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2000年10月05日
高齢者向け給食サービスの課題

老人給食協力会ふきのとう本部


 ずらりと並んだお弁当。しかしこれはお弁当屋さんの調理場の光景ではありません。
ちなみにこの日のメニューは、ささみのマリネ、さつまいもの甘煮、白菜のピリカラいために味噌汁、つけもの、デザート(みかん)です。

 今回取材したのは世田谷区の老人給食協力会「ふきのとう」の本部です。「ふきのとう」では、一人暮らしのお年寄りなどに食事を配達する給食サービスを行っています。
給食サービスには行政や業者が行っているものもありますが、「ふきのとう」は住民のボランティアによる給食サービス、いわば「住民参加型」とでもいうべきものです。活動を始めて18年、取材した世田谷区の桜丘の本部では50食前後の昼食を土日をのぞく毎日作って配っている。

 午前9時ぐらいから主婦のボランティアら5、6人が毎日交代で、昼食を作ります。メニューは上に書きましたが、お年寄りのお弁当に対する注文はさまざま。それに対し、きめ細かいサービスが行われています。例えばおかゆにしてほしい、おかずも一口大、とか極刻みとか。
逆に食欲もある人にはご飯の大盛り。 辛いモノとか、苦手なモノをいれないでほしい。逆に揚げ物はふだん家で作らないので、かえって弁当に欲しがる人もいるといった具合です。
 また容器は基本的に洗って返却するのですが、洗うのが困難な人は使い捨てになっています。

 取材当日、私は自転車で80歳前後の3人の方の家を回るボランティアの方についていきました。感想を聞きますと、毎日味や作り方が変わるので美味しい、飽きない。(家族がいても)昼間はほとんど一人なので、誰かが訪ねて来るのがうれしい。「ふきのとう」のお弁当を中心に健康管理をしている、といった声が帰ってきました。配達した人はノートに健康状態など簡単に記録します。つまり安否確認も兼ねているわけです。

 ここの昼食は実費のみ700円。安価できめの細かいサービスを地域の住民ボランティアが提供しているわけです。「ふきのとう」の理事長、平野眞佐子さんはこういうサービスは弁当業者では無理だし、老人の食は地域の住民で支えていくしくみづくりをしなければならないと話します。
 将来、さらに高齢化社会が進んだ場合、地域の高齢者同士が助け合うしくみが必要になるというビジョンに基づいているのです。

 しかし「ふきのとう」など都内のボランティア団体は様々な経済的な問題を抱えています。特に調理場の設備をどうやって確保するのか、配達の自転車や車を置く場所はあるのか。場所や設備の問題は共通する課題です。
 「ふきのとう」も最初は平野さんの自宅ではじまり、いまは古い一軒家を借りています。実費のみの安いサービスを提供するのは大変なのです。

 さて現在、東京都内の給食サービスのボランティア団体にとって、ちょっとした問題が起きています。
都が食中毒防止のため、ボランティア団体の調理場も飲食店並みに衛生管理を厳しくする条例を検討しており、来年にも条例化される可能性が高いのです。
例えば、「ふきのとう」の場合、手洗い専用の流し場を用意しなくてはなりません。このためには借りている家の大家の許可も必要ですし、お金もかかります。
どこか空いたビルの部屋でも提供してくれる企業などはないか、捜しているのですが、現状ではみつかっていないし、例えあっても改装費などが捻出できるかわかりません。行政の補助は運営費に対してのみで、設備の費用にはまわらないのです。
都の衛生局の指摘はそのとおりですが、ボランティアの活動が存続できるよう、考えて欲しいと平野さんたちは訴えています。
行政や業者のサービスだけでは支えられない部分を支えているボランティア団体のこういった活動は、もっと目を向けられるべきなのではないでしょうか。


リポーター 崎山敏也
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