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2002年10月23日

【79歳の先生社長～世界最小コネクタ製造・タカノギケン㈱】

スペシャルウィークの今週は好評企画「世界レベルの中小企業シリーズ・第２弾」をお送りしています。取材は近堂かおりさんが担当しました。
さて、３日目は富山県八尾町（やつおまち）にある「タカノギケン」という企業を取り上げました。この会社は従業員１６５人。海外・タイに進出した工場などグループ全体で年間の売り上げが65億円。

エレクトロニクス産業を支える電子部品を自前の工場設備で一貫製造。売り物の部品を製造する設備もすべて自分たちの会社で作っています。さらにパソコンや携帯電話のＩＣチップを基盤と接合させる時に必要な「コネクタ端子」。これが「直径0.4ミリメートル」の世界最小を誇っています。

会社設立は昭和37年。会社を興したのは現在も現役社長の高野啓良さん・79歳。
この高野社長は元気元気！とても79歳には見えません。高野社長が会社を興したいきさつがちょっと変わっていました。

近　堂　：社長になる前は？

高野社長：教職員だった。理科と技術家庭担当で中三の就職担当でもあった。その時色んな企業を見て歩いて、自分でももの作りをしたくなったの。

学校の先生からの転進でした。

就職担当を15年間やって、色んな企業から経営についての知識も得たそうです。また親戚に「チャック」製造の技術者がいて、一緒に会社を起こしました。最初は新興のチャック企業として勝負するもあえなく敗北し、会社は倒産。チャック業界は先発していた企業が圧倒的に強かったといいます。

ただ何とか「チャック」の技術を生かせないかと思案していたところ高野さん、ある日東京・銀座のヤマハホールでひらめいたそうです。

高野社長：ヤマハホールにいたら米国製と日本製のシロクロＴＶで高校野球の中継をやっていた。米国製のものは綺麗に映っていたが日本製はそうではない。その時思った。今持っている技術で何が一番利用しやすいか？そう考えたら「真空管」のバネに行き当たった。チャックの型を変えれば出来る。

そうそう、「真空管」ってありましたね。
「真空管」を軸受けして支える「コンタクト・ピン」と言う部品の製造に「チャック」の技術が応用できたそうです。しかも販売競争にこうやって勝ち残ってきたそう。同じく高野社長です。

高野社長：他のメーカーが50銭前後で販売していたところ22銭で売り出した。だってほかが「トットコ、トットコ」やっているところうちはフル稼働させていたから。でもこれを40銭ちょっとで売ると儲かりすぎて緊張感がなくなる。

高品質のものを、大量に作って１個22銭（当時）を実現。これでもまだ10銭の利益があったそう。この価格のおかげで国内シェアなんと74％（当時）を押さえました。
しかし、何だかもったいないですね。

さて、時代は早くも「真空管」から「トランジスタ」そして「ＩＣチップ」へと移っていました。いつまでも「真空管」にとらわれていては時代の波に乗り遅れる。そう考えたタカノギケンでは「ＩＣチップ」を組み込むのに必要な「コネクタ端子」の開発へと動き出します。
それまで「コネクタ端子」は金属部分と樹脂部分を別々に製造して人間が組み立てていたため、サイズが大きい大きい。大きすぎ。携帯電話を考えてみて下さい。一昔前でかい「ショルダー・ホン」ってあったでしょう。あれが今のサイズにまで小さくなるには当然部品のサイズダウンが必要です。
サイズダウンには樹脂と金属を一緒にして製造する必要がありました。同時にある業種との競争があったそうです。

高野社長：これからは金属と樹脂を溶かして一緒に作るようになる。そうなれば私たちが樹脂の勉強をしなければ生きていけなくなる。あるいは樹脂屋さんがわれわれの仕事をやるようになるか、どっちが早くやれるようになるかで勝負が決まる。

高野社長は今も先を見据える研究の為、常に情報にアンテナを張り巡らしています。専門家をヘッドハンティングすればよかったのになぁ。でも引き抜きについて高野社長はこうおっしゃっていました。

高野社長：簡単によそから人を入れることはいいことじゃない。市場そのものを作り出していく気概がないとこの世界では生きていけないから。それには社員の発想が大事。参考書と文献と首っ引きで苦労してやらした方がプライドも持つしね。

自前の技術者を育てた結果、「直径0.4ミリメートル」の世界最小「コネクタ端子」の開発に成功しのです。

この高野社長は一緒に「ゼロ」から勉強したり、一生懸命技術者を育てたり世界一の加工メーカー・社長になっても、まるで「先生」のままでした。