季節の海“RAUSU”

みどころ

ネイチャー、科学、ヒューマン、すべての要素が入った、
知的エンターテイメント
体長2メートルを超えるイカの産卵
集まるシャチ、クジラ
海のミステリー「死滅回遊」
ここは、北海道の羅臼、季節の海。
地球上のどの海にも似ていない“RAUSU”の四季

「世界遺産」知床の羅臼の海。地元のダイバーは“季節の海”と呼ぶ。この海では「死滅回遊」と呼ばれる不思議な現象が起きる。冬の始まりとともにサンマやイワシなどの回遊魚が浜に打ち上がるのだ。その謎を解き明かすため、北海道の研究者チームが世界で初めての調査に乗り出した。最新鋭のロボットカメラが羅臼の海底でとらえたものは･･･

内容

春。流氷がアザラシをのせて沖へと去った。海の中も雪解けを迎え、コンブが鮮やかな萌黄色の若芽を出す。やがて体長2メートルを超えるイカが、袋状の卵をひきずって深海から上がってくる。卵が重いのか、それとも産卵の痛みに耐えているのか、母イカは海底をこするように泳ぐ。体の一部が千切れ、破片が水中に漂う。傷だらけになった卵から、数千、数万の稚魚が孵化していく。我が子たちの誕生を見届けると、母イカは命を終え、海の底に沈んでいく。その一部始終を撮影する関勝則さん（59）。関さんが初めてこのイカを目撃したのは20年近くも前のことだ。「何だ、これは！」と、海の中で腰を抜かしそうになったという。当時の海洋生物学の常識に、「タコ愛情、イカ薄情」という言葉があった。タコの母親は半年間も足の中に抱えて卵を守るが、イカは生みっ放しでその後のケアはしないと考えられていたのだ。イカの子育てなど報告された例はなかった。しかし、関さんの発見がこの常識を覆した。世界で初めて撮影された抱卵イカの不思議な姿は4年前、科学誌「Nature」や「Newton」にも発表された。
夏。羅臼の海は「野生の命」で溢れかえる。シャチが水面をジャンプし、南半球からやってきたマッコウクジラが高々と潮を噴き上げる。マッコウクジラの泳ぐ姿を陸地にいながら観察できるのは世界でも羅臼だけだ。空を見上げれば、タスマニアから飛来したミズナギドリの大群で黒く染まっている。この海が豊かな餌場であることを動物たちは知っているのだ。
　　　
秋。海の中も実りの季節を迎え、様々な魚が群れをなして押し寄せる。全国で例のないホタテの「潜水漁」も始まる。ボンベを担ぎ、生け簀（す）を抱えた漁師たちが一枚一枚拾っていく。網を引きずる通常のホタテ漁に比べ大変な手間と労力だが、貝が漁具で傷むこともなく、何といっても天然のホタテだ。風味が違う。冬が近くなると、羅臼ではある不思議な現象が起きる。これまでほとんど報じられてこなかったが、サンマやイワシなどの回遊魚の死骸が、稀に浜辺に打ち上がるのだ。「死滅回遊」と学者は呼ぶ。海の中で一体何が起きているのか？このミステリーを解き明かするため、北海道の研究者チームが水中用のロボットカメラを羅臼の海底に沈めた。目当ては、「イカのジュウタン」。研究者たちは、羅臼の海底にはおびただしい数のイカの死骸があたかもジュウタンを敷き詰めたように堆積していると考えていた。その根拠は？そして、ロボットカメラがとらえたものは？研究者の一人は言った…「死滅回遊は、季節の贈り物だ」。
　　　
冬。流氷が海一面を白く覆った。氷の中に所々鮮やかな緑色が見える。植物プランクトンだ。春になって流氷が溶けるとこのプランクトンも海に放たれ、孵化した幼魚たちの糧となる。春に多くの魚が孵化する理由はそこにある。流氷が大陸から運んでくる豊富なプランクトンはここに独自の生態系を生んだ。そして季節の移り変わりが、その命を育てていく。
　　　　
ここは、羅臼、季節の海。地球上のどの海にも似ていない“RAUSU”の四季を見つめる。俳優・吉岡秀隆さんの温かで説得力のある語りも、北の海の魅力を引き立てる。

出演者

ナレーター：吉岡秀隆（俳優）

スタッフ

プロデューサー：河野啓

季節の海“RAUSU”

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