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2004年09月20日
 下北沢の街が寸断される!?〜補助54号線をめぐって

駅前9月20日の現場にアタックは人気の街、下北沢(通称シモキタ)をめぐる話題です。リポートは宮脇花織が担当しました。

世田谷区の下北沢といえば、住みたい街ランキングでは常にトップを争う人気の街。小さな劇場やライブハウス、かわいい古着屋さん、しゃれたカフェや雰囲気のあるバーなど小さいながらも個性的なお店が路地にひしめき合っていて、他の街にはない独特の暖かい魅力を持つ街です。

その下北沢に計画されている「都市計画道路補助54号線」がシモキタ・ファンの反発を受けて、反対の署名運動まで起きているんです。反対運動を行っている有志の会「SAVE THE 下北沢(STSK)」(http://www.stsk.net/)の金子賢三さんはこの道路計画に反対する理由を次のように語ります。

「下北沢の北口商店街に大きな道路が出来ることで、商店自身が破壊されてしまう。また車のほとんど入ってこなかった下北沢の街にどんどん車が入ってきてしまう。さらに大きな道路ができることで再開発が進み、街並みが変わってしまう。」

商店街この計画は下北沢の北口の商店街に幅26メートルの大きな道路(補助54号線)を作るというもの。現在、用地測量を進めており、来年には都の認可を受ける予定になっています。
これに対し反対派は、この道路が出来ることで、下北沢の良さが大きく損なわれるのではないかと危惧しているわけです。「SAVE THE 下北沢」では毎週土曜日に街頭での署名運動を続けており、現在4500人ほどの署名を集めているそうです(2004年9月現在)。アーティストや文化人にも愛される土地柄か、この反対運動には世界的ピアニストのフジ子・ヘミングさんや、俳優の西田敏行さん、若者に人気のミュージシャン・岸田繁さん(くるり)、曽我部恵一さん、社会学者の小熊英二さんらが賛同し、シモキタの危機を訴えています。

ではなぜ、このような道路が計画されているのでしょうか?この「補助54号線」がどのような意味を持つ道路なのか、世田谷区北沢支所街づくり部の担当者の方にうかがいました。

「広域的な都市の諸課題に資する道路、つまりネットワークを構築することでスムーズな交通緩和を図ることが第一。ひいては、区民生活の向上に役立つということで行政としても力を入れている。」

つまり、都内の交通渋滞の緩和することが第一の目的で、さらに防災や利便性の面で地元、下北沢にもメリットがあるということのようです。詳しくは世田谷区の街づくりについてのサイト
(http://www.city.setagaya.tokyo.jp/topics/kitazawa/machidukurika/shimokitazawa/)
を参照してください。

区としては、反対派とは逆にこの「補助54号線」がシモキタのさらなる発展に役立つと主張しているわけです。確かにこの地域は道が狭く、防災上懸念がありますし、大きな道路(歩道が広い)ができることを前向きにとらえれば、下北沢がこれまで以上の魅力を発揮する可能性もあります。実際、区の担当者の方は、「パリのシャンゼリゼ大通りのようになればいい」と夢を語っていらっしゃいました。ただ疑問なのは、これまで区は界隈性などシモキタがこれまで持っていた魅力を大切にすると言っていたはずです。そのこととブランドの旗艦店が建ち並ぶシャンゼリゼのイメージとはずいぶん落差があるように思います。

では実際、この道路計画は支持を得ているのでしょうか?下北沢の街で20人の方に聞いてみたところ、、、
賛成が2、反対が16、どちらでもないが2という結果になりました。区の担当者の方は「多数の支持を得ている」と認識しているとのことですが、私たちがシモキタの街で聞いてみた限りではそうは言えないようです。なぜ多数の支持を得ていると言えるのかその根拠を区の担当者に質しましたが、「賛成の人は何も言わないもの。声を挙げるのは反対している人だけ」とおっしゃるばかりで、納得できる答えはありませんでした。メディアに対して「多数の支持を得ている」と言うのならば、その根拠を示すべきだと思うのですが、、、。ちなみに街で私たちの質問に答えてくれたのは、地元の住人、他県から遊びにきた若者、北口商店街の商店主などの方でした。シモキタのシモキタらしさは大切にしたいという意見が多く、それがなくなってしまったら渋谷も新宿も近いのにわざわざ下北沢に来ることはないという方もいました。やはり、今のシモキタが持つオンリー・ワンの魅力を大切にしたい気持ちが強いようです。

地元の支持がないとすれば、何もわざわざ商店街の真中に道を作らなくても、、、という気がしますが、このような無謀とも思える計画になっている理由について、「SAVE THE 下北沢」の金子さんは次のように解釈しています。

「この道路は、もともと昭和21年に計画されたもの。戦後まもない時期に決められたもので、交通量調査も行わずに58年も前の計画を実行するのはあまりにナンセンス。その間に下北沢の街は現在の形に発展してきたのだから、街を破壊せずに街に沿うようなルートなども検討されるべき。」

確かにこの計画は昭和21年に計画されたものが原型で、その後数回に渡る見直しを経ているものの、ルートなど根本的な部分はあまり変わらないようです。では、果たしてこの計画は現在においても妥当なものなのでしょうか?このルートである必然性について、区の担当者の方に伺うと、、、

「過去にどのように決まったのかは知らない。行政の基本は継続、一貫性が重要。この道路計画は反対派が生まれる前から決まっている。一度決まったことは決して変えることは出来ない。変えてはならないもの。都市計画で決まっているのだから。行政に停滞は許されない。手続き上、法的に瑕疵はないのだからこのまま進めることに何ら問題はない。それを問題があるかのように言う反対派はおかしい。」

なぜこのルートなのかは知らないけれど、とにかく都の審議会の正当な手続きを経て決まったことなのだから、これで進めなくてはならない、ということでした。

この発言には正直言って驚きました。担当者の方は盛んに「情報公開の時代」ということを強調し、区のHPを見てくださいと胸を張っていましたが、1つの街を大きく変えるかもしれない、莫大な予算がかかる計画について、その理由はわからないという回答がありうるのでしょうか?それで説明責任を果たしたといえるのでしょうか?一方的に行政の方針をアナウンスすればそれでいいのでしょうか?住民の声を聞くのも大切な仕事のはずです。

確かに法的には問題ないのかもしれません。区の担当者の方たちが自らの職務を全うするために一生懸命やっているのもよくわかります(忙しい中この日も2時間近く取材に対応してくれました)。しかし、それだけが区の役割なのでしょうか?上位の都が決定したとしても、もっとも住民と近い基礎的自治体は、実情にあわせて柔軟な対応をするのも重要な役割でしょう。パブリック・サーヴァント=公僕たるもの、住民のニーズに敏感に応えることが大切だと思うのですが。

いずれにせよ、住民参加の先進自治体とされる世田谷区が、この先この問題にどのように対処していくのか、また「SAVE THE 下北沢」の運動がこの先さらに広がりを見せるのか、番組としても注目していきたいと思います。

ディレクター 長谷川裕
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