平安時代の陰陽師（おんみょうじ）、安倍晴明（あべのせいめい）の伝説が残るのは茨城県真壁郡明野町です。
明野町猫島の高松家の敷地内には、神社や井戸があり、「晴明伝記」の版木が大切に保存されています。
写真は左側が高松家代々のお墓、右側が「晴明塚」です。
「晴明塚」はこの塚の位置から安倍晴明が筑波山に向けて矢を放ったという伝説が残されています。

写真奥、うっすらと筑波山の山容が望めると思います。

中国の「陰陽五行説」に基づいて災害や異変、個人の吉凶を占うのが「陰陽道」、その「陰陽道」をあやつるのが「陰陽師」です。
「陰陽道」は公式な形では現在存在しませんが、現在でも「大安」「仏滅」といった「六曜」や方角占い、厄除け 八卦の占い、暦（七夕やひなまつり）といった形で（流行りの動物占い！）私達の生活習慣の中に残っています。

安倍晴明は「今昔物語集」「古今著聞集」「御堂関白記」などにそのエピソードが数多く伝えられています。
藤原道長に仕え、道長への政敵からの呪いを破ったり、鬼を自由にあやつり、祭や儀式にも才能を発揮したと伝えられています。

ブームのきっかけの一つは映画にもなった荒俣宏の「帝都物語」。
そして夢枕獏原作の少女マンガ「陰陽師」（岡野玲子）のヒットがブームに火をつけました。
「陰陽師」の最新巻９巻はすでに２２万部に達しています。
そして続々と小説や解説本などが出版されています。

京都にある「晴明社」禰宜の山口啄也さんの話では、「晴明社」には休日には１日２千人。 平日でも３、４００人の参拝者が訪れるということです。
若い女性がほとんどで、五角形の晴明印をデザインしたペンダントを買ったり、願いを書いた絵馬を残したりとすっかり「ヒーロー」です。
山口さんの話では「晴明は実在の人物ではあるが、若い頃のことなどがあまりわかっていない。そのあたりが想像力をかきたてるのでは」と話していました。

このブームの波は明野町にも及んでいます。
「晴明神社」「晴明井戸（五角形）」「晴明塚」が敷地内に残る高松家にも平日には「ゼミのリポートに」と参考文献をかかえた大学生や「定年を迎えて二人でゆかりの地をまわっています」というご夫婦、日曜日になると、「筑波山によったついでに」という女子大生のグループなどが最近は訪れます。

もともと「安倍晴明」は明野町の「まちおこし三人衆」の一人で、「文化のまちづくり」のシンボルでした。
しかし、高松家を訪れる人や問い合わせなどが増えていることもあって、さまざまな「まちおこし事業」に本格的に乗りだしたところです。 晴明神社は高松家の敷地内にあるので、応対する高松さんも大変です。

そこで町では「宮山ふるさとふれあい公園」内に作ることになっている展望台に晴明に関する資料などを展示することを考えています。
また晴明が架けたとされる「晴明橋」の跡も整備しました。
このほか、公園内の農産物直売所で「晴明まんじゅう」を売ることや、試掘中の温泉に晴明ゆかりの名前をつけることも検討中です。

夏はひまわり、秋はコスモスときれいな花咲く、明野町。めだった観光スポットは特にありませんが、占いから興味持った人も歴史好きな人も、筑波山などを訪れた際に、寄り道をしてみたらいかがでしょうか。

高松家の敷地内に入りたい方は事前に明野町中央公民館の「いきいき学び課」に電話でご相談を。また明野町のホームページにも詳しいことが載っています。