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2002年12月18日
【急成長は敵だ!〜寒天業界のガリバー・伊那食品工業株式会社】


12月18日の担当は近堂かおりさんです。 スペシャルウィークの今週は、好評企画の「世界レベルの中小企業シリーズ・第3弾」をお送りしています。

食材の寒天、その業界のガリバー企業・長野県伊那市の「伊那食品工業」を取材してきました。この会社は寒天の製造・販売で、国内シェアのおよそ8割を占めるトップメーカーで、世界シェアでも10数パーセントを占めています。従業員は約300人で、今年の売上げは123億円に達する見込み。

しかもこの会社、何と1958年から44年連続で前の年を上回る売り上げを記録しているんです。 そこで、寒天を武器に業界ナンバーワンに上り詰めた秘訣を伺いました。
塚越寛(つかこし・ひろし)社長です。

「寒天は非常に地味な商品。昔は単純な用途しかなかった。その需要が減っていたから、自分たちに明日はないと。それで研究開発に力を入れた。あと様々な用途開発を自分ちでやった。これをやらないと業界の明日はないから。結局私たちは自分で市場を広げて、その結果、シェアが広がっている」

要は、新商品を次々と世に送り出して、そこに新しい市場を作っちゃう。その結果が圧倒的な市場シェアにつながっているんですね。

寒天の利用方法はどこに眠っているか分からないそうで、あらゆる可能性を求めて新しい商品開発を続けることが生き残る道だとか。伊那食品工業では常に全社員の1割(現在は30数名)を研究開発部門に配置して、新たなテーマを日夜研究。本社ビルの2階は全て研究施設、地下室は試作室とプレゼンテーション室が占めていました。

これだけ研究に熱を入れると「ヒット商品も数多く抱えてるんだろう?」と思いますが、さにあらず。「ヒット商品」について塚越社長はこんな持論をお持ちでした。

「ヒット商品を作ってはいけない。ヒット商品を出すとそれに特化してしまい、掲げた理想や目標がどこかに行ってしまう。うちにもそういうことがあった。でもそこでヒット商品に特化すると『寒天を近代化して普及させる』という目標が無くなってしまう」

杉やヒノキのように大きく太い木になるよりも、毎年きれいな花を咲かせて、存在感のある「サツキ」のようになりたいとも話す塚越社長。会社経営の価値を企業が長く存続することに置いているんですね。こうした大胆な経営方針が44年連続の売上げ増加につながっているんだな、と実感しました。

ところで、伊那食品工業が扱う商品には、海藻エキスを濃縮生成したバイオテクノロジー事業向けの寒天があって、「金(ゴールド)」よりも値段が高く、1キロ当たり250万円もするモノもあるそうです。ただ、こうした商品も「儲けを狙ったものでなく、寒天の可能性を探るために蒔いた種にすぎない」とは塚越社長の弁。現在、「伊那食品工業」では、生産体制は家庭向け商品が4割、事業向け商品が6割。

こうした、現在の状態になるまでには並大抵の苦労ではなかったと塚越社長は言います。

「寒天はかつては相場商品だったため価格変動が激しく、大手メーカーは敬遠して使ってくれない。何とか相場を無くそうと努力して量産したり、材料を確保したりした。これがうちの歴史。そうして結局使ってもらえるようになった」

昔、寒天は生産・加工とも天候や相場に左右される不安定な商品で、生産性も低く、伊那食品工業では、寒天の価格を安定させるために1977年(昭和52年)に「寒天はもう相場商品ではありません」という新聞広告まで出しています。

塚越社長は、21歳!の時に、債務超過になって経営が立ち行かなくなっていた伊那食品工業の再建を任されたそうです。社長自身は17歳から3年間、肺結核で闘病生活を経験。この時に、普通の生活を送れることがどんなに素晴らしいか実感されたそう。仕事も選り好みせず、与えられたものを天職と思うようになったとお話下さいました。

このような苦労から導き出した経営の秘訣について塚越社長は、

「成長し続けるには何をすればいいか。「急成長」しないことが一番。急成長は善とされているけど、現在のモノ余りの中でみんな苦労している。特に食品だから。人間胃袋は一つしかないから、どんなに所得が上がったってそんなに食べられない。だから急成長を否定しようと」

誰もが狙う急成長を、敢えて欲しがらず、マイペースを貫くなんて、実践するのは容易ではなかったはず。しかし、塚越社長は「急成長は経営者の虚栄心以外の何物でもない」とキッパリ。

会社に関わる人たちが、「ハッピー」になるような企業経営を目指して、成長を急がず、研究は熱心に。「それで気がついたら世界的な企業になった」と社長はおっしゃっていました。
(談:TBS954情報キャスター・近堂かおり)
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