写真は名古屋市の大手タクシー会社「つばめ自動車」の本社にある司令センターです。
常時10数名がパソコン端末と無線機の前に座って次から次へと配車の指示を出しています。
「つばめ自動車」はこの2月、介護ビジネスに参入しました。
お年寄りが自宅にいて緊急時にタクシーの乗務員が駆けつける「ホームセキュリティサービス(屋内緊急通報支援サービス)」と徘徊するお年寄りや迷子を捜す「SOSサービス」などです。
徘徊のお年寄りの家族から通報があると、司令センターではまず携帯端末を持っているお年寄りの位置をパソコン画面上で確認します。
そして操作すると、そのお年寄りの位置から2キロ以内にいる空車の位置が画面上で示されます。
ここで私はタクシーを配車するときのように、無線で空車にガーガーと呼びかけ、指示を出すのだと思っていました。
しかしそうではなく、徘徊しているお年寄りのデータがタクシーのカーナビに転送されるだけです。
極めて静かです。ハイテクが自然に入り込んでいます。
向かった空車のタクシーがお年寄りを見つけるまでにかかった時間はこれまでで平均1時間ぐらい。
通報を受け、位置を探して、駆けつける。これをすべて同じ会社が行うので、時間が極めて短くなったようです。
こういうビジネスを考え出したのはつい最近かと思いきや、天野副社長さんの話では昭和40年代にさかのぼるそうです。
タクシーの利用者の数は景気によって増減しますが、免許取得者(特に女性)の増大で昭和40年代から減少の方向は変わっていません。
ずっと懸案だった「空車ビジネス」がカーナビやPHSなどの技術の発達で生まれたわけです。
現在利用料金は1ヶ月固定で6320円。(機器レンタル料も含む)1回出動で1500円。ちょっと高い気もします。
現在登録しているのが徘徊のサービスで10数名。実際に出動したのは4回です。
「これで採算がとれるのですか?」と聞きますと、天野副社長は「とりあえずは採算は二の次。
タクシーの果たせる役割を分かってもらえること、実績を積んでゆくことが大事です」と話していました。
しかし勝算がないわけではありません。
2003年度の介護保険の見直しで、保険の対象になれば、1割負担で済みますし、厚生省の事業として1割から半分程度、行政(国や自治体)が負担するところも増えそうな勢いです。(つばめ自動車では現在一宮市と西春町がこのサービスを行っています)
いずれにせよ、利用者増が期待されます。
福祉の分野に安易に参入されて質のよくないサービスをされてもこまりますが、質が良くて、安いサービスならどんどん増えて欲しいですね。
リポーター 崎山敏也