2011年5月22日(日)ごご4:00から
それは"命の源"だった…
流氷が生き物たちにもたらす恵み、その驚くべき力とは?
俳優・高橋克典が目の当たりにした、白い氷の“奇跡”
【冬】
北海道・知床半島沖に出ると、そこは360度、流氷に囲まれた世界だ。流氷の上では、独特の模様に身を包んだクラカケアザラシが、のんびり昼寝をしていた。ふだんは外洋で暮らすため、滅多に人間と出会うことはないが、流氷の上で出産し子育てをするため、この時期は知床沖にやってくる。これほど間近で観察できる知床は、世界でも稀な場所だ。
世界自然遺産に登録された知床は、北半球で流氷が到達する南限にあたる。氷上ではアザラシが生息し、絶滅危惧種のオオワシやオジロワシも羽を休める。こうした自然の豊かさを、実は流氷が支えていることに最近、注目が集まっている。
北海道網走市の沖、約90キロ。冬の間、海は流氷に完全に覆い尽くされ、人間が入ることのできない白一色の世界がどこまでも広がる。カメラは、北海道大学と海上保安庁の研究チームの砕氷型巡視船に同乗。未知の海での流氷調査を追跡する。最近、研究チームが注目しているのは、流氷がもたらす"ある物質"だ。本来、海にほとんど存在しない物質を流氷がもたらし、食物連鎖の底辺である植物プランクトンと関係していることがわかってきた。その物質とは?流氷が生み出す"命の源"を追う。
また"地球温暖化のバロメーター"とも言われる流氷。オホーツク海の流氷の面積は、約30年間で20%も減った。この急激な減少が、海に、そして地球に、何をもたらすのか?
【春】
流氷が去った知床の海では、まだ雪に覆われた知床連山をバックにシャチの群れが大きな噴気を上げ、ほかのミンククジラやイシイルカなども姿を見せる。理由は海の中にあった。海中に流氷が残した恵みを求めて魚が集まるからだ。春は、知床の川からはサケの稚魚が海に旅立つ季節。サケの稚魚もまた、流氷の恵みを受けてオホーツク海や北太平洋で大きくなり、やがて、生まれた川に帰る。そこを、知床を代表する野生動物、ヒグマが待ち構える。
番組ナビゲーターの高橋克典は、"奇跡"とも言える流氷の恵みを、知床半島の大自然の中で次々に目にし、体で感じていく。カメラはその大自然を空、陸、海、水中から撮影し、知床の今まで知られていなかった魅力を紹介。貴重な生き物たちの映像とともに、日本にまだ残される驚くべき風景を伝える。
高橋克典
知床には以前にも来たことがありましたが、これだけ奥が深く、重要な海があることを初めて知り、感慨深い気持ちです。地球に人間が我がもの顔で住むような時代はもう終わり、発展ばかり求めずにちょうど良くこの地球に生きていけたらいいんじゃないかと考えていたときだったので、知床で過ごした時間はそんな思いをより深めるような時間でした。流氷の海は、生き物たちの命の源を生み、一番底辺から全ての生き物を支えている大事な場所で、その素晴らしさを感じるとともに、どうやったら守っていけるのかということを考えさせられました。
ナビゲーター:高橋克典
ナレーター:藤本美貴
製作著作:HBC(北海道放送)
プロデューサー:国貞泰生・西澤敏
ディレクター:西澤敏