。日本での映画の位置付けはそんなところなんでしょう。その点、『ホテル・ルワンダ』は1.テーマが政治的、2.主演が黒人俳優でしかもスターじゃない。3.いわゆるハリウッド的な映画ではない、と言わば三重苦。厳しいですね。」

求む!30000人の声! 悲しいかな、これが日本の映画界の現実だとおっしゃるのです。やはりアフリカが舞台の社会派映画なんて観たい人が少ない、たとえ実際には映画として面白い作品だとしても題材だけで引いてしまうと。せめてメジャーなスター俳優が主演していれば少し事情は違ったかもしれません。映画会社としては、デンゼル・ワシントンやウィル・スミスといったスターの起用を望んでいたのですが、テリー・ジョージ監督はドン・チードルにこだわりました。ドン・チードルといわれてもちょっと馴染みがないかも知れませんが、味のある脇役であちこちの映画に出演しているので顔を見れば「あっ、この人か」と思う方も多いでしょう。ポール・トーマス・アンダーソン監督の傑作『ブギーナイツ』(余談ですが、僕はこの映画が大好きでして。70年代のポルノ映画界を舞台にした作品ですが、F.トリュフォー監督の『アメリカの夜』などと同様、映画作り、ひいては何か作品を作る喜びと苦しさが描かれています)で「カントリー好きの黒人俳優」を好演、その後は『オーシャンズ11&12』『トラフィック』などで印象的な脇役を演じています。そんな彼の魅力は、その普通ぽさ。そこが今回のポール役にぴったりなのです。デンゼル・ワシントンやウィル・スミスでは、まったく違う作品になっていたことでしょう。ただ、ドン・チードルが名前で客が呼べるスターではないことは確かで、その点も買い手がつかない大きな理由になっているようです。(ニック・ノルティホアキン・フェニックスジャン・レノといった主演級の俳優が脇を固めてはいるのですが、、、)


高評価が皮肉な結果に、、、
ただ、この映画が安ければ問題なく配給会社が決まっていた可能性が高いようです。配給会社の方々もこの映画を高く評価し、真剣に検討したところが少なくないようですが、アカデミー賞にノミネートされるなど各地の映画祭で評判になり、またアメリカでの興行成績が悪くなかったことから、かなりお客さんが入らないと回収できないような値段になってしまったようです。配給会社でも「もう少し安ければ、本当はうちでやりたいんだけどね、、、」という方も多く、なんとも皮肉な結果となっています。


他国の状況は?
ところで、他の国での公開状況はどうなのでしょうか?再び映画評論家の町山智浩さんのお話です。

「日本では映画関係者がみんな『客が入らない』と言って買わなかったわけですが、例えばアジアでもタイやフィリピンなどでは公開されているんです。こういう社会派の映画が公開できない日本とどちらが市民的なレベルが高いのでしょう?こんなことで日本は本当に先進国と言えるんでしょうか?そもそもルワンダの悲劇が長引いたのは、国際社会が無関心だったことも原因です。それがこの映画の重要なメッセージのはずですが、『関心がないから公開できない』という日本では、その状況が未だに続いていることになります。こんな国民性で常任理事国入りを目指すなんておかしいような気がしてきます。」

う〜ん、耳が痛いですね。日本は年間に600〜700本と世界で一番多くの映画が公開される国ですが、それだけ多くの映画が公開される中にこの『ホテル・ルワンダ』が入ってこないというのは、あんまりな気がします。


「日本公開を、あきらめない」?
しかし、まだ日本での公開が絶対にないと決まったわけではありません。なんとか公開の実現を目指して立ち上がったのが、「『ホテル・ルワンダ』日本公開を求める会」http://rwanda.hp.infoseek.co.jp)です。インターネットなどを通じて知り合った映画ファンの有志が集まって結成した会なのですが、代表の水木雄太さんは次のように話しています。

「ホテル・ルワンダ」日本公開を求める会「配給会社の方は客が入らないといいますが、僕がインターネットに『こんな映画があるんだよ』と書いたら、『ぜひ観たい』という反応がたくさんありました。しかもその多くはこの映画のこと知らなかったという人でした。だったら、この映画のことをもっと知ってもらえば、もっと観たい人という人が出てくるんじゃないかと思ったんです。そこでそのことを証明するために、ネットやチラシを使って自分たちで勝手にこの『ホテル・ルワンダ』を宣伝して、そのうえで『この映画が観たい』という署名を3万人を目標に始めたところです。」

今のところ「この映画は日本ではペイしない」というのがプロの見解です。確かに現在の状況ではそれが妥当な見方なのでしょう。しかし、例えば同じ社会派の映画でも『シンドラーのリスト』や『ヒトラー最後の12日間』などは日本でもヒットしています。もちろん前者は監督があのS・スピルバーグ、後者は題材がメジャーということで、『ホテル・ルワンダ』とは条件が違います。しかし、この映画をもっと知ってもらえば多くの人が足を運んでくれる可能性があるかもしれません。もちろん配給会社にとって映画はビジネスですから、損をするとわかっている映画を買うことはできないでしょう。しかし、もしこの「求める会」が多くの署名を集めることができれば、配給会社のこの映画に対する評価が変わるかもしれません。個人的にもぜひこの映画が観たいので、「『ホテル・ルワンダ』日本公開を求める会」の署名運動に期待したいと思います。

★「『ホテル・ルワンダ』日本公開を求める会」↓
http://rwanda.hp.infoseek.co.jp

★『ホテル・ルワンダ』公式サイト(英語)↓
http://www.hotelrwanda.com/main.html

担当ディレクター 長谷川裕
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